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PVD処理によるSKD11の膨張原因について
- PVD処理によるSKD11の膨張原因についてを解説します。
- 処理品サイズは直径20mm×L500mmで、処理温度は約400℃です。
- CrN膜厚は0.006mmで、処理後の20mm部の直径膨張量は0.03mmです。
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問題となった膨張の発生原因について、今までのご説明の内容からは、焼き入れ焼きもどしからCrN処理の間における残留オーステナイトのマルテンサイト化しか考えられません。処理企業と事前調整の上、再試作により確認する以外、手がなさそうです。以上よろしく。 追記。回答3に記載の推奨鋼種SLD8,DC5は、SLD8,DC53の誤りです。訂正します。
回答3の補足。熱履歴に疑問があるので現品の硬さを測定してみて下さい。硬さがHRC58程度であれば、PVD処理の段階で520'Cぐらいの温度に加熱され膨張の原因になったもの推定されます。焼きもどし温度500'Cの場合の硬さは、HRC60程度です。なを、残留オーステナイトは焼きもどし温度が500'Cから520'Cへの上昇によって、約13%から3-5%に減少します。残留オーステナイト量の測定によって熱履歴は、より解明されます。 500'C焼きもどし材を400'C(CrN処理)した場合、硬さ、残留オーステナイト量の変動はないので膨張現象は発生しません。以上。
回答2に補足します。(1)SKD11 Q; 1030'C. T;500'Cx2回の処理材の常温における経時変寸率は、0.013%程度で約30日で安定する。(大同特殊鋼技術資料) ご質問の事例では変寸率0.15%に達しており、520'C焼きもどしの場合の変寸率に相当し、かなり大きい。ご指摘の如く発生原因に疑問がある。(2) CrN被膜処理温度は400'Cとのことであるが、SKD11に対してはCrN層の耐剥離性改善のためラジカル窒化(400-560'C)との複合処理を施すことがある。実施したか、どうか、処理温度を含めて確認の必要がある。処理温度が高い(450'C以上)と膨張する。(3)CrN層の耐剥離性の向上には、CrN層直下の硬度を高くする必要がある。金型使用中の摩擦熱による基材の軟化を抑制するため、焼きもどし軟化抵抗性の優れたSLD8,DC5の採用が望ましい。加工工程としては、熱処理;Q:1030'C, T:520-530'Cx2回(HRC62)--->安定化処理; 400'C--->仕上げ加工(寸法調整)--->CrN処理、または、ラジカル窒化(400'C)+CrN処理(400'C)が考えられます。今後の課題として参考までに、以上。
補足
説明不足でした。今回の事例の変寸率は0.08%です。 径で0.03mm膨張のうち、コーティングの膜厚分(膜厚0.006mm)がありますので母材が膨張したと思われる量は0.018mmです。 また、CrNコーティング前にラジカル窒化の工程は入れておりません。
SKD11の500'Cx2回 焼きもどし後の残留オーステナイトは10-15%残っております。しかも、高温焼きもどしによって活性化し常温においてマルテンサイト化が、比較的短い日数で進行し、いわゆる経時変化が現れる。(低温もどしの場合はオーステナイトが安定化して、この現象は現れない)、 ご質問の場合、焼きもどし-->仕上げ加工(寸法調整測定)からPVD処理までの経過時間が問題となります。対策としては、500'C焼きもどし後に400'Cの安定化処理の上、仕上げ加工して、PVD処理を行うべきです。PVD処理温度400'Cにおいて残留オーステナイトが安定化するので、その後の経時変化は避けられる。 以上、検討してみてください。
お礼
早速のご回答ありがとうございます。 膨張の対策として、400℃の安定化処理を考えてみます。 ちなみに、今回の事象はPVD処理中または処理後に残留オーステナイトが分解して膨張したと考えているのですが、どちらで起こっていると考えたらよろしいでしょうか?(焼戻し後PVD処理までには2週間ほどかかっていますが、この期間に分解することは考え難いと思うのですが。) 以上、ご教授お願い致します。
こんばんは。 焼入れ焼戻しを行っていると察しますが 焼入れおよび焼戻し温度は何度で行っていますか? 焼入れはまるっきり素人ですが、桶屋が儲かるかんじで考えて見ます。 焼戻しをPVDより低い温度で行っている前提ですが、 PVDの温度は炭化物を析出する温度だと思います。 炭化物の析出により、地の固溶炭素濃度が低くなると Ms点は上昇しますので、残留オーステナイトが マルテンサイト化することがあるかもしれません。 そうなると体積膨張を生じると考えられます。 一度PVD前と後でXRDをとるか、組織観察にて 残留オーステナイトの量を出してみるとわかると思います。 これが正しければ、PVD前にしっかりと高温焼戻しを しておくと解消できるのでは?と考えますが、 学校で習った知識を無理やり当てはめたので 間違っていたら申し訳ありません。 残留オーステナイトは焼入れ時に発生するものですので、 サブゼロ処理でもしない限り大なり小なり残るはずです。 SKDの炭素濃度は1.5%らしいので、普通はMs点が相当低いでしょう。 (Crが多いので焼入れ性は良いと思いますが・・・) Ms点と炭素濃度の関係は 土屋正行:日本金属学会誌,29(1965)427 に詳しく載っています。 γ→α’変態はMs点よりも下で起きるわけですが、 炭素濃度が炭化物析出によってどこまで低下するのか 残念ながら存じ上げません。 ただ、Ms点が高くなれば理論的には400℃でも変態します。 V、Mo、Crは炭化物を作りやすい元素ですし、 固溶炭素を食うことは考えられます。 しかし、16μmの膨張ですから マルテンサイト変態とは別の方向に 解答を求めたほうが良いような気も・・・ (自分で言い出しておいて無責任ですけど)
お礼
早速のご回答ありがとうございます。 焼き戻し温度は500℃程度なので、PVDより高温度で2回焼き戻ししております。 例えば、この焼き戻しが不十分でPVD前に残留オーステナイトが残存しているとしたら、PVD処理(約400℃)で残留オーステナイトがマルテンサイト化することはありえるでしょうか? 少し調べなおしてみたら、日立金属さんのHPにSKD11の変寸率の+0.01%と+0.052%の2種類ありました。 +0.052%で考えると10μmの膨張になるため、今回の16μm膨張は大きいです。 残留オーステナイトの分解により、今回の事例で発生した変寸率+0.08%は理論的にありえる数字なのでしょうか? 私の調査した限り、最も変寸率の大きかった具体的な事例で+0.052%でしたので。
お礼
了解しました。 次回、処理業者と事前調整の上、テストしてみようと考えています。 ありがとうございました。