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小林秀雄のやさしい解説書

 小林秀雄を理解したいと思います。  「様々なる意匠」「無常といふこと」を読んでもほとんど意味がわかりませんでした。  小林秀雄に関する解説書が少なくて見つけるのに苦労しています。  高校生にもわかるようなやさしい解説書、またはサイトがあれば紹介してください。    

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回答No.2

小林秀雄は、フランスの十九世紀から二十世紀の文学や思想(ランボー、ヴァレリー、ベルクソン)を学ぶことから出発し、西洋思想そのものの研究に向かうのではなくて、自分自身の問題意識に向かっていった人です。 文芸批評の分野でおもに活躍したけれど、モーツァルトやゴッホ、あるいは実朝や本居宣長、といった「創造的な天才」を語りながら、そのじつ、つねに自分自身を語っていた。 小林秀雄のむずかしさもおもしろさも、そういうところにあると思います。 たとえば、加藤周一は『日本文学史序説(下)』(ちくま学芸文庫)のなかで、このようにいっています。 「小林秀雄の文章は、おそらく芸術的創造の機微触れて正確に語ることのできた最初の日本語の散文である。その意味で批評を文学作品にしたのは、小林である。しかしそれほどの画期的な事業は、代償なしには行われない。代償とは、人間の内面性に超越するところの外在的世界――自然的および社会的な世界――の秩序を認識するために、有効で精密な方法の断念である。」(p.501) 批評文、あるいは論説文というのは、ひとつないしはひとつながりの問題から出発するものです。 その答えを得るために、確実なところから出発し、論理を積み上げていきます。そうして、本に書かれているのは、その答えです。 多くはその「問い」は書かれていませんから、読み手は、読むことを通じて、逆にその「問い」を、自分の手で作り上げていかなければなりません。 ところがフィクションは、そういうものではありません。 全体が問いであり、同時に答えでもある。 もちろんわたしたちは筋道をたどりながら読んでいくわけですが、その問いも答えも、自分で見つけ、答えていかなければなりません。 小林の評論は、「創造的な天才」が芸術作品を作り出すその現場、たとえば吉田兼好が『徒然草』を書いた動機、本居宣長が古代文献の研究に向かった動機を、自らに重ね合わせつつ洞察し、それを非常にいきいきとした描写で描く。わたしたちはこれを読むと、ハッとするし、おそらくそうだったにちがいないと思い、感動するし、兼行や宣長を「生きた人間」として感じることができる。けれども、それが批評のありかたとして、どこまで有効なのか。 小林秀雄の作品は、そういうものであると思います。 たとえば、小林の著作のなかでも比較的読みやすい『蘇我馬子の墓』を見てみると(いや、単にわたしが好きだというだけなんですが…)、こんな文章から始まっています。 「岡寺から多武峰へ通ずる街道のほとりに、石舞台と呼ばれている大規模な古墳がある。この辺りを島の庄と言う。島の大臣馬子の墓であろうという説も学者の間にはあるそうだ。私はその説に賛成である。無論、学問上の根拠があって言うのではないので、ただ感情の上から賛成して置くのである。この辺りの風光は朝鮮の慶州辺りにいかにもよく似た趣があると思いながらうろつき廻っていると、どうもこの墓は、馬子の墓という事にして貰わないと具合が悪い気持になってきたのである。」 文章の展開のさせかたも、断定も、実に小林秀雄らしい文章ではないかと思います。 このなかには、蘇我馬子のことも、聖徳太子のことも、聖徳太子の仏教思想のことも、馬子の墓が当時珍しい石造り建築であることも、日本の木造建築の繊細さ、滅びやすさも、歴史ということも、伝統ということも書いてあります。そういったさまざまなことがらが、一種の模様のように織り上げられた、美しい布を見ているようです。 「理解したい」とおっしゃる質問に、こう回答するのも、とぼけた話なのですが、わたしもまた、「理解したい」と思います。そうして、その理解というのは「著者は何が言いたかったのか」ではなく、たとえばこんな文章「ある種の記憶を持った一人の男が生きて行く音調を聞いただけである」(『蘇我馬子の墓』)を。 おそらく、心に残った部分を胸の内で反芻し、忘れ、また読み返し、そうやって少しずつわかっていくようなものではないか、と思います。 なお、小林秀雄に関しての評論というと、中村光夫が比較的まとまったものを書いています。大きい図書館に行ったら、筑摩から出ている『中村光夫全集』の第六巻「作家論(四)」に「さまざまな意匠」含め、いくつかの評論が収められています。

その他の回答 (2)

回答No.3

本を読んで意味が分からない場合には、大きく理由は二つあります。 1)使はれてゐる言葉が分からないこと 2)扱はれてゐる内容が分からないこと 先づ、分からない言葉を全部、きちんと辞書で引くことが大切です。特に、小林秀雄の若い頃の文章には、難しい漢語が多く出て来るので、これらの意味を押さへてください。 固有名詞や、特殊な用語については、新潮社から出てゐる『小林秀雄全作品』といふ全集に、かなり詳しい脚注が付いてゐますので、この全集を図書館で借りて読まれると便利でせう。 次に、内容の理解に必要な予備知識、あるいは体験の問題です。「様々なる意匠」では、新感覚派やマルクス主義などが登場しますが、横光利一、小林多喜二といつた作家をお読みになつたことがありますか。お読みでないとすれば、小林秀雄がこれらの作家達を思ひ描きながら書いた文章の意味を十分に読み取ることは難しいでせう。 もし、小林秀雄の本を何でも良いから読んでみたい、といふことでしたら、全集の「考へるヒント」といふ題の巻に収められてゐる短い文章などから始められる方が、入りやすいと思ひます。すこし難しいものに挑戦したいといふお気持ちがあるのならば、「私の人生観」をお勧めします。また、絵がお好きであれば、「近代絵画」もおもしろいでせう。 小林秀雄自身の文章以外では、小林秀雄の考へを若い人達に解りやすく伝へたい、といふ思ひから、実の妹さんである高見沢潤子さんが書かれた『兄小林秀雄との対話』が良い本です。対話形式になつてゐますので、とても読みやすく書かれてゐます。

  • ricanmuri
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回答No.1

失礼ですが小林秀雄を読める人は今の大人の中には限られています。 勿論小輩もその独りです。 まず読書の量が不足していませんか? 岩波・新潮文庫、各100冊は読みましたか? いきなり高等な書物に向かうのは、初心者がいきなりK2登坂するやぅなもので、墜落しますよ