相続放棄は1回で済むものではなく,子供が相続放棄すれば親が相続人になり,親が相続放棄すれば兄弟が相続人になるという順序があって,その順に従って相続放棄がなされます。相続放棄がすべて済んで,相続人がいなくなるまでは,そこそこの時間(2か月くらいから半年くらい)がかかります。相続放棄があった事実は,公開されませんし,誰にも通知されませんので,簡単に知ることはできません。親族に問い合わせて,知るしかありません。
戸籍上の相続人全員が相続放棄をすれば,相続人がいなくなって,誰も何もしなければ,その財産はほったらかしになります。本来は(法律上は),相続放棄をしても,相続放棄をした相続人が管理しなければならないのですが,普通は何もしません。
借金があったりして,その回収をしたい債権者がいる場合には,相続財産管理人の選任の申立てというのをして,それが認められれば,相続財産管理人が財産を管理することになります。相続財産管理人が選任されたことは,登記簿の所有者欄が,もとの所有者(被相続人)であった「甲野太郎」から「甲野太郎相続財産」と変わることで分かります。相続財産管理人の選任は,官報にも公告されますので,それでも分かりますが,官報を見るなんてことは普通はあり得ませんからね。
相続財産管理人が誰かは,被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に問い合わせれば教えてくれます。相続財産に含まれる土地を買い取りたいのであれば,この相続財産管理人と交渉して,契約をすることになります。
なお,相続財産管理人の選任の申立ては,義務ではありませんので,相続人がいなくなっても,申立てがされないこともあります。申立権があるのは,利害関係人又は検察官とされていますが,遺産に含まれる土地を買い取りたい希望があるというだけでは,利害関係任に当たりませんので,あなたには相続財産管理人の選任の申立てをする権利はありません。
以上が,民法で定められた相続放棄と,相続財産管理人の制度です。
ただ,実際には,相続放棄といいながら,実際には家庭裁判所に相続放棄の申立てをすることなく,単に遺産を放置しているだけということもあります。遺産が過疎地の農地だけというような場合には,そのようなこともあり得ないことではありません。固定資産税がかかる場合には,市町村役場が動いてくれる場合もありますが,年額数百円とか数千円の固定資産税の取立てともなると,市町村としてもコスト倒れになることで,あまり期待できません。
このような場合は,とても厄介です。戸籍上の相続人の誰かに働きかけて,遺産分割の申立てをしてもらい,遺産分割で所有者を決めてもらって,その人と交渉するか,相続人全員と交渉して買い取るということになります。
競売にかかることが確実とはとてもいえませんし,登記簿上の所有者は,亡くなった被相続人のままですから,本来の所有者に変わるということも,そんなに期待できません。
とにかく,相続放棄をした相続人とコンタクトを取って,買取の希望を伝え,相続人の方で何とかしてもらうしかありません。
お礼
ありがとうございました。