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極東総督のアレクセーエフと日露戦争(坂の上の雲)
ドラマ「坂の上の雲」では、極東総督のアレクセーエフがニコライ2世の対日全面譲歩の伝聞を握り潰したことが、国交断絶、日露戦争の発端となります。 これは事実ですか、虚構ですか? よろしくお願いします。
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結論から言えば、虚構です。 それを説明するために、まず日露戦争の概要を述べます。 日本側宣戦布告1904年2月10日(日本時間基準) ただし国交断絶を2月5日通告、2月8日15時 仁川でロシア砲艦「コレーエッツ」を攻撃(魚雷三発)、同日(2月8日)23時旅順港外で停泊中のロシア艦隊を奇襲攻撃して、戦争を開始していました。 次に日露戦争は何故起こったか?を考えます。 この時期ロシアが極東に進出して来るのに対抗して、日本としては朝鮮の支配権は確保しようと考えて、ロシアに対して「満韓交換案」を提案して、外交交渉を始めました。 ロシア側は、基本的にはこの交換案を認めていましたが、交渉の焦点は、「日本は朝鮮を軍略的には利用しない、というロシア側の要求条件を日本が認めるか否か?」という点に集約されてきました。 日本はこの要求を拒絶し、ロシアはこの要求を引っ込めなかったので、交渉は行き詰まり、日本はこれを戦争を以って打開しようとしたものです。 この最終段階で、従来主戦派と見られていたベゾグラーゾフの露日同盟案が1月11日栗野公使に伝えられました。この同盟案が実現したら戦争を避けることが出来たかもしれない内容だったのですが、日本側(東京)はこれを無視したので、進展しませんでした。 またラムズドルフ外相によって別の妥協案も作られましたが、東京側がこれを受け取ったのは、2月5日のことで、日本ではすでに断交を決定していたので、考慮されることはありませんでした。(この妥協案も全面譲歩ではありません。) この交渉の経緯を簡単にまとめれば、ロシアは、「日本が朝鮮を軍略的に利用しないこと」を要求し続けたので、日本は外交交渉では妥協不可能と理解し、戦争によって解決しようとしたのが、日露戦争だった、ということになります。 日本側から考えると、日本は朝鮮半島を軍事的に利用したいために、日露戦争を起こした、といえます。 もっと簡単に言えば、朝鮮を植民地にするための戦争だった、と言えます。 質問に戻れば、「ロシア側が全面的に日本の要求を認める妥協案を出した」という事実はなく、従ってアレクセーエフが握りつぶした、と言うことも事実ではありえない、ということです。 しかし皇帝に提出されたベゾフラーゾフの露日同盟案の意見書には、朝鮮半島に勢力を拡大する必要性は全く無く、沿岸防備を長くするという害の方が大である、と書かれており、これがロシア政府内での常識だったと思われます。 つまりロシアには朝鮮半島に勢力を拡大したいという野心は皆無で、ただ日本が軍事的に利用することだけを警戒していた、ということです。 また皇帝をはじめ政府の中全体に、日本との戦争は避けたい、と言う考えが支配しており、そのことを証明する文章は沢山残っています。 状況的にも国内には革命の機運が高まっており、ドイツからの軍事的圧力(第一次大戦)も高かったので、日本と戦争はしたくなかった、と言うことです。 ただ「アジアの小国、日本がロシアに対して戦争を始めるはずが無い」という日本軽視の風潮が交渉を失敗させた原因と考えられています。 なお以上の説明は、『日露戦争 起源と開戦 和田春樹著 上445p下396p 6800円×2』を読み込んで考えたものです。
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- 小林 哲夫(@kobatetu01)
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補足説明;日露戦争の原因 前の答えの繰り返しになりますが、日本は朝鮮に対する完全な支配権を要求したのに対し、ロシアの方は最後まで「軍略に利用しないこと」という条件にこだわって、交渉は妥結しそうにない状況でしたので、日本は見切り発車した、ということだと考えます。 ご質問については、ロシア側の第一回回答には、「39度線以北を中立地帯とする云々・・・」という要求の文言があったようです。 しかしこれはドラマにあった(という)、「ロシアが朝鮮の一部を支配したい、という要求」ではなかったと思いますので、ドラマの虚構だと思います。 しかし例えドラマの通りの事実であったとしても、そういう理由で戦争を始めたことが正しいことだったのか?ということを考え直す必要があります。 つまりロシアが朝鮮の一部を支配しようとしたのを阻止するためにロシアと戦争をする、という必要があったのだろうか?ということです。 当時の世界の常識では、これは戦争をする理由になることだったのでしょうが、今の価値観から見て、朝鮮全体を植民地にするために戦争をして、日本兵20万人の命を犠牲にするだけの価値があったのだろうか?と言うことです。 朝鮮を植民地にしたこと自体が日本の間違いだった、と今は反省している日本人なのですから、ドラマのこの原因説明で満足していてはいけない、というのが私の考えです。 当時の価値観から見れば、戦争をしたことを不道徳と非難することは出来ませんが、今の価値観からすれば、正しくない戦争だった、と言えます。 朝鮮を植民地にするための戦争などもっての外、と考えるべきです。 歴史を勉強するときには、この二つの価値観の両方をいつも見ておく必要がある、とおもいます。
補足
ありがとうございます。 ドラマでは、戦争の原因は、 「日本が朝鮮半島を支配する代わりにロシアの満州の支配を認める」 といういわば交換条件を提示したにも関わらず、 ロシアは朝鮮の北緯39度線までの支配を要求したこととなっておりました。 これも虚構でしょうか?