文面からすると、ある部分についての知識はお持ちのようですね。
「中国人の殆どは今でも彼を賛美・支持しているのでしょうか。」とお尋ねですが、毛沢東についてのご自身の評価は如何ですか。どのような観点で発したご質問か分からないので、的確な回答になるか否か。
中国人は毛沢東に関しては、表面的には敬意を払います。腹の中は個人個人異なりますが、世代による色合いはあるようです。
尊敬でなく敬意と書いたのは、尊敬していることを積極的、具体的に表明した人に会ったことがないからです。尊敬しているならば、表明するほうが現体制から歓迎される筈なのですが、複雑なものがあるのかも知れません。
念のため述べておきますが、私の付きあった範囲は、都会の自社の社員、取引関係の会社員、経営者、大学教授、彼らの家族、大学生、中央官庁の役人(含む管理職)、地方農村の裕福な農家や自営業主です。中には、共産党の組織員もいます。従って、市井の庶民や農村の高齢者がどうかは直接は体験していません。
そこで肝要なのは、「彼らが知る毛沢東とは?」です。
独立宣言以前は国民党と、共産党と日本軍、再び国民党と共産党の戦の中で、人民は巻き込まれつつもただ平和を待ち望むばかりでした。ここまでは、軍閥としての毛沢東であって、崇拝の対象ではありません。
1949年--中国共産党人民政府独立宣言
毛沢東の無知による大躍進政策失敗で5千万人?餓死.
勢力衰退を恐れて有力政治家・軍人を粛清.
勢力挽回のため文革発動、封建皇帝と同じ発想.
1966年--文化大革命発動
人民を以って人民を制す、やり口は非人道的.
人民の生活改善や、科学的思考法は排除、情念のみ.
政治感覚は秀でており、帝王の地位を確保するも小心翼翼.
自分に不都合な実力者は次々に粛清.自分の手は汚さない.
1976年--毛沢東死去
1976年--文化大革命終結
1978年--改革開放政策
1981年--四人組死刑判決
ということは、世代により毛沢東や共産党への思いが異なります。
1956年生れが小学校中頃から大学中途まで文革の真っ只中、
現在55歳位。
1961年生れが小学校から高校入学頃まで文革、
現在50歳位。
1970年頃以降の生れは、文革とも毛沢東とも実質的に時代を別にしています、
現在40歳以下。
現在70歳の世代は、少年期から壮年期の入り口に、
現在80歳の世代は、10代の終に独立を体験し、青年期から壮年期真っ只中に、
毛沢東の大躍進、文革を体験しました。
彼らは人生の潮流の中で、喜びも悲しみも体験してきました。とりわけ、文革で非難の対象とされ謂れなき体罰や迫害や財産没収や肉親の死を体験した人たちも多くいます。
また、毛沢東が共産党の名のもとに行った数々の身勝手なことは、未だに人民にその実態は知らされていません。文革は失敗とされたものの、四人組に罪を負わせて毛沢東は実質免責、今や国家のシンボルです。
このような環境で人が何を思うか、どう行動するかおよその見当が付くでしょう。
現在も、毛沢東バッジや赤本(毛沢東語録)や写真など売っていますが、一部の人の崇拝はともかく、コレクションの対象だったりしています。
一般の人が、それらを飾るのは、「毛沢東は運が強かったからあやかりたい」からと言います。周恩来の写真を持つ人は「彼は毛沢東にいじめられ続けたが、最後まで儒教の精神を枉げなかった、子供が周恩来に倣って親孝行になるように」と言います。・・・この程度のことです。
毛沢東の利己主義、我欲、人民無視などの悪行は、中国を出た人たちによって多くの本が書かれています。中国で発禁になりますが、多くの中国人が海外でそれらを知ります。とりわけインテリ層には伝わるのも早く、知って知らぬ顔の中国人が益々増えるでしょう。
そもそも彼らは、聞かれなければ、毛沢東について話題にしませんし、仲間内でも今更話題になることはないと言っています(確認不可ですが)。
60歳位の某氏、「学生時代天安門広場で赤本片手に毛主席万歳を連呼して文革に夢中だったが、他人にかけた迷惑も沢山、今となって自省する」「共産党の良さは公平な配分だけだったはずなんだが、・・・・・」と。
また、日本に居る中国人某氏がワイルドスワンを読んだ後の会話・・・「自分の体験と重なる、ひどいことが沢山あった」けれども「自分の青春は毛沢東抜きには考えられない、何につけ毛主席万歳のなかで育ったのだから」「今や自ら崇拝することはないが、他人から否定されると、自分の青春時代を否定されるようで悲しい」と。
他にも、文革のおぞましさをそれとなく語る人はいます。
理屈とはまた別に、各世代の思いがあるようです。
過去問で類似の質問に回答しました。
http://okwave.jp/qa/q5386090.htmlのANo.3です。ぜひご一読下さい。
ここにも書いておきましたが、読み物をご紹介します。
小説なので読みやすく、文革と重なる時期の毛沢東がしてきたことが分かります。
『毛沢東の私生活』李志綏:毛沢東の主治医,米国へ移住し書いた.
『ワイルドスワン』張戎:文革体験記,英国留学後帰国せず書いた.
他にもあり
上記は小説ですし、細部は誤りや誇張が指摘される面もありますが、当時の状況を伝える重要な資料の一部として認知されています。
『周恩来秘録』高文謙:元共産党中央文献室,米国移住し書いた.
周恩来を軸に書いていますが、毛沢東の記録でもあります。
著者が当時党及び重要人物の個人/公式記録を扱う
担当官であり、情報の質の評価は高い。
この書は長征前からの共産党の軍閥、内部抗争、毛沢東の
性格、どうやって頭角を現し実権を獲ったかなども分かります。
読むのに、ちょいと辛抱とエネルギーが必要です。
*そもそものご質問にもどるならば、まだまだ統制された共産党独裁国家ですから、表面で見えるものは見かけにすぎない。いくらかでも真実を知るには、その社会の歴史と内情を知り、本音を推測することです。良い情報を入手できれば判断につながります。
お礼
とても詳しく書いて頂きありがとうございました。 私の質問の意図はそれほど深くはありません。 歴史に関して無知なのでちょっと毛沢東を調べた結果、疑問を抱き 質問したレベルです。 それをここまで詳しく理論的に説明して頂き感謝です。 崇拝するというよりは、中国のシンボル的な立ち位置なのですかね。 色々深く考えさせられました。 これからも中国だけではなく、インドやアフリカの歴史にも目を向けたいと思います。