「アトキンス 物理化学 下」の該当箇所を見てみました。私も物理化学は苦手ですので,こんな感じじゃないかという事だけアドバイスさせていただきます。
まず,「熱爆発」については『反応速度が温度上昇とともに急激に増加することによる』と書かれています。
また,『発熱反応のエネルギーが逃げられない』⇒『反応系の温度が上昇』⇒『反応がいっそう速くなる』⇒『温度の上昇がいっそう速くなる』⇒『反応がいっそう速くなる』⇒ ・・・・ ⇒『破局的に速くなる』とあり,反応速度の面からの説明がされています。
さらに,「連鎖分枝爆発」については,『反応に分枝段階があると(反応の連鎖の中で枝分かれが起こると),連鎖中心の数(反応の数)が指数関数的に増大するため,反応速度が怒濤のように(増大して)爆発に至る』とあります。
で,「爆発限界」もこれらの反応速度といった面から考えれば良いように思います。例として上っている反応は水素と酸素の間の反応「2H2(g) + O2(g) → 2H2O(g)」で,この反応の機構として次の連鎖反応が上っています。
【開始反応】
H2 + O2 → ・OH + ・OH
【成長反応】
H2 + ・OH → ・H + H2O
・(O2)・ + ・H → ・O・ + ・OH(分枝)
・O・ + H2 → ・OH + ・H(分枝)
・H + O2 + M → HO2・ + M*(3体衝突)
【消滅反応】
・X + 壁 → X・消滅(・X は各種ラジカル分子種)
ここで,爆発が起る上で重要なのは「分枝反応」が継続される事です。つまり,そのための熱(活性化エネルギー)が供給される事と,「消滅反応」よりも「分枝反応」が速く起る必要があります。
この熱に関係するのが「温度」で,「圧力」は「反応速度」に関係してきます。もう少しいうと,「各化学種が出会う頻度」に関係します。当然,圧力が高い程頻度は高くなり,反応速度は速まります。では,圧力の低い方から順番に見ていきます。
【圧力<第一爆発限界】
「成長反応」で生じる連鎖伝達体(・H, ・O・, ・OH, ・OH2 など)が壁と衝突して消滅 ⇒ 「分枝反応」が中断 ⇒ 爆発は起きない
【第一爆発限界<圧力<第二爆発限界】
連鎖伝達体(・H, ・O・, ・OH, ・OH2 など)が壁に到達する前に反応相手(H2, ・(O2)・, H2)と衝突するようになり,「分枝反応」が繰り返される ⇒ 「分枝反応」の速度が増大 ⇒ 爆発!
【第二爆発限界<圧力<第三爆発限界】
気体中の分子の濃度が高くなり,3つの化学種が同時に衝突する反応(3体衝突)が起こる ⇒ 「分枝反応」で生じる連鎖伝達体の ・H が「分枝反応」から外れる ⇒ ・O・, ・OH, ・OH2 なども生成しなくなる ⇒ 「分枝反応」が只の「連鎖反応」に ⇒ 爆発しない
【第三爆発限界<圧力】
反応速度が非常に増大して「熱爆発」の可能性が高まる。また,HO・ が壁に衝突して消滅する速度よりも,H2 と衝突して HO・ + H2 → H2O2 + H・ の反応の速度が上回る ⇒ 「分枝反応」が「消滅反応」を上回る ⇒ 爆発!
如何でしょうか。何かの参考になれば幸いです。
お礼
丁寧な解答どうもありがとうございます。 私にとって必要なのは「危険物取り扱い資格試験」程度のものではなく、院試で必要になるためにもっと突っ込んだレベルのことを必要としています。 ht1914さんの説明だと高圧・低圧だと片方の圧力が小さいために反応に必要なだけ反応物が存在しないために うまく反応しない、ということですけど、 アトキンスには全く別の説明が載っているのですが。 爆発限界には3つあり極低圧から圧力が上げていくと 定常的な反応→爆発→定常的な反応→爆発というふうに変化すると書かれています。 つまりどちらか片方の圧力だけを大きくする(片方の濃度を薄める)ということではなく 全体としての圧力を大きくするというふうに書かれているように思うのですが。 図付きで説明は書いてあるのですが、私にはこのことを理解することが出来ません。 どういうふうに解釈すればこのことを理解出るのでしょうか?