アウンサンスーチーさんの父親で「建国の父」と国民から広く尊敬を集めているアウンサン将軍は、その名の通り元々軍事的リーダーで当初は大日本帝国と組んでビルマ(ミャンマー)独立を果たしますが、第二次世界大戦で大日本帝国の敗色濃厚と見るや日本を裏切りイギリス側につき、クーデターを起こして日本軍を追いやったということをやっています。
つまりミャンマーにとってはクーデターは時に自国の独立を保つ手段でもあるのです。なにせ建国の父がそういうことをやっていますからね。
そのアウンサン将軍は何者かによって暗殺されますが、ミャンマー人の間では「イギリスに暗殺された」と信じる人が大半だといいます。
軍事政権は長いことそのイギリスと戦ってきたという現代史があります。「ビルマ独立戦争」とはイギリスとミャンマー人との戦いだったのです。実際、軍事政権はミャンマーの豊富な鉱物資源などをイギリスから徐々に取り戻すなんてこともやっていたのです。
またスーチーさんによって樹立した民主政権は、発展途上国の民主主義のお約束で、腐敗だらけでもありました。誰が権限を持っているかが不明瞭で、なかなか話が前に進まないのです。
だから多くの日系企業は軍部ともパイプを持っていました。軍隊ってところは上意下達の組織ですから「階級が上の人からの命令を持ってきた」というととにかくそれは実行されるんですね。
軍部の上層部というのは、ある意味エリートでもありますから「アホな国民に任せると、国がしっちゃかめっちゃかになる」という思いもあるのです。イギリス人の夫を持つスーチーさんは、軍部からすると「イギリスの手先」にも見えるんですね。
だったらスーチーさんを殺しちゃえばいいじゃないか、他にこれといった民主化リーダーがいるわけでもないし、と思わなくもないのですが、なぜか軍部はそれは絶対にやらないですね。
「アウンサンの血筋をひく」というのは、もしかしたらミャンマー人にとっては日本における天皇のような存在なのかもしれませんね。
軍事政権が民主化する上においては、こういう流血と暴力は避けて通れない道なのですよね。韓国でもそうでしたし、フィリピンなどでもそうでした。もっといえば元祖革命であるフランス革命もルイ16世やマリーアントワネットからロベスピエールに至るまで断頭台に乗せられた人は数知れず、「レミゼラブル」にもあるように蜂起と弾圧をくり返しながら変わっていきます。
教育水準が行き届かない国での民主化ってのは、本当に大変なのですよ。日本は江戸時代から庶民への教育水準が高かったので、明治維新という国家と社会と文化が劇的に変わる出来事があんなにスムースに事が運んだのですが、世界史から見ると極めて稀なケースです。
お礼
難しい問題なのですね。 今、国軍のTOPの方が正常化されれば、本当の意味の国の英雄になれるのに残念に思います。 ありがとうございました。