まず,「文体」と「仮名遣(かなづか)い」を区別しましょう。
「文体」というと,言葉の使い方・選び方そのものを指します。
いろいろありますが,大きく「口語体」「文語体」に分かれます。
口語体は現代の言葉に近いものです。文語体は古文に近く,「~なり」「たり」「べし」などが文末によく出てきます。
森鴎外の小節のうち,「舞姫」は文語体です。
有名な冒頭は「石炭をばはや積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと静かにて,熾熱灯の晴れがましきも徒なり。」
こんな感じのが文語体です。
一方,ご質問の「云ふ、さうですか、~するやうに」は,単なるかなの書き方の問題(つまり仮名遣い)です。
こういう書き方が歴史的仮名遣い(旧かな),これを「云う,そうですか,するように」と直すと現代仮名遣い(新かな)です。
さて,前の回答で
>オリジナルと同じ言葉遣い(旧仮名遣い)で収録されていますから
あれ,私が持っている岩波文庫の漱石作品はすでに現代仮名遣いに改められていますが…
(漱石独自のあて字についてはそのまま生かされています)
同じ岩波から発売の「漱石全集」(文庫ではない。回答No.2で紹介されているもの)は歴史的仮名遣いになっていました。
概ね,「だれそれ全集」と銘打ってあるものは,オリジナルの仮名遣いでになっていることが多いですね。
一方,文庫本では,昔はオリジナルの仮名遣いどおりだったのですが,最近は
●文語体の文章は歴史的仮名遣いのままとする。
●口語体の文章は現代仮名遣いに直す。
という編集方針の文庫が多くなっています。
岩波文庫は,江戸時代までの作品については,原文のまま,あるいは(江戸時代あたりになるとかなり書き方が混乱していたので)歴史的仮名遣いに統一していますが,明治以降の作品は上で書いた方針で表記しているものが大半をしめているようです。昔は違ったのでしょうが。
なかには,集英社文庫の樋口一葉作品のように,文語体でありながら現代仮名遣いに直しているものさえあります。(かえって読みにくい気がする。)
旧仮名では難しいだろう,という配慮かもしれませんが,正直言って一葉の文体を難しいと思う人は,現代仮名遣いに直したところでやっぱり難しいと思います。
こんな書き出しです。「廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お歯ぐろ溝に燈火うつる三階の騷ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行来にはかり知られぬ全盛をうらなひて、……」
そんな中で,ちくま文庫は比較的,原文の仮名遣いに忠実です。
たとえば,これに含まれている宮沢賢治全集は,すべて原文のままの仮名遣いでした。
以上,ご参考になれば幸いです。
お礼
>代日本文学の中で定評のある作品はほとんどが岩波文庫 そうなのですか。大きな書店で注文をするのが一番の方法ですね。 参考URL有難うございます。近くの書店で不可能ならば、試してみようと思います。 ありがとうございました。