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高分子の結晶化度と結晶化速度の関係について
- オレフィン系樹脂にて徐冷すると結晶化度が上がるそうなのですが、結晶化速度は全く別ものであるかどうか疑問に思っています。
- 文献では急冷することで結晶化速度が向上するとされていますが、結晶化度と結晶化速度の関係がどのようなものか理解できません。
- 急冷すると結晶の成長速度が上がり、結果として結晶化度が上がるのか、それとも結晶化度とは別の要素に影響を与えるのか気になっています。
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結晶性高分子の結晶化に関して重要な事はTcc(溶融/過冷却球晶化温度)、tcc1/2(溶融過冷却半球晶化時間)、Tch(非晶/昇温球晶化温度)、tch1/2(非晶/昇温半球晶化温度です。PP、PEなどのポリオレフィンはtcc1/2は数分なのでDSCで測定できますが、tch1/2は数秒なのでDSCで測定できません。 PP、PEの結晶化速度の文献記載値はtcc1/2であり、tch1/2は測定不可能です。 PETはtch1/2とtch1/2が共に数分なのでDSCで測定できます。高分子の結晶化に関する文献は多いのですが結晶化を解析する手段がDSC、X線散乱のみなので解折精度が低く、高分子の実用化が進んでいるのに結晶化の解折は非常に遅れており、私はまだ石器時代だと考えています。高分子の結晶化はÅ単位で起こる現象なので解折手段がありません。図書に高分子球晶のきれいな電子顕微鏡写真が掲載されていますが、希薄溶液から長時間かけて研究のために作られた球晶なので、実用化されているプラスチック製品の結晶とは全く異なる形です。その説明が無くあたかも我々が使用しているプラスチック製品にあのような球晶が存在しているように説明していますが、プラスチック製品中の球晶は球晶、メゾステート、非晶とそれらを結合するタイ分子の混合体です。
ポリマーの結晶化とは、分子が絡み合いから完全に開放されて、立体規則的に配列、することですから、低温域ではポリマー分子の主鎖の運動が制約されるので結晶化は遅い、理論的にはガラス転位温度(Tg)で速度ゼロになる、分子運動が活発になる高温域側で結晶化速度は大きくなる。 結晶化反応は発熱反応である、ポリマーは結晶化によりエネルギー的に安定化するのである、発熱反応であるから、低温のほうが結晶化を推進する。 ポリマーの結晶化はTg~Tm(融点)で進行し、結晶化速度は小→大→小と、Tg~Tmのある温度で極大となるピークを示す。 結晶化度とは、結晶化速度×時間である。 結晶化速度(中)×時間(大)>結晶化速度(大)×時間(小)となります。 文献にある急冷、徐冷が具体的にどうなのか、イメージするしかありませんが、ポリオレフィンはポリマー分岐が結晶化を阻害するなど、結晶化速度そのものは他の結晶性ポリマーより遅いほう(?)。射出成形の秒単位サイクルでは、金型温度を低温にして、溶融樹脂の温度を瞬間的に結晶化速度が最大となるようにしても時間が短すぎて、結晶化が100%完結するには足りないかもしれない。結晶化速度が小さい結晶性ポリマーの結晶化を100%完結させるには、成形品をじっくり加熱徐冷、アニーリングするしかない、ということかもしれません。
結晶性樹脂は溶けた状態から固まるときに、結晶化しながら固まっていくのですが、このように、イメージして頂ければ分かりやすいと思います。 徐冷→冷えた所から徐々に結晶化して行き、大きな結晶を形成しながら(結晶が成長しながら)固まる→結晶化度は大きい。大きな結晶で構成される。 急冷→全体的に冷えた所から、一気に結晶化が始まり、一つ一つの結晶が成長する前に固まる→もちろん急冷するとすぐに固まるので結晶化速度は上がる。小さな結晶の粒粒で構成される。 すこしは、参考になりましたでしょうか。
お礼
徐冷は分子が動きやすく、急冷は分子が固まるので、結晶化度が異なるということですね。わかりやすいご回答有難うございました。 ちなみに、高結晶化する条件は徐冷だけでしょうか。樹脂メーカーに尋ねたところペレットでも乾燥すると表層が高結晶化するみたいですが。 ご存知でしたら、教えてくださいませ。
結晶化度と結晶化速度は、全く別のものです。 結晶化度は、結晶性樹脂がどの程度結晶化しているのかを示す「度合い」で、通常は~%という表記です。 一方、結晶化速度は、結晶化する早さを表すものです。こちらは、~秒とか~分といった時間の単位で表されることが多いと思います。 徐冷すると結晶化度が上がることも、急冷すると結晶化速度が向上することも、一般的に言われている事象です。 結晶化度と結晶化速度は、必ずしもリンクしません。むしろ、急冷すると結晶化速度は向上しますが、結晶化度は低下する場合の方が多いでしょう。 一般に、金型温度が低いと結晶化度が低くなると言われているのは、これに起因するものです。 ただし、最近は結晶化速度が速くても、結晶化度も高いものもありますので、注意が必要ですが。 蛇足ですが、結晶性材料とは言っても、結晶化度は必ずしも100%ではありません。材料毎に飽和結晶化度というものがあります。 すみません、誤解を招く記述でした。 一般的には次のようになります。 急冷すると、結晶化速度は速くなり、結晶化度は低くなる。 徐冷すると、結晶化速度は遅くなり、結晶化度は高くなる。 「結晶化速度が速くても、結晶化度も高いもの」というのは、いわゆる低温成形(に対応した)材料のことを指したもので、「結晶化速度が速くても」というのは「急冷しても(すなわち金型が低くても)」の意味です。 低温成形対応材料でも、冷却速度と結晶化度あるいは結晶化速度の関係は一般材料と同じ傾向を示しますが、徐冷時の結晶化度と急冷時の結晶化度の差が一般材料に比べて小さくなります。 再々すみません。 「急冷しても(すなわち金型が低くても)」 ↓ 金型温度が低くても に訂正します。 ついでに。(というとなんですが…) ペレットを加熱しても結晶化が進む場合はあります。 「高結晶化する」というのは、よく分かりませんが。
お礼
結晶化速度と結晶化度は別ものなんですね。私の周りでは徐冷すると結晶化度があがる樹脂がほとんどですが、その逆の樹脂もあるなんて勉強になりました。
お礼
結晶化速度が早いと早く結晶が固まるので、結晶化度が低くなるのですね。 また、化学反応では熱を加えた方が反応が促進するので、逆のイメージがありますが、低温の方が熱的に安定するのですね。たいへんわかりやすいご回答有難うございました。