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真空成形 ABS
射出成形で使用するABSの粉砕材を利用して、 真空成形用のシートを作る事は可能でしょうか? また、真空成形用のシートというのは、押し出し成形で作られるのでしょうか?
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前に同じ様な質問が有りました。 http://okwave.jp/qa/q7043863.html 同じ様な問題を抱えて居られ解決策を探して居られる方がここにも居るわけです。 回答が付かない様なので、この機会に整理してみます。 <真空成形用のシートというのは、押出成形で作られるのでしょうか?> そうです。 普通のシートやフィルは押出成形で作られます。 A) 射出成形と真空成形の違いを簡単にまとめます。 1) 射出成形:複雑な形状の金型を使い、そのキャビティの細部まで樹脂を流し成形。 流れ性を良くし、固化までの時間を稼ぐため成形温度は高い。 使用原料は樹脂ペレットまたは樹脂粉砕材。 2) 真空成形:上下方向に開く等の比較的単純な形の金型を使い、容器やトレー状の 比較的単純な物を成形。 流れ性が良すぎると、溶融体の形崩れ(ドローダウン)等が起こるため成形 温度は低め。 使用原料は押出成形シート。 B) 射出成形と押出成形の違いを簡単にまとめます。 1) 射出成形:狭い金型ゲートから急速に注入し、キャビティ末端まで溶融樹脂を短時間に 充填するために、分子量の低い流れ性の良い射出成形グレードが使われる。 2) 押出成形:細長いスリットから徐々に押し出し、冷却し、半固化状態のままロール等で 押し潰すので、分子量が高く、流れ性の悪い押出グレードが使われる。 C) 射出成形グレードと押出グレードの物性の違いを簡単にまとめます。 1) 射出成形グレード:分子量が低いため、耐衝撃性が低い。高流動グレードでは注意。 2) 押出成形グレード:分子量が高いため、耐衝撃性が高い。超高分子量のものは樹脂に よっては耐摩耗性材料として使われる。 以上の点は樹脂材料に付いて一般的に言えることです。 粉砕材を押出成形に利用できるかを考える前に、C)を考慮して、 真空成形で作られた製品に対する物性上の要求を検討する必要が有ります。 1) 現在真空成形で作られている製品には耐衝撃性は要求されていないのか? 粉砕材製の例えばボックスがハンマーで叩かれたら粉々に割れたでは困ります。 ABS製品が粉々では笑い物です。 2) 製品に要求される表面品質は? 粉砕材からの押出成形では綺麗な表面のシートを作ることは難しいでしょう。 外観は素人でも判断できる品質基準になります。 上の点がOKならB)を検討します。 流れ性は主に樹脂の分子量によって決まります(滑剤等の影響有り)。 ABSの場合、流れ性の目安となるメルトインデックスはある海外メーカーのグレードでは、 射出グレード19g/10min、押出グレード5g/10min 220℃・10Kg荷重下でとなっています。 流れ性は4倍も違います。 つまり粉砕材を使ったら、ABS押出の標準条件下では、樹脂溶融体はさらさら流れ 取扱に困ることになります。 難点が有っても成形条件などで何とかならないのかという事ならA)を検討します。 ご存じの様に、樹脂溶融体の流れ性は温度が下がると低下します。 ある国内メーカーのカタログにはスパイラル長の温度依存性が紹介してあります。 (スパイラル長は金型などの周辺条件に依存し流動性の目安としては?です。) 射出成形グレードA(良流動): 11cm(210℃)~25cm(250℃)。 射出成形グレードB(超高衝撃): 3.5cm(210℃)~14cm(250℃)。 210~250℃での変化はほぼ直線的。 射出成形グレード間でも2~3倍の差があるわけです。 雑な見積もりですが、Aでは40℃の差で2倍半、Bでは40℃の差で4倍とすし、 メルトインデックスもこの様な傾向を示すと考えれば、その4倍の差は30~40℃の温度差に 相当すると推定できます。 したがって、粉砕材を押出成形に使う場合には押出温度をABSの通常の押出温度より 30~40℃下げれば粘度的には押し出せるかも知れないということになります(その温度で ABSがまだ溶けていればです)。 粘度を上げる他の可能性は、粉砕材に押出グレードを1/3程度混合することです。 粘度がそこそこに上昇し、物性はかなり上昇します。 この場合、混合材の分離による表面のささくれが起きる可能性が有ります。 無難な線は、バージン材2/3と押出グレードペレット1/3を混合し、押出温度を、例えば 10~20℃、低下させてシートを押し出すことでしょう。 その際でも、粉砕材の水分管理は重要です。 いずれにしても、押出成形にはそれ相応の機械装置上の違いおよび成形技術上のノウハウが 有り思いつきでやれる物では有りません。 不思議に思うのは他の質問でも、バージン材の使用が指定してあると言う点です。 樹脂は経験的に30%までは粉砕材の混入は、成形条件が適切でかつ粉砕材の処理と 管理が適正なら、物性には影響ないことが知られています。 ランナー等の粉砕材の再生を考えるよりもこの点をユーザー様と検討されたらいかがでしょうか。 原料コストの低減はお互いに大きなはずですが。 国内では管理できても、海外工場では不安なのでバージン材指定の可能性もありますが。 余談です。粉砕材1/3までと説明していたら、ある成形メーカーが「粉砕材2/3まで混入実験を したが物性低下が見られなかった。その理由が欲しい。」と言われました。 苦し紛れに「社会や組織では1/3が若く新鮮ならその社会や組織は若さを保てる、若い人に よる補強効果。」と言ったらメーカーにもエンドユーザーにもすんなりと受け入れられました。 拍子抜けしました。
お礼
長文で、しかも分かりやすいご回答、本当にどうもありがとうございました。 是非参考にさせていただきます。 ありがとうございました。