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アルマイト処理の放熱性能
アルマイト処理を施すと、放射率が高くなり、放熱性能が良くなるようですが、質問(1):ではなぜ、アルマイト処理をすると放熱性能が高まるのでしょうか?推定1:酸化皮膜(酸化アルミ)から空気中への熱伝達が促進される?、推定2:表面が多孔質(蜂の巣状)になることで表面積が増える?、質問(2):アルミ素地に黒色塗料を塗布すると放熱性能が高まる理由も教えて下さい。以上、よろしくお願いします。
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No.2です。 事情はおおよそ分かりました。学生さんの課題でなければ問題ありません。 対象がヒートシンクなのですね。 ということは、反射、透過、吸収という概念だと分かりにくいかもしれません。 しかし、輻射率がなぜ変化するのかという質問に対しては、入射、反射、透過、吸収ということを考える必要があるので、しばらくお付き合いください。 定常状態では、吸収されたエネルギーは輻射で逃げるエネルギーと等しくなります(対流や拡散による熱輸送が無い場合)。 従って、吸収率が上がれば、放射率も上がることになります。 まずアルミニウムの場合です。 外部から入ってきたエネルギーのうち、吸収されなかったエネルギーは透過するか反射するしかないと前回書きました。 金属の場合は、反射は自由電子によってなされます。 金属光沢のピカピカした感じは、自由電子によるものです。 アルミは通常天然のアルマイト層がありますが、切削加工などを行うと、このアルマイト層は削られてしまうので、その後自然に形成されたアルマイト層はあったとしても極薄いものになります。 従って、切削加工後に形成された天然のアルマイト層の輻射率向上に対する効果はあまり無いと予想され、金属の表面状態に近づいていると思われます。 また、同じく自由電子によって、金属内部にはほとんど透過しません。 従って、金属の場合、吸収されるエネルギーは、入射されたエネルギーから反射されたエネルギーを差し引いたものになります。 そして、反射率は一般に高いため、あまり吸収されないことになります。 一方、アルマイト層などの酸化物を表面に形成した場合、表面は金属ではなくなっていますから、自由電子はほとんど存在しません。 代わりにアルマイトは絶縁物ですから、広いエネルギーバンドギャップが形成されます。 自由電子が無くなったために、反射は減ります。 ただし、バンドギャップよりも低いエネルギーの光は原理的には吸収されずに透過してしまいます。 このため、アルミナは本来可視光などでは透明になります。 単結晶アルミナ(サファイアなど)は可視光で透明ですね。 それでは透過はどれくらいあるのかということになります。 可視域では、アルマイト層を透過した光は、バルクのアルミニウムで反射され、アルマイト層に戻ってきて、一部は外部に逃げ、一部はアルマイト層表面で反射し、多重反射を起こすと思われます。 このときの反射は、膜厚によって反射される光の波長に選択性が生じ、その結果、色が付いて見えます。 従って、黒色でも白色でもアルマイト層の厚みが異なるだけで、アルマイトの物性自体が変化しているわけではありません。 ただ、可視域では、黒と白という色の違いにより性能に若干差が出てくる可能性がありますが、1000℃以上の高温でないと効いてこないでしょう。 対象となっているICなどではせいぜい100℃のオーダーです。 このときの輻射のスペクトルは8~10μmでピークを持つ赤外になります。 従って、色の違いによる輻射率の差はほとんど生じないと思われます。 アルマイト(アルミナ)のこの波長域での吸収特性をざっと調べたところ、見つけられなかったのですが、この波長域ですと、おそらく格子振動のエネルギーとマッチし、その結果吸収されると考えられるのではないかと思います。 従って、透過はあまり無いと予想されます。 以上のことから、アルマイトでは反射も減り、同時に透過も減る(対象となる波長域では)と考えられます。 従って、アルミニウムよりもより多くエネルギーが吸収されることになります。 以上をまとめると、アルミニウムよりもアルマイト(アルミナ)の方が、吸収率が高いことになります。 これは、即ち放射率が高いということになります。 実際に計測された放射率では、うろ覚えですが、アルミが多分0.4~0.5くらい、アルミナが0.7~0.8くらいだと思うので、15%の効率アップというのは少ないのですが、これは熱対流による熱輸送の効果が大きいため、輻射の増大の効果がマスクされてしまっていると思います。 塗料についてですが、多分有機物が含まれた塗料なのではないかと思います。 有機物では赤外領域に多数の吸収帯がありますので、吸収率があがると思います。 可視域での色は、この場合あまり関係無いのではという気がします。 この分野の専門家ではないので、説明が分かりにくいところがあるかもしれませんが、ご容赦ください。
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- ke-ke
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私でも回答できるようならばもう一度回答させて頂こうかと 思ったのですが、その前にご質問の内容を確認させてください。 今の状況としては、塗料のことを別として、 (1).無垢のアルミとアルマイト処理したヒートシンクを用いて実験を行った。 (2).アルマイト処理をしたヒートシンクを用いたほうが半導体温度が下がって伝熱(放熱)が促進されていることが分かった。 (3).伝熱が促進された原因を考察したところ、(ヒートシンクから外部への伝熱機構である対流伝熱と放射伝熱のうち)、アルマイト処理により放射率が上がったことにより放射伝熱が促進されたことが原因、と考えた。 ということかと思います。 ご質問の内容としては、アルマイト処理をすると放射率が上がる 理由でしょうか。それとも放射率が上がると放射伝熱が促進される 理由でしょうか? またまた誤解していたらすみません。
- sat000
- ベストアンサー率40% (324/808)
課題か何かでしょうか。 どうもそういう風にも読めるので、もう少しあなたの事情・背景などを書いた方が回答がつきやすいと思いますよ。 さて、 > なぜアルマイト処理をすると放射率が高くなるのか? ですが、もし課題などの場合には直接の答えを書くことはできませんので、とりあえずヒントだけを。 仕事上などでお困りの場合には、機会があれば後日回答を追加します。 アルマイト処理する前は、理想的には金属アルミニウムです(表面の自然に形成される薄いアルマイト層をとりあえず無視しています)。 放射率(輻射率、エミッシビティとも言います)とは、多くの場合ほぼ吸収率と同じ値です。 それでは吸収されなかった光・電磁波はどうなるのでしょうか。 透過するか反射するかしかありません。 金属(アルミニウム)と酸化物(アルマイト)の、特に反射の違いに関して考察すれば、なぜアルマイトの方が放射率(=吸収率)が大きくなるのかが見えてくるはずです。 実際には、透過についてもちょっと考える必要があると思いますが(酸化物でもガラスのように透過率が高い物もある)。 また、黒い塗料についてですが、黒とは可視域に関してどのような物理的意味があるのかを考えると良いでしょう。 要するになぜ黒は黒く見えるのかです。 実際にはこれも考えるべき温度などによっては、赤外域で可視域と同様に「黒い」(赤外域にはもちろん色はありませんが、可視域における黒と同じ物理的意味だということです)かどうかという観点での考察が必要になります。 なお、推定1の熱伝達という言葉には、熱対流、熱拡散、熱輻射による総合的な熱の伝達を指す言葉ですので、この場合はあまり適切とは言えないでしょう。 三要素のどれが増加しても熱伝達は増えます。また、必ずしも空気に熱を逃がすとは限らない(特に輻射の場合)ので、系外とか外部へという表現の方が良いかと思います。 もちろん放射率が良くなれば、その分系外への輻射は増えます。 増えたから放射率が良くなるわけではありません。 それから推定2ですが、表面積が実効的に増えれば、トータルの輻射量を増やすことは可能かと思います。 ただ、微細孔は直径に比べて長さがかなり長いと思われるので、輻射の実効的表面積増大にはほとんど寄与しないのではないかと予想します。 また、アルマイト処理の場合、必ずしも微細孔を放置したままとは限らず、耐蝕性向上の観点から孔を塞ぐ処理を追加していることもあるかと思います。 もちろん孔を塞げば表面積増加には寄与しなくなります。 なお、表面積の大小と、放射率の大小は無関係です。 放射率は物性値のようなもので、表面積に左右されません。
お礼
sat000さん どうもありがとうございました。私は、とある半導体部品の放熱設計(ヒートシンク使用)を始めてまだ日が浅い駆け出しエンジニアです。本を読んだり、人に聞いたりしながら、いろんな実験を行っているのですが、一筋縄ではいかないようです。(尚、私は学生ではありません。) 今までの検討結果を簡単にお話しします。 (1)実験的には切削のアルミより、そこにアルマイトを施した方が15%程度、温度の低減効果がある。 (2)しかし、黒アルマイトと白アルマイトの効果の差はほとんどない。 (3)塗料を塗っても黒アルマイトとほぼ同等の効果がある。 そこで行き着いたのが、なぜアルマイトをすると放射率が高くなるのか?でした。半導体部品からの熱がヒートシンクのフィン先端に伝わり、そこから大気中に放出される過程で「吸収率」という考え方はイマイチピンと来ません。半導体部品から伝わってきた熱がなぜ促進されるのかがわからないのです。何か的はずれなことを言っているのかもしれませんが、よろしくお願いします。
- ke-ke
- ベストアンサー率50% (13/26)
放射伝熱量(放熱量)は、放射率x(物体の絶対温度)^4に 比例するので、質問者の方が仰っているようにアルマイト処理を すると放射率が高くなるということでしたら、その分だけ放射 伝熱量としては大きくなることになります。 一方、対流伝熱量は、熱伝達係数x表面積x温度差で表され ますが、熱伝達係数は表面状態が同じであれば、伝熱面の 材質にはあまり影響なかったと記憶しています。 表面がポーラスになれば、流れが乱されて熱伝達係数が 向上する、または、表面積が大きくなる、ということ あるかもしれませんが、熱伝達係数x表面積で評価したら、 処理前後であまり差が無いと思います。 ということで質問(1)の答えとしては、放射率が大きくなる ことで放射による放熱量が増えるから、質問(2)の答えと しては、黒く塗ることで放射率が上がる(黒体に近くなる)から、 ということになるかと思いますが、これで回答になっていますか?
補足
ke-keさん 早速の回答、ありがとうございます。 私の頭の中がこんがらがっていたようで、質問が適当ではありませんでした。大変申し訳ありません。 私がお聞きしたかったのは、「なぜアルマイト処理をすると放射率が高くなるのか?」でした。 何か知見があればお願いします。
お礼
sat000さん ありがとうございました。「エネルギーバンドギャップ」のあたりはもう一度、文献等で理解を深めておく必要がありますが、それ以外のところはよくわかりました。大変ありがとうございます。