現在、「とる」という訓が掲げられている常用漢字は、
「取る」「採る」「撮る」「執る」「撮る」の五つです。「摂」には「セツ」という音しか掲げられていません。
よって、常用漢字表の範囲内で書くとすれば、「取る」ないしは平仮名でしょう。「取る」は広く「とる」の意味の言葉に当てられています。
以下は、以前お答えしたものです。参考になさってください。
「とる」は、次のように書き分けます。(「『異字同訓』の漢字の用法」昭和47年 国語審議会漢字部会作成資料)
取る・・手に取る。着物の汚れを取る。資格を取る。メモを取る。連絡を取る。歳を取る。
採る・・血を採る。高校の卒業生を採る。会議で欠を採る。
執る・・筆を執る。事務を執る。式を執り行う。
捕る・・ネズミを捕る。生け捕る。捕り物。
撮る・・写真を撮る。映画を撮る。
「捕る」は「つかまえる。捕獲する」の意味、「撮る」は「撮影する」という意味にしか用いないので、識別は比較的簡単です。
それ以外の三つは、それぞれ類義の熟語を思い浮かべると、意味・使用法がおわかりになりやすいと思います。
「取る」は、「取得」などの熟語があり、手に入れる、引き離すというニュアンスがあります。また、例文のように多様な意味に使われるので、他の四つ(採・執・捕・撮)以外に使う、と覚える方が合理的でしょう。
「採る」は、例文の順に「採血」「採用」「採決」。意味は「選んでとる」のニュアンスを持ちます。また、植物や貝類など動きがない(少ない)ものを収穫する(採集する)という意味に使います。「昆虫」をただ捕まえるときには「取る」や「捕る」を使いますが、つかまえて標本にする場合には「採る」を使うのが適切です。
「執る」は、「執筆」「執務」「執行」など。「物事をとりおこなう」の意味を表します。
「『ことば』シリーズ13 言葉に関する問答集6」(文化庁)を参考にしました。