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物質の持つ基本的な値の反転
ある小さな磁石に強烈な磁石を近づけ場合、その極が同じ向きなら小さな磁石の極は反転するのでしょうか? また、あるプラスとマイナスの対になった電荷を持った物体に、強烈な電荷を持つ物体を近づけた場合、その極が同じ向きなら前者の電荷が反転するような事象は起こるのでしょうか? その他、物質の持つ基本的な値(例えば電荷・スピン・その他正負がある値)が、何らかの作用により反転する事象がありましたら教えてください。 但し、これらは保存則を成立させるため、単独で極性が反転することはないと思うので、ある値が反転したら、その反対の値がまた反転するはずだと思います。
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> 例えば1T(テスラー)程度の磁石に1cm程度離して電磁石を置いたとき、電磁石の電流を増加させて磁力を大きくさせた場合、何T(テスラー)程度で磁石の磁極の反転が開始するのでしょうか? 下の回答で書いた保磁力とは、一度ある方向へ完全に磁化を向けてある磁性体(この場合は磁石)に対し、磁化と逆方向の磁場をかけて逆磁場の強さを強めていき、磁性体の磁化がゼロになった時の磁場の強さで定義します。磁化がゼロというのは実際には、磁性体の中の磁区(小さな磁化領域)の方向が元の方向と逆方向の間で分布して、全体として磁化がゼロに見える状態です。 磁石材料で、この磁化の反転を阻止する主な原因は、磁石材料の持つ結晶磁気異方性と呼ばれるもので、磁化の素となる原子レベルでのスピンが、結晶の特定方向に安定して留まり易い性質です。ただし、他にも、磁区構造の反転にかかわる磁壁移動の容易さ(これは、磁石材料の結晶粒界の出来具合などが影響する)など、いろんな要因も関係しています。また、磁石は通常多結晶なので、磁石の中で結晶磁気異方性の方向もバラバラに向いており、ある磁場の値で揃って一斉に磁化の向きを反転するわけでは有りません。 結晶磁気異方性だけを考えた場合ですが。ほぼ磁性体の磁化方向を揃えた磁場(飽和磁場と言います)から徐々に+方向の磁場の値を減らしていくと、まず無理矢理磁場方向に向けられていた磁区の磁化の中で、比較的動きやすい状態のものから順に結晶の磁化安定方向へと磁化の向きを変えていきます。ただ、磁石材料の場合には、この結晶の磁化安定方向を比較的同じ方向へと揃えて作ってあるので、それほど極端には磁化方向は回転しません。やがて、かけている磁場をゼロにまで減らします。このゼロ磁場状態で示す磁化を残留磁化と呼び、出発時点での磁化(飽和磁化)で割った値を角形比と呼びます。この角形比の1に近いものが良い磁石と言われます。たぶん、出来の良い磁石なら、この時点では1,2%程度の磁化減少ぐらいでしょう。 そして、今度は-方向に磁場をかけていくと同じような感じで徐々にそれぞれの磁区の中の磁化は、多少のバラツキを持って反転していき、角形比の良い磁石なら保磁力付近で急激に磁化反転が進み、一気に逆方向に磁化が向きます。 ですから、回答としては、磁石の磁化は逆方向の磁場を加えた場合も、逆磁場を加えると直ぐに磁化反転は徐々に始まり、保磁力付近の逆磁場で急激に磁化反転が進む、です。 > その場合、ある値で一気に磁石の磁極の反転が起きるのでしょうか? > あるいは、電磁石の磁力に比例して、磁石の磁極の反転の割合が比例して増加するのでしょうか? 磁化反転は相転移のようなものではないので、一気に起こる現象ではないです。棒の両端にぶらぶらと同じ重さの重りをぶら下げたようなものを考えれば良いでしょうか。その棒の真ん中を滑りの良い軸で支えると、棒は地面に平行な状態で安定になるでしょう。これが磁石の中の一つの磁区の磁化の出発状態です。磁場を加えて反転させるという作業は、この棒に力を加えて徐々に回転させていくようなものです。回転させる力を徐々に増やしても、最初は棒はゆっくりとしか回転していきませんが、ちょうど棒が地面に垂直になった付近、これが磁化反転での保磁力付近で急激に、回転(反転)が進みます。 > また、電磁石の磁力を大きくさせた場合、磁石の磁極の反転する割合は、量子力学か固体物理学(?)等の式を使用して計算できるのでしょうか? 磁石の磁化反転はマクロな物理現象なので、量子力学は表だっては出てきません。理想的な磁石として結晶磁気異方性だけを考えるなら、磁化の回転角と磁場の関係は普通の力学計算で計算出来ます。
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- kenojisan
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磁性が専門なので、磁石の話しだけ回答します(電荷の誘電分極もほぼ同じだと思いますが、電荷は一応単極が存在しますので) まず、磁石はその基本起源が電子スピンですが、スピンのレベルまで小さくしても、磁化には単極は存在しません。従って、「頭が西むきゃあ、尾は東」で、保存則の問題ではなくて本質的に一方を反転させれば逆方向も反転します。 次に、磁石に強い磁場をかければ、磁極は反転します。磁石というのは、鉄やニッケルなどと同じ「強磁性体orフェリ磁性体」と呼ばれる、無磁場中でも磁化を発生する磁性体の仲間ですが、磁化の向きを保つ力(保磁力)が大きく、且つそこそこ磁化の値も大きい材料を選んで作られたものです。ですから、当然保磁力より大きい磁場をかければその向きに反転します。現在市販の最も保磁力の大きい磁石(SmCo系かな?)でも、その値は1T(テスラー)程度ですから、少し大きな電磁石を使えば反転可能ですよ。
補足
お返事ありがとうございます。磁石に強い磁場をかければ、磁極が反転することはわかりました。 更に教えてください。 例えば1T(テスラー)程度の磁石に1cm程度離して電磁石を置いたとき、電磁石の電流を増加させて磁力を大きくさせた場合、何T(テスラー)程度で磁石の磁極の反転が開始するのでしょうか? その際磁石の磁極の反転が始まる何か特別な値があるのでしょうか?(例えば、水が凍るときの温度=零度のようなものです。) その場合、ある値で一気に磁石の磁極の反転が起きるのでしょうか? あるいは、電磁石の磁力に比例して、磁石の磁極の反転の割合が比例して増加するのでしょうか? また、電磁石の磁力を大きくさせた場合、磁石の磁極の反転する割合は、量子力学か固体物理学(?)等の式を使用して計算できるのでしょうか?
補足
懇切丁寧なご説明ありがとうございます。 よくわかりました。さらに下記について教えてください。 ブルーバックス「場とはなにか」 故都築卓司先生著 P160に「強磁性体というのは、固体の中で原子磁石が整列しているものをいう。電子1個も小さな棒磁石だが、原子も棒磁石としての機能をもち、この場合にも“スピン”と呼ぶ。 ところが多少温度があがって、何らのひょうしに一部のスピンが反対方向をむくと、将棋倒し的にスピンの傾きが移動していく。これを“スピン”波と呼ぶ。」とあるのですが、この「何らのひょうし」とはどのようなことがあるのでしょうか?