パソコン上の字体について、詳しいわけではありませんが、「侠」の字は、おっしゃるように「にんべん+夾」が正字体です。
この「夾」を要素に持つ漢字として、「狹」や「挾」などがありますが、この新字体は「狭」「挟」です。
この例に倣って、「にんべん+夾」も「侠」という字体がパソコン上の字体として採用されたのだと思います。
辞書には載っていなかったということですが、昔の手書きの写本などでは「侠」という形の字も時に見られ、全く存在しない字ではありませんが、比較的使用頻度が低い字ですので、一般的ではありません。
ですから辞書にも「異体字」として採用されなかったのだと思います。
そんな辞書にも載っていないような「異体字」をJISに採用したのは、漢字をよく分かっていない人(漢字の学者ではなく技術者)が勝手に決めたからです。
単純に「簡単な字体にしよう」ということだと思いますし、「“狹”が“狭”なんだから、“にんべん+夾”も“侠”でいいだろう」という勝手な判断がなされたのだと思います。
このような例は他の漢字、たとえば「顛」「掴」など、たくさんあります(先輩編集者はこういう漢字を称して“嘘字”と言っていました)。
「狭」や「挟」は常用漢字ですが「侠」は常用漢字には入っていません。
公文書やそれに準ずる文書を除いて、一般的な文書中では、常用漢字以外の漢字は正字体で表記することになります。
つまり、本来ならば「にんべん+夾」が採用されるべきだったのですが、上記のような事情でJISには採用されませんでした。
それで仕方なく、昔のワープロや、今のパソコン、携帯電話、電子辞書などではこの「侠」の字を使うことになりました。
先の回答にあるように、現在は「にんべん+夾」もJISに取り入れられたようですが、それでも機種によっては文字化けしますので、普遍的ではありません。
特に携帯電話や電子辞書では、JIS第二水準くらいまでしか使えない仕様になっているので、どうしても「侠」の方が出てきてしまうのです。
そんなこんなで、みなさん「侠」の方が見慣れてしまい、違和感が薄れ、「にんべん+夾」の字が使える環境でも「侠」の方を使う方が増えてきました。
かくいう私も、ワープロが出始めたころは“嘘字”が気持ち悪くて仕方なかったのですが、今では昔ほど拒否反応を起こすことがなくなりました(完全に受け入れたわけではありませんが)。
ですから、質問者さんの「“侠”はあるのに“にんべん+夾”はない」という疑問が生まれるようになったのだと思います。
今でも「にんべん+夾」という字は存在しますし、漢字にこだわる方はきちんと正字の方を使っていらっしゃいます。
※この回答中、「侠」の正字をすべて「にんべん+夾」と書いたのは、質問文にある「俠」という字は、環境によっては文字化けするからです。
読みづらくなってしまい申し訳ありません。
お礼
なるほどわかりやすくご説明いただきありがとうございました。 もしやと思っていたことが現実に起こっていることを知り、危惧します。 一例ですが、パソコンのワープロ機能。 これもMicrosoft社の技術に左右されており、Microsoft社に雇われた在米日本人が携わっているやに聞きました。仮にMicrosoft社が真摯な姿勢であっても、日本語をチェックできるのはどうしても日本人となります。どこまで正確に反映してくれるか不安ですね。 そもそも、漢字の見直しがこう頻繁にあるのはおかしなことだと思います。