経済学を専門に修めたわけでもないのでわたしも門外漢にすぎませんが、興味のある分野なので浅学ながら「回答」させていただきます。
まず、消費性向と可処分所得の関係について、少し誤解されているのではないでしょうか。消費性向とは所得に対する消費の割合ですから、所得が減って消費が減らなければ消費性向は上がります。そして、通常は収入が減少しても、消費はこれまで通りの水準を維持する傾向があります。高額所得者ならば多少ぜいたくを控えればすむ話ですが、低所得者ならばすでに生活を切りつめており、下げようがなかったりします。
つまり、可処分所得が減りながら消費性向が上がっているということは、それだけみんなの生活が苦しくなったことを表わしているのです。貯蓄に回すだけの余裕のない世帯が増えた、と捉えることもできます。
問題にすべきは消費の割合ではなくその絶対額です。
支出の一例として、新車の販売台数(登録台数)を見てみると、バブルが崩壊した1991年に51,803台と最高を記録していますが、その後もただちに落ちることなくほぼ同水準を維持しており、はっきりと下落していくのは98年からです。2009年にはわずか24,133台にまで落ちこんでいます。
政府が発表している業種ごとの売り上げの推移を見ても、どれも同じようなパターンが見てとれます。バブルの崩壊によって突然悪化したわけではなく、むしろ97~99年ごろにピークを迎え、その後低下の一途をたどります。酒類や国内輸送はピークが2002年で多少遅れていますが、大差はありません。
この時期といえば、わが国の生産年齢人口(15~64歳)がピークに達した時期であり、言い方を変えれば減少に転じたころです。1995年の87,165千人が最高で、2010年には81,032千人に減少しています。
生産年齢人口とはさかんな消費活動を行なう層であり、この集団が減ったのですから物が売れなくなるのは当然のことなのです。そして、売り上げが減ったのならば企業は人件費の抑制に走り、結果的に世間の消費力はなおさら減り、さらに業績が苦しくなった企業は――。と、典型的なデフレスパイラルが始まるわけです。
内閣府のデータによれば、1996年度と2008年度の対比で人口が増加した沖縄(+7.4%)、東海(+7.0%)、南関東(+4.0%)はそれぞれ家計の最終支出額を+16.3%、+12.6%、+10.2%へと増加させています。いっぽう、消費支出の伸びが小さかった北海道(△0.5%)、近畿(+0.1%)、東北(+1.1%)は、それぞれ人口が△2.9%、+0.8%、△4.1%へと減少もしくは微増にとどまっています。
人口の増減と家計の最終支出額の相関は決定係数が0.72ときわめて高く、人口の動態は需要を大きく左右するのだとわかります。ただし、この数字は全年齢人口なので生産年齢人口の話ではありませんが(該当する数字が見つからなかったもので)、需要が減る構造は看取できると思います。
という明瞭な結論が、なぜか安倍さんのお気に召していないようです。前回の自公政権時代に出されたデータだというのに、彼は人口減少とデフレの関係をきっぱりと否定しています。もしも、彼がこう主張する理由をご存じでしたら教えていただけないでしょうか。――と、回答欄で質問していてはしょうがないのですが、どうにもわたしにはわかりかねます。インフレターゲットには賛成ですが、安倍さんの見識には不安が付きまといます。