こんにちは。
「乳海撹拌」というのはヒンドゥー神話の有名な一場面で、デーヴァ神族とアスラ族が共同で不死の薬「アムリタ」を製造する為に行った壮大な綱引きです。
これはデーヴァ神族の主神の一人ヴィシュヌ神が、魔力によって勢力を伸張してきたアスラ族に対抗する為に考案した策略であったと言われ、世界中のあらゆる植物とその種とを集めて海に投げ込み、マンダラ山を攪拌棒として巨龍ヴァースキを巻きつけて交互に引き合い、丁度インド人が牛乳からバターやヨーグルトを作る要領で霊薬を生み出すというものでした。
ヴィシュヌ自身もクールマという巨亀になって攪拌棒の軸受けの役割を担ったのですが、凄まじい世紀の綱引きに海中やマンダラ山の多くの生物が死に絶えました。しかし、攪拌が進むと願いのものを生み出す神の牛や酒の女神といった様々なものが生まれ、その最後にダヌヴァンタリという神がアムリタの壺と共に現れ、デーヴァとアスラとで激しい奪い合いがおきます。そこでヴィシュヌは美女に変化してアスラ達を魅了し、まんまと霊薬をデーヴァのものとしました。
ヒンドゥーの神話ではこうして神々は不死となり、アスラ族は強力な魔力を持つものの、限りある命になったと言われています(アスラは仏教でいう阿修羅ですがこの逸話から「飲まない」を語源とする説があります)。
アスラ族はヒンドゥーでは魔族として神々に敵対するものですが、ペルシャではこの関係は逆転していて、要はそれぞれが相手の信仰するものを「神の敵対者」と捉える構図になっています。
仏教になるとアスラ(阿修羅)は「かつては魔族であったが仏法を守護するものとなった」という風に取り入れられる一方、密教の発達によってすべての源である大日如来として信仰されるようにもなるという興味深い関わり方をしています。
「乳海撹拌」についてはもっと細かいエピソードや異説などもあるのですが、長くなってしまうのでこの辺りで。
大雑把ですが何かお役に立てれば幸いです。
お礼
お答えいただきありがとうございます。 本当に壮大なお話ですね。色々と参考になりました。