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画鋲が磁化しないことについて

 画鋲は磁石にくっつくのですが、鉄釘やクリップなどと違い、磁石から離すと画鋲同士はくっつきません。鉄釘やクリップならば、磁石から離しても磁化して磁石の力をもつのに、なぜ画鋲は着磁しないのでしょうか? 強力なネオジム磁石を使っても、磁化した様子は見られませんでした。鉄(スチール)製の画鋲ならば磁化してもよさそうなのですが・・・?

質問者が選んだベストアンサー

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  • kagakusuki
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回答No.3

 常磁性体は磁力が加わっても、磁石との間に引き付け合う力が極僅かしか発生しませんから、力が弱過ぎて磁石に付く事はありません。  御質問者様が使用された画鋲が磁石に付いたという事は、その画鋲に使われてる素材は強磁性体という事になります。  又、焼き入れをした鉄も、磁石に付きますから強磁性体です。  磁石に付く種類の鉄材が常磁性となるのは、キュリー点と呼ばれる強磁性体の種類によって決まる特定の温度(純鉄の場合は770℃)以上の温度になっている間においてだけであり、温度がキュリー点未満にまで下がりますと、鉄は再び強磁性体となります。 【参考URL】  強磁性 - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B7%E7%A3%81%E6%80%A7  常磁性 - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B8%E7%A3%81%E6%80%A7  キュリー温度 - Wikipedia   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%AA%E3%83%BC%E6%B8%A9%E5%BA%A6  鋼を焼き入れする場合には、一旦、高温(鉄材の種類によって温度は異なりますが、何れにせよキュリー点よりも高い温度が必要)に加熱した後、水や油などに漬けこんで急冷します。  このキュリー点以上の高温となっている間は、鋼は常磁性体となっていますが、水や油で急冷した際に、再び強磁性体となります。  そもそも、画鋲はプレス加工によって作られています。(針以外の部分についての話です)  プレス加工を行う素材には、ある程度の可塑性・柔軟性が必要です(硬い素材は脆いため、無理に変形させると折れたり、割れたりしてしまう)から、鋼材の中でも比較的炭素量(鋼鉄は鉄と炭素の合金です)の少ない低炭素鋼(少ないと言っても軟鉄よりは多い)が使われる事が多い様です。  画鋲にも様々な製品がありますから、使われている鉄材の種類を一概に決めつける事は出来ませんが、画鋲の円板の部分は強度が高い事が要求されるような用途ではありませんから、原材料として使われているのはおそらく一般的なSPCC鋼板ではないかと思います。  SPCC等の炭素量の少ない鋼は、焼き入れしてもあまり硬くはなりませんから、わざわざ手間と費用をかけて焼き入れをしてもメリットが無いため、普通は焼き入れなどは行わないままで使用されるようです。  実際、以下のURLのページに掲載されている動画に映っている工場では、画鋲を製造する際に焼き入れ等は行っておりません。 【参考URL】  サイエンス チャンネル > キーワード一覧 > プレス機 > (212)画鋲ができるまで   http://sc-smn.jst.go.jp/playprg/index/2313  話は変わりますが、磁化という言葉には、 (1)外部から物質に磁場をかけた際に、その物質の周囲に新たに磁場が誘起され、物質が磁場を持つようになる現象 (2)強磁性体が永久磁石になる事 の2つの意味があります。((1)のみの場合には、磁石を離すと物質からは磁力が失われます)  紛らわしいので、ここでは(2)の場合には「着磁」という言葉を使う事に致します。 【参考URL】  Weblio 辞書 > 工学 > マグネット用語 > 着磁   http://www.weblio.jp/content/%E7%9D%80%E7%A3%81?dictCode=MGNTY  株式会社アイエムエス > コラム > 着磁って何?   http://www.ims-jp.com/whymag.htm  鉄等の強磁性体を構成している原子(或いは分子)は、原子核の周囲を回っている電子の軌道の関係で、その1個1個が極小の磁石となっています。  多数の磁石を箱に入れてかき混ぜると、磁石は勝手にN極とS極がくっついて、同じ向きに並びますが、原子の極小磁石の場合も同様で、隣り合った原子同士はN極とS極が同じ方向となる様に並ぶ傾向があります。  但し、原子磁石の塊がある程度以上の大きさになりますと、エントロピー増大の法則(物事は乱雑さを増すように変化するという法則)により、原子磁石の塊は多数の小さな(サイズが10万分の1~5万分の1mm程度)の磁石に分かれてしまい、その各々の小さな磁石のN極とS極の向きは、外部磁場が無い状態ではてんでバラバラな異なる方向を向いているために、着磁される前の強磁性体は、外から見た場合には磁力を帯びていない様に見えます。  この原子磁石の向きが揃った小さな磁石の事を「磁区」と言います。 【参考URL】  岡山大学 理学部 物理学科 味野(_磁性_)グループ Magnetism Group > 磁性用語辞典 MagWord > 磁壁と磁区   http://magnon.okayama-u.ac.jp/magword/domain  強磁性体の外部から磁場が加わりますと磁区の向きが変わり、外部磁場の方向と同じ向きに並んだ磁区の割合が増えます。  この結果、(1)の意味での磁化という現象が起きる訳です。  磁区の向きを変えるためにはエネルギーが必要で、磁場の向きや強さの変化が小さいと、磁区の向きを外部磁場に合わせて変化させた際に解放されるエネルギーが、磁区の向きを変化させるために必要なエネルギーを下回るため、磁区の向きは変わりません。  そのため、強い外部磁場が加わって強磁性体が磁化した後、即ち、外部磁場の向きに沿った磁区の割合が増えた後で、外部磁場を取り除きますと、磁区の向きが完全にはバラバラとはならずに、外部磁場と同じ向きの磁区の割合が多少多くなっていたままでも、磁力が完全になくなる事によって解放されるエネルギーが、磁区の向きを完全にバラバラな向きに変えるために必要なエネルギーを下回ってしまいますので、完全には磁力が失われず、強磁性体は弱い磁力を帯びたままとなります。これが着磁という現象です。  更に、鉄等の強磁性体に炭素等の不純物が混じっていますと、磁区の向きが変化する際に、鉄原子が並んでいる中にまばらに散らばって存在している不純物の原子に引っ掛ってしまい、上手く向きを変える事が難しくなりますので、磁区の向きを変えるために必要なエネルギーが大きくなります。 【参考URL】  強磁性体の性質   http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/Lecture/ferromagnet.htm  東洋磁気工業株式会社 > 鉄材の磁化(着磁)について > 強磁性体の性質をアニメーションにて御説明いたします。|強磁性体の性質 > 次へ   http://www.magnix.com/swf/magnet.html  つまり、同じ鉄ではあっても、不純物の割合が多い鉄では、外部磁力が無くなった後でも、加えられていた磁力線の向きに沿った方向に並んだままとなっている磁区の割合が多くなるため、着磁した際に得られる磁力が強くなり、逆に不純物の割合があまりにも少ない種類の鉄では、着磁した際に得られる磁力が弱くなる訳です。  画鋲に使われていると私が推測しましたSPCCは、鋼鉄の中でも炭素量が少ない方ですので、極弱い磁力しか帯びず、画鋲同士がくっつき合う程の磁力にはならなかったのではないかと推測致します。  仮に、針の部分が別の種類の鋼材で出来ていて、針の部分のみは永久磁石となっていたとしましても、針の部分の鉄の量は僅かですので、大勢には影響しないのではないかと思います。  それに対し、クリップなどの弾力性が要求されるような用途に使用されている鉄材は、おそらくは「ばね鋼」という合金であり、ばね鋼の炭素量はSPCCよりも多い上に、炭素以外にもケイ素やマンガンといった他の混ぜ物も加えられていますから、着磁させやすかったという可能性があるかと思います。  一方、釘の場合には、製品によって使用されている素材は様々で、SPCCよりも炭素量が少ない軟鉄製の釘も多く使われていますが、釘の中には炭素量が多い鋼鉄製のものや、その他の合金製のものもあります。  質問者様が御覧になられた「磁石になった釘」とは、炭素量の多い鋼鉄で作られた釘だったのかも知れません。  又、その他の理由として考えられるのは、磁化した際に磁力線と平行な方向に長くなっている形状のものの方が、着磁した際に磁力が強くなりますので、細長い釘の方が着磁し易く、円盤型でどの向きで測っても長くはない画鋲では弱い磁力しか得られなかったのかも知れません。

seijikun
質問者

お礼

とても詳しくかつ分かりやすい説明をどうもありがとうございました。

その他の回答 (2)

  • tanuki4u
  • ベストアンサー率33% (2764/8360)
回答No.2

画鋲の製法のサイトでもあればよかったのですが、ちょろちょろ見ると 1 画鋲は硬さを保つために、焼入れを行なっている 2 焼入れを行うと強磁性体である鉄が常磁性体になる ということらしい http://www.tobu.or.jp/yasashii/book/gj05.htm (2)鉄原子の並び方(変態の話) この他α鉄はさらに780℃において強磁性体から常磁性体になり、磁力が失われます。

seijikun
質問者

お礼

早々にご回答いただきありがとうございました。

  • tanuki4u
  • ベストアンサー率33% (2764/8360)
回答No.1

常磁性体だからじゃないの?画鋲 わざわざ 強磁性体になる素材のものも売っている http://item.rakuten.co.jp/attract/100percent_magnet_gm03/

seijikun
質問者

お礼

このような商品も存在するのですね。ありがとうございました。

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