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脳の感情について。

『特定の人を好ましく思い、恋愛関係に至り、見返りも期待せずに、ただ相手につくす』といった感情を抱いた時の脳内活動に関して、その活動に関係する脳の組織とは何なのでしょうか? またその組織はいったいどのような働きをしているのでしょうか? あともう一つなんですが。 「感情を持つ」ということは、その感情を抱くまでに、脳内の何かが働き始めて、それを受け持つ組織・そして終わり(感情を抱く)を受け持つ組織が存在するということでしょうか? 質問ばかりで心苦しいのですが、是非とも教えてください。 宜しくお願いします。

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  • ruehas
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回答No.1

こんにちは。 「恋愛感情」といいますのは「大脳辺縁系の情動反応」であります。 我々高等動物の脳の機能といいますのは、 「生命中枢:本能行動司る生命の中枢」 「大脳辺縁系:情動反応を司る感情の中枢」 「大脳皮質:理性行動を司る知性の中枢」 大雑把にこの三つに分けられます。 このうち「大脳皮質」と「大脳辺縁系」は我々哺乳類と鳥類がそれまでの生命中枢を土台に発達させた「新皮質」であります。大脳皮質が理性行動を司る「知性の中枢」であるのに対しまして、大脳辺縁系は「情動反応」を発生させる「感情の中枢」です。そして、この「大脳辺縁系の情動反応」が即ち我々の脳内に生み出される「心の動き」でありまして、果たしてそれは大脳皮質の知性ではなく、「恋愛」とはこの「心の動き」に従って選択される行動であります。 我々の脳内では、「大脳辺縁系」といいますのは生後の学習結果を基に与えられた環境の変化に対応した適切な行動を選択するという学習機能を果たしています。 大脳辺縁系には身体内外のありとあらゆる知覚情報が入力されており、これに対しまして「利益・不利益の価値判断」が行われます。情動反応を司る大脳辺縁系の中でこの価値判断を下しているのは「扁桃体」という神経核であります。そして、環境からの様々な知覚入力に対してこの価値判断が行われ、「快・不快」の情動反応が発生することにより、 「利益に対しては接近行動を選択する:快情動」 「不利益に対しては回避行動を選択する:不快情動」 我々動物は生後学習の結果を基に与えられた状況に対応した適切な行動を選択することができます。このため、大脳辺縁系では情動反応を発生させるだけではなく、与えられた知覚入力と、それに伴って発生した反応の結果に対して常に学習が積み重ねられています。扁桃体は、この学習記憶に基づいて価値判断を下します。従いまして、それはみな「心の動き」に従う行動の選択であり、「恋愛感情」とは大脳辺縁系・扁桃体に学習・獲得された「特定の異性に対して発生する情動反応」ということになります。 では、質問者さんが仰いますように、確かに「恋愛」といいますのは「心の動き」に捕らわれた、ただ見返りもなく尽くすものであります。ですが、只今申し上げました通り、反応が発生するということは、取りも直さず大脳辺縁系には特定の異性に対する情動反応が学習されており、それに基づいた「利益・不利益の価値判断」は必ずや行われているということです。従いまして、「恋愛行動」といいますのはこの反応によって発生した欲求を達成するための全てが接近行動であり、生物学的には、それは「報酬行動」ということになります。 異性に対して興味を持つというのは「生命中枢の本能行動」であります。そして、生命中枢における本能行動の選択といいますのは予め遺伝子の中に定められたルールに従うものであるため、この反応の結果は「全人類に共通」です。これに対しまして、大脳辺縁系の情動反応とは、その人の生後体験によって獲得された判定基準に基づく「学習行動」であります。ですから、生後の個人体験というのは人それぞれなのですから、人類共通の本能行動とは違い、そこには必ずや「個人差・個体差」というものが発生します。 では、「恋愛」といいますのは大脳辺縁系の情動反応に基づく「学習行動」であります。従いまして、異性に興味を持つというのは我々が動物として定められた間違いなく本能行動ではありますが、「誰を好きになるのか」というのは果たしてみな人それぞれ、全くバラバラということになるわけですね。 さて例えば、日常に特定の異性と接する時間がたくさんあったり、あるいは、何か特に優しくされたりといった体験が加わりますと、大脳辺縁系はその人に対する情動反応を学習することになります。極めて単純であります。ところがこれに対しまして、我々には誰しも「好みのタイプ」というものがありますよね。実はこれも大脳辺縁系の情動反応なんです。 但し、こちらは年頃になって巡り会った異性から学習するものではなく、「異性のタイプ」や「食べ物の好き嫌い」といった、このような「生涯に渡る個人の好み」といいますのは、概ね生後三歳までの「人格形成期」の体験に強く影響を受けると考えられています。ですから、基本的には巡り会った者同士が心惹かれ合うというのが恋愛なのですが、ほとんどの人はそれ以前に何らかの好みの形成というものを行なっているというわけですね。 このように、大脳辺縁系の学習といいますのは我々が憶えていない遥か昔から始まっており、そこには情動反応の判定基準として様々な体験が無数に積み重ねられています。そして、このような個人体験といいますのは、当然のことながら生まれ育った環境によってみなバラバラです。ですから、この判定に従って選択される行動や反応も千差万別、人それぞれであり、これが即ち我々の「性格・個性」であります。従いまして、大脳辺縁系といいますのは情動反応を発生させる「感情の中枢」であると共に、それは我々の性格を司る「個性の中枢」でもあるということになります。 >あともう一つなんですが。「感情を持つ」ということは、その感情を抱くまでに、脳内の何かが働き始めて、それを受け持つ組織・そして終わり(感情を抱く)を受け持つ組織が存在するということでしょうか? 「感情」とは、大脳辺縁系の情動反応に基づいて身体に表出された「情動性身体反応」が体性感覚として大脳皮質に知覚され、「認知・分類の可能になった状態」を言います。そして、このような状態に対して認知を行い、情動の発生が自覚されることを大脳皮質における「情動の原因帰結」といいます。 たいへんややっこしい話で申し訳ないのですが、順番にご説明致します。 与えられた状況に対して脳内に情動反応を発生させるのは大脳辺縁系であり、それが喜怒哀楽といった我々の「感情の素」となります。そして、この情動の発生を特定の感情として分類し、自覚するのは大脳皮質の役割であります。 大脳辺縁系は身体内外の環境の変化に対して価値判断を下し、情動反応を発生させます。この反応の結果が中枢・末梢を含めた様々な神経系広域に出力されますと、我々の身体には以下のような変化が発生します。 「運動神経系:情動行動(無意識行動)の選択」 「自律神経系:生理状態の変化」 「中枢神経系及び感覚神経系:覚醒状態の亢進」 このようなものを「情動性身体反応」といい、読んで字の如く、みな大脳辺縁系の情動反応に従って発生する身体反応であります。 怖くて身を竦めたり、顔の表情が変わるといったものは無意識な情動行動であり、不安になったり幸福になったりするのは、神経伝達物質の分泌を介して行なわれる覚醒状態の変化であります。また、好みの異性に対して胸がときめいたり、顔が赤くなったりするのは、こちらは情動反応の結果が自律神経系に出力されることによって発生する自律反応であります。「情動性自律反応」といい、他にも緊張したり腹を立てたり、我々は日常、自分の感情に伴って発生する様々な生理的変化を体験します。 このように、大脳辺縁系に発生した情動反応といいますのは、神経系のあらゆるところに伝達されます。ですが、これらはみな自律神経や神経伝達物質を介して行なわれるものであるため、もちろん大脳皮質にも神経伝達物質は投射されますが、情動の発生そのものを伝える神経伝達路というものはひとつもありません。では、大脳皮質はどのようにして情動の発生を知ることができるのでしょうか。大脳皮質は、大脳辺縁系から情動信号を直接受け取るのではなく、情動反応に伴って身体に表出された様々な「情動性身体反応」の結果を、これを「体性感覚」として知覚します。 大脳辺縁系に情動反応が発生しますと、我々の身体にはそれに伴って様々な反応が表出されます。大脳皮質はこれらの「反応の結果」を内臓感覚などの体性感覚として知覚します。そして、この「反応の発生パターン」を基に、それが喜怒哀楽、どのタイプの感情に属するかというのを分類することになります。 例えば、胸がドキドキしたり、顔がほてったりするのは情動性の自律反応であります。ですが、これだけでは自分にどうしてこのような反応が発生しているのかは分かりません。では、「現在、自分の目の前にはめちゃくちゃ好みの異性がいる」、ここでこのような状況判断が加わりますならば、大概の人はこれでその理由に気付きます。 このように、大脳辺縁系に発生した情動反応は大脳皮質によって特定の感情として認知・分類されるわけですが、これにはそのための情報伝達構造というものは一切なく、それはまず身体反応の無作為な知覚に始まり、これに対する状況の分析といった、全く間接的な情報伝達のプロセスを辿ります。従いまして、感情というのは情報として伝達されるものではなく、必然的に発生する身体反応の結果が「分類の可能な状態になったもの」ということになるわけです。そしてこれにより、過去の体験と現在の状況を基に、我々が自分に発生した情動が何であるかを分類し、感情として自覚することを「情動の原因帰結」といいます。 長文のため色々と端折りましたが、以上がご質問の、「情動の発生」から「感情の自覚」までのプロセスであります。

noname#107333
質問者

お礼

ありがとうございました。 これを読んで、自分の勉強不足を認識いたしました。 本当にありがとうございました。

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