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[化学] 異種試薬の飽和蒸気圧と分圧の問題
- 異種の試薬をビーカーに入れて放置すると、何気圧になるのか?試薬Aのみ入れた場合、試薬AとBを入れた場合、試薬A,B,Cを入れた場合を実験した。デシケーターに空気が入っている場合にも実験した結果、試薬の飽和蒸気圧や分圧がどのように変化するのか疑問が生じた。
- 試薬Aのみ入れた場合の全圧は1.0atmで、試薬Aの分圧は0.5atm、空気の分圧は0.5atmであった。試薬AとBを入れた場合の全圧は1.0atmで、試薬AとBの分圧はそれぞれ0.5atm、空気の分圧は0atmであった。試薬A,B,Cを入れた場合の全圧は1.0atmで、試薬A,B,Cの分圧はそれぞれ1/3atm、空気の分圧は0atmであった。
- デシケーターに空気が入っている状態で、試薬Aのみを入れた場合の全圧は1.5atmで、試薬Aの分圧は0.5atm、空気の分圧は1.0atmであった。試薬A~Dを入れた場合の全圧は3.0atmで、試薬A,B,C,Dの分圧はそれぞれ0.5atm、空気の分圧は1.0atmであった。試薬の飽和蒸気圧を持つ物を大量に入れると圧力が高まることがあり、この結果に疑問が生じた。液体によっても結果は異なるが、それぞれの液体が反応しない場合はどのような分圧になるのだろうか?
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> 強いて挙げれば、極性、無極性、金属(これは溶ける?)こういった組み合わ程度しか思いつきませんでしたが・・・ > 例:水・トルエン・水銀 > 何種類もと言うのは無理なのでしょうか? はい。私もそのくらいしか思いつきません。原理的には圧力をいくらでも高めることができる、といわれても、常識的にはあり得ない気がするのは、現実にはそんな試薬の組み合わせがあり得ないからだと思います。 ■密栓で試薬Aのみ入れて放置の場合 について 化学便覧などに記載されている純物質の蒸気圧は、空気などの他の気体成分が存在しないときの蒸気圧です。いわば真空中での蒸気圧です。空気が共存するときの蒸気圧は、 原因A:空気と蒸気の間にファンデルワールス力が働くこと 原因B:空気が液体に溶け込むこと 原因C:液体が空気により加圧されること により、真空中での蒸気圧からずれます。 原因Aによりドルトンの分圧の法則が成り立たなくなります。ファンデルワールス力が引力的な場合は、蒸気圧を上げる効果があります。分子の大きさが無視できなくなるほど気相の密度が高くなると、蒸気圧を下げる効果に転じます。 原因Bにより蒸気圧が下がります。空気が溶け込むということは純液体が溶液になるということですから、溶媒の蒸気圧は純液体のそれよりも低くなります。いわゆる蒸気圧降下です。 原因Cにより蒸気圧が上がります。液体に圧力をかけることで液体から蒸気が搾り出されます。たとえ話をするなら、ビーチボールから空気を抜くときに、強く押すことで速く空気が抜けるようなものです。 ◆空気の圧力が1000.00atmの場合 #1の条件2:ドルトンの分圧の法則が成り立つ。 #1の条件3:試薬への空気の溶け込みは、無視できる。 これくらいの高圧になると、#1の条件2と3が成り立たなくなるのは明らかですから、分圧が0.50atmとはならないのは確かです。ですけど、原因A~Cのうちのどれが最も効くのかを予想するのが難しいので、分圧がどのように変わるかは分かりません。 ◆空気の圧力が1.00atmの場合 これも定量的な予想は難しいのですけど、水蒸気圧の実験データから推測すると「開放状態と比べるとほとんど変わらないが、高精度で測定すると少しだけ分圧が高くなる」と予想できます。 R. W. Hyland, "A correlation for the second interaction virial coefficients and enhancement factors for moist air" (1975). https://archive.org/details/jresv79An4p551 この文献の表8から、CO2を含まない空気中の水蒸気圧について以下のことが分かります。 (i) 全圧が0.25~100気圧、温度が0~90℃の広い範囲で、空気中の水蒸気圧は真空中の水蒸気圧よりも高い。 (ii) 全圧が1.50バールで温度が0~90℃のとき、空気中と真空中の水蒸気圧は0.5~0.8%しか違わない。 (iii) 常温常圧ですでに、空気中と真空中の水蒸気圧が0.4%くらい違う。 室温で蒸気圧が0.5atmくらいの液体としてはジエチルエーテルやジクロロメタンなどがあります。これらの物質の安全データシートに記載されている蒸気圧は真空中での値ですけど、大気中での飽和蒸気圧の値とこれらの値の差が問題になる場面はそれほど多くはないと思います。 以上のことから、厳密な話をすれば開放状態と密閉状態で分圧は変わるだろう、ということと、高精度な測定をしない限り開放状態と密閉状態の分圧の差は分からないだろう、ということが言えるんじゃないかと思います。
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- phosphole
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確認ですが、最初の条件では、デシケーター内部から外界への試薬の蒸散は無視しうるタイムスケールでの話、ということでしょうか? といいますのは、机上の話としては良いのですけど、0.5atmも飽和蒸気圧がある物体(室温でガスでないとありえない)だと、速攻で消え去って元通り空気1atmになります。。。 また、後半の設定ですと、気体部分の圧力を状態方程式に従って計算しなおさないとダメです。疑問に感じられているとおり、圧力が上がりすぎてボカーン!となります。。。上述のとおり、ほんとに0.5atomもあるモノを封入したら、そうなってしまうと思いますが(´・ω・`)
お礼
回答いただきありがとうございます。
- 101325
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液体の混和性で場合分けして、ラウールの法則とヘンリーの法則を考えるといいです。 条件1:デシケーターに開けた穴により、デシケーター内の全圧は1.0atmに保たれ、なおかつデシケーター外からの空気の流入はない。 条件2:ドルトンの分圧の法則が成り立つ。 条件3:試薬への空気の溶け込みは、無視できる。 条件4:試薬A、B、C、Dは相互溶解しない。 条件5:ビーカーからの蒸発速度が、試薬A、B、C、Dで等しい。 ■穴あきで試薬Aのみ入れて放置の場合 条件1~3の下ではそうなります。 ■穴あきで試薬AとBを入れて放置の場合 条件1~4の下ではそうなります。すなわち、試薬AにBの蒸気は溶け込まず試薬BにAの蒸気も溶け込まない、という条件下ではそうなります。 ■穴あきで試薬A,BとCを入れて放置の場合 条件1~5の下ではそうなります。ビーカーからの蒸発速度が違えば、各試薬の分圧も異なります。蒸発速度の高いものほど、分圧が大きくなります。 ■密栓で試薬Aのみ入れて放置の場合 条件2~3の下ではそうなります。 ■密栓で試薬A~Dを入れて放置の場合 条件2~4の下ではそうなります。 > 飽和蒸気圧を持つ物を大量に入れると圧力はいくらでも高めることが出来そう 原理的には、条件2~4の下ではそうなります。じっさいには、相互溶解しない液体を何種類も用意するのが無理なので、条件2が破綻する前に条件4が破綻します。 ★A~Dを一つのビーカーに入れて放置 試薬が完全に溶け合って、かつその混合物が理想溶液となる場合は、ラウールの法則より、全圧は試薬の数によらず 1.0+0.5*1 = 1.5atmになります。 試薬が完全に溶け合って、かつその混合物が理想溶液とはならない場合は、全圧は 1.5atm からずれます。高くなるか低くなるかは、試薬の組み合わせによります。 試薬がまったく溶け合わない場合(条件4の場合)は、比重のもっとも小さな試薬しか気化できませんので、全圧は試薬の数によらず 1.0+0.5*1 = 1.5atmになります。 試薬が適当に溶け合って混合物が2相以上に分離する場合は、さらに場合わけが必要になるので、面倒です。たとえば全ての液相が全ての試薬を含み、かつ全ての液相が理想希薄溶液となる場合は、ラウールの法則より、全圧は試薬の数によらず、気液平衡に達したときにはだいたい 1.0+0.5*(液相の数) になるはずです。ですけど、シャーレのような容器を使って各液相の厚さを十分に薄くしておかない限り、下の液相の試薬が気液界面にたどり着くまでに信じられないくらい時間がかかります。ですので、ビーカーに入れて放置する場合は、気液平衡に達するまでに途方もなく時間がかかるのではないか、事実上到達できないのではないか、と思われます。
お礼
私自身、こんがらがっていた条件を綺麗に整理して教えて下さり、またそれぞれについて時間を割き説明して下さりありがとうございます。とても分かりやすく、大昔に習っていた記憶がよみがえってきました! 私が疑問に思っていたことが明確になりました! そこで、二点疑問があります。もしよろしければ教えて下さい。 >相互溶解しない液体を何種類も用意するのが無理なので、条件2が破綻する前に条件4が破綻します。 強いて挙げれば、極性、無極性、金属(これは溶ける?)こういった組み合わ程度しか思いつきませんでしたが・・・ 例:水・トルエン・水銀 何種類もと言うのは無理なのでしょうか? ■密栓で試薬Aのみ入れて放置の場合 について 先ほどは、はじめに入れてある空気の圧力を1.00atmとしましたが、仮にこれが1000.00atmであった場合でも、この中に試薬Aを入れれば1000.50atmと、分圧0.50atmとなるのでしょうか? 圧力が高い為、蒸発しようとするAを窒素分子が上から押さえつける事で、感覚的には分圧が0.50atmまで蒸発しない気がする為どうも感覚的に理解できません。 1.00atmの場合でも、全圧でみると最終的には1.50atmと開放状態と比べると蒸発に不利な条件(圧力が高い)になっている気がする為、同じ原理で、分圧が0.50atmとはならない気がするのです。 この辺り、どのようにすればより正しく、感覚的には理解できますでしょうか?
お礼
追加の質問にも答えて下さりありがとうございます。 また、化学から離れていても、非常に分かりやすい説明でとても理解しやすかったです。 本当にありがとうございました!