こんにちは。
哲学でも心理学でも、これに就いてのきちんとした解釈は見当たらす、一般的な使われ方もはっきり言ってまちまちだと思います。では、この違いを敢えて明確にしようとするならば、以下のような比較が可能なのではないかと考えます。
まず、「直感」と「直観」が厳密に違います。
「直感とは、理由がなくても理解できること」です。
では、
「Intuition:直観」
知的体験に基づいて導き出される答え。
「Inspiration:インスピレーション」
創造的作業の過程で生み出される考え。
語源が「霊感」であるため、現在の使われ方でインスピレーションに和訳はありません。ただ、共に「考察を行わずに得られる結果」であるというのは直観と同じであり、この辺りが双方の解釈を曖昧にしています。
では、「直観」といいますのは過去の体験から導き出されるものです。既に結果を体験しているため、考えなくても答えが出せるわけです。これに対しまして、幾つかの辞書では、インスピレーションには「創造的」という要件が宛がわれています。果たして、創造とは「新しいものを生み出すこと」であり、これは論理的な考察では導き出すことができません。
ならば、
「直観とは過去の体験から知り得ること(考察を用いない)」
「インスピレーションならば新しい発見(考察は使えない)」
ということになると思います。
但し、それが必ずや創造的なものでなければならないという決まりはありません。あるひとにとっては体験済みであっても、そのひとにとっては今まで知りえなかった新しいアイディアなのです。ですから、それは決して芸術家や発明家の特権というわけではないです。ですが、少なくともそこに何らかのインスピレーションが湧かなければ、直観だけでは芸術や発明を生み出すことはできません。
では、このようにインスピレーションが創造の源であると漠然と定義してみましたところで、果たして我々の脳の創造力とはいったいどのようなものであるのかというのがまだ全く分っていません。
つい最近、東京理化学研究所の脳科学グループが「直観の脳反応」に就いて研究を発表しました。将棋の棋士が直観で差し手を選ぶとき、前頭前野と大脳基底核に反応が現れました。前頭前野は一時情報と記憶情報を比較する場所であり、大脳基底核とは過去の体験を記憶している場所であります。従いまして、この反応は過去の経験から答えを導き出す「直観の機能」と一致しました。
では、直観とインスピレーションが違うものであるとしますならば、インスピレーションの場合はこの脳回路が直観とは異なる情報処理を行っているか、あるいは我々の脳内には大脳基底核に記憶されていない何か新たな結果を見付け出す別の機能があるということになりますが、残念ながらこちらに就いてはまだ何も分っていません。
ところで、これは恋愛関係のご質問ということで宜しいのでしょうか。ご質問の趣旨は全く想定していないのですが、例えば上記の見解を用いますならば、インスピレーションには論理的な裏付けというものがありませんので、自分が何故そのひとに心惹かれるのかをその場できちんと説明することができないわけです。このため、それが本気なのか一時的な感情であるのかははっきりと分りません。まして、これが「直感」「霊感」であったならば更に疑わしいです。
では「直観」であるならば、理由は考えれば何とか説明できます。ですが、それは飽くまで自分の体験によるものであるため、そのひとが本当にそうなのかどうかは分りません。因みに、このように恋愛相手に対して予め特定の印象や期待を持ってしまいますと、半年後にそのカップルの別れる確率は格段に高くなるという統計があります。何れにしましても、それが直観であれインスピレーションであれ、トドの詰まり、恋の行方といいますのは自分で確かめてみなければ分らないようです。