以下のとおりお答えします。
>上田敏って昔いた詩人って知ってますか?
⇒おお、なつかしい!
私は、中高大で各1つずつ、合わせて3つ習った覚えがあります。
A.それぞれの詩
①中学の国語の教科書に出ていたのは、ヴェルレーヌの「落葉」(らくえふ)でした。
《秋の日の/ヸォロンの/ためいきの/身にしみて/したぶるに/うら悲し。(…)》
ろくに意味も分からず丸暗記したものです。あるときスラスラ暗唱していたら、兄が感心してました。ちょっと面映ゆい気分でした。
②高校の国語の教科書に出ていたのは、カァル・ブッセ『詩集』から採られた「山のあなた」でした。これも暗記しましたが、訳詩があまりにも有名なので広く知られていますから、以下は省略します。
③大学の英語の教科書に出ていたのは、Robert Browning, "Spring"でした。
《The year's at the spring / And day's at the morn; / Morning's at seven; / The hill-side's dew-pearled: / The lark's on the wing; / The snail's on the thorn: / God's in his heaven ― / All's right with the world!》
これを和訳して、内容を吟味し、鑑賞し、心行くまで味わおう、というものでした。
B.それぞれの周辺状況
①「落葉」のあとに訳者上田敏はこんな添え書きをしています。
《仏蘭西の詩はユウゴオの絵画の色を帯び、ルコント・ドゥ・リイルに彫愬の形を具へ、ヸェルレエヌに至りて音楽の声を伝へ、而して又更に陰影の匂なつかしきを捉へむとす。》さすがの学者的詩人。《ヨーロッパの当時の文芸思潮を熱心に紹介し、後進を啓発した。たとえば永井荷風は、「上田先生などの著述の感化で、西欧の風物文物へのあこがれを持った」由を綴っている(書かでもの記)》という。
②ブッセ「山のあなた」も後世への影響大で、例えば、アルゼンチンの詩人音楽家A・ユパンキはこれに心酔して名曲を書いています。《時々私は、自分がどうして/こんなに世界を歩きたくなるのか/分からなくなる。/いこいの木陰が見つかるあてもないのに…。/たぶん、すすり泣きのような/深い深い一つの和音を/いつかは聞けるだろう/いつかは聞けるだろうと…。》
③上田敏『海潮音』における"Spring"の翻訳はこうでした。
《「春の朝(あした)」―― 時は春/日はあした/あしたは七時/片岡に露みちて、/あげひばりなのりいで、/かたつむり枝にはい、/神そらに知ろしめす、/すべて世は事もなし。》
⇒さすがのお訳、勉強になりました。感動しました。琴線に触れました。参りました。
C.訳詩以外の蛇足
(1)手元にある『海潮音』は、初版本(復刻版)ですので、奥付にこうありました。
《明治三十八年十月十三日発行 定価 金壱圓》 (^o^!)
「定価 金壱圓」とは、なんという違いでしょう! それに引きかえ、『海潮音』に収録されている訳詩の与える感動は当時も今も全然変わりがありませんね!!
(2)上田敏は数十編の訳詩集を出版していますが、自作の作品としては唯一、自伝的小説『うづまき』(大倉書店、明治43年刊)があるのみ、らしいです。私は、浅学にしてそれを見たことも、読んだこともありません。振内山(@samusamu2)さん、もしあなたがお読みになりましたら、ぜひ感想など教えてください。 (<Q>)
お礼
Nakay702さんこんばんわ。 すごいですね!今も上田敏の誌をそこまで覚えているとは! Nakay702さんはきっと上田敏の誌にシンパシーを感じたからこそ今も深く覚えてらっしゃるのでしょうね。さすがです! >>振内山(@samusamu2)さん、もしあなたがお読みになりましたら、ぜひ感想など教えてください。 (<Q>) はい、機会あれば読んでみたいとおもいます。 回答ありがとうございます