本件の事情が分からないので、賛否はなんとも言えませんが、前段の部分は、一般論ですよね。
会社の設立前の支出で会社が負担すべきものや、設立後に財産引受をする契約については、定款の必要的記載事項(会社法28条)となっています。これは、会社の設立関係者(特に投資家)が、会社の財産等を評価をするために重要なものだからです。
このような、必要的記載事項となっているものについて、追認を認めたのでは、この会社法の規定の潜脱を許すことになり、投資家を危険にさらし、定款の信用性がなくなることになります。
なので、この原則については、賛成です。
もっとも、このような財産引受については、会社設立後に取締役会(または取締役の過半数)で可決すれば、同じことができるのだから無効にするまでもないとの意見もあるかと思います。しかし、設立後のことであれば、それを決めた取締役が会社に対して責任を負うことが明確ですので、投資家にとって、設立前の話とは次元が異なるものだと考えます。
本件でどのような事情があるのか分かりませんが、実際にその引き受け財産を使って収益をあげてしまい、効用が薄くなって不要になった時点で無効を主張して、残代金を払わずに返してしまおうとしていたような状況であれば、それは信義則上、無効を主張することができないとされても仕方がないと思います。
こちらは、第三者と会社関係者の利益衡量で判断することになるのでしょうね。