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暗号が解けない!1930年代のカナダで起こる謎の事件
- 暗号が解けない!M.Atwoodの小説「The Blind Assassin」で起こる謎の事件を解明しよう。
- 1930年代のカナダで、18歳のIrisと14歳のLauraが工場の放火容疑で追われるAlexを匿い、彼の書き置きの暗号を解くために頭を悩ませる。
- 大人になったLauraはこの暗号を元に遺書を残して自殺し、解読されていない謎の暗号に挑戦する人々が現れる。
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この本(小説)は、読んだことも見たこともないので、内容が分かりません。「暗号」というより「秘密文書」を解読しようとすると、この場合、誰が書いたのか、どういう目的か、誰に宛てて書いたのかが問題になります。 アレックス・トーマスが、イリスに宛てて、彼女には理解でき、妹のローラには分からないように書いたのだという前提にします。アレックスはかなり教養のある人物で、イリスもまたそうであると考えます。 物語の大きな枠組みを把握するため、年表を利用して、どういうことが起こったのか、以下にまとめてみます: ---------------------------------------------------------- 1)1934年、チェイス工場で争乱が起こり、工場は焼け落ち、二人の少女イリスと妹ローラは、アレックスと深い関わりを持ちます。 2)1935年、イリスは、リチャード・グリッフェンと結婚し、同じ年、彼女の父親ノーヴァル・チェイス(Norval Chase)は、多分、自殺により世を去ります。 3)1936年。ザナドゥー慈善舞踏会。クイーン・メアリー号処女航海。ローラはイリスに、街の通りで、アレックスを見かけたことを告げます。ローラの Sunnyside 情事。十月の終わり、イリスはリチャードに、自分が妊娠していることを告げます(受胎は、七月または八月。父親は、アレックス・トーマス)。 4)1937年五月、イリスは娘エイミー・グリッフェンを生み、他方、ローラは妊娠していることが知られ(リチャードにより)、ベラ・ヴィスタに送られます。 5)1945年、第二次世界大戦の終了の十日後、ローラは姉の自動車を運転して、橋から落ち、事故死(自殺)します。イリスは、リチャードから離れ、「Blind Assasin」の執筆を始めます。 ---------------------------------------------------------- さて、問題の「秘密文書」、つまり、1)で、二人の少女に匿われたアレックスが、二人から去るとき、書き残した文書の内容です: >> anchoryne / nacrod >> berel / onyxor >> carchineal / porphyrial >> diamite / quartzephyr >> ebonort / rhint >> fulgor / sapphyrion >> glutz / tristok >> hortz / ulinth >> iridis / vorver >> jocynth / wotanite >> kalkil / xenor >> lazaris / yorula >> malachont / zycron この一種の暗号文は、左の開始文字が、アルファベット順になっています。こういう場合、a,b,c,d……などは、文字のローマ字順序のずれを表現している場合があります。この場合だと、aは一文字ずれ、bは二文字ずれ……というような感じです。しかし、こういう「ズレ」の暗号ではないことは、「iridis」という言葉がありますが、これは、ギリシア語の単語、「iris(虹)」の複数主格形「irides」のヴァリエーションと考えられ、文字をずらせると、irides の綺麗な文字綴りが消えますから、おそらく違っているのです(イリス, Iris という名の少女にも宛てた文書だということは重要なのです)。 縦列と横行を90度回転させる暗号文もありますが、これも、「iridis」の綴りを壊しますし、また、一行の長さが非常に不規則で、そういう形の暗号とは考えられません。 そこで考えられることは、これは、「アアグラム」を使用しているのだろうという見当です。しかし、すべてについてアナグラムが使われているかというと、複数の理由から、違うという見通しが出てきます。一つは、エドガー・アラン・ポーの小説ではありませんが、英語では、「e」の文字が一番多く出てきます。しかし、上の文字列では、あまり「e」がたくさんあるとは云えません。アナグラムの場合は、eの数は、変化しないはずなのです。 もう一つの理由は、これを実際に読んでみると、最初の数行と、最後の数行は、訳の分からない言葉の連続ですが、中間部分になると、何か、「それらしい言葉の響き」があるのです。更に、これは、「隠しつつ、しかし、伝達するための文書」であって、簡単に解けないようなアナグラムを造る必然がないのです。この文書を読んでいると、見ていると、「意味が分かる」というのは、これは、アナグラム以外の方法も使っているのだということになります。 イリスにはすぐ分かったのですし、11年後には、ローラにもよく分かった内容なのです。 複数の読み方・解釈が出てきて、よく分からないのですが、次のように、暫定的に解読されます(物語とその状況を知っていれば、より妥当な解釈が出てくると思います)。 > Anyone can rod * Honey and(on) corn car * > Only be rex(lex) or * Be rex(lex) only or > Cardinal purple[ial] > Dear Might, quartz zephyr Diamond, quartz, zephyr > Ebon note(north), re-int[end] Ebon note(north), re-int[o/er] > Far goal, sapphire, no Full goal, sapphire, no > Glad's /triste/ ok Gluz# /triste/ ok > Herz#, you'll int[end]/int[o/er] Horz#, you'll int[end)/int[o/er] > Irides (Iris's) for-ever Iridis fore-ver > Joy want the coit' * Joy want the night * > Kill Alex, ok, or Alex, kill, or > Lazy(Lady])is you Laura * Lazy is, o, Laura* > Mal(bad) chant(song), crazy no Not crazy bad(mal) song(chant) >誰でも、杖を持つ(武装する)ことができる [優しい人、トウモロコシの車] >ただ王(法)のみそうであり >紫の衣の枢機卿もまた >愛しい力よ、水晶、そよ風 [ダイアモンド、水晶、そよ風] >黒檀に注目し、再び(意志する) [黒檀の北、再び(意志する)] >遙かな目標の青玉、いや [満たされた目的の青玉、いや] >喜びは、悲しみであり [グルッツ=激情は、悲しみであり] >心よ、貴方は望む(内面へと) [ホルツ=避難所・守護者よ、貴方は望む] >イリス(虹)は永遠に >喜びは交わりを求め [喜びは夜を求め] >このアレックスを殺すがよい >物憂げ[淑やか]なのは、君、ローラ >悪しき、狂った歌は(望まない) 「>> glutz / tristok 」は、前が、「glad's」で、後ろはフランス語の「triste」としか思えないのです。 上の解読は、それ自体、謎のような言葉ですが、これは作品の細かい詳細を知らないので、適合させることができないためです。色々な可能性が考えられるので、それらに対し開いておくと、全体が意味不明になって来ます。しかし、ドイツ語まで出てきているとはいえ、「イリス」と「ローラ」の対比が、「ローラ」の方はアナグラムにはめ込まれており、明確に何を述べているのか不明であるが、「暗示的に」何かを語っていて、当事者には、心当たりがある言葉だとも云えます。 なお、本当の正確な意味は、作者自身しか知らないのであり、作者自身も、あるいは、曖昧なままで、こういう文書を構成している可能性があります。暗喩性と解釈性が幾つにも重なり合っていて、暗喩的・象徴的意味の響きが、何重にもあり、それゆえ、「こういう意味である」との解読は不能なのだとも考えられます(また、厳密なアナグラムではないので、これが「元の原文」という復元がないのだとも云えます)。 (前後の文脈が不明な、アナグラムを使った暗号の意味をというのは、元々無理なのです。イリスがアレックスと関係を持ち、ローラはそれを知らなかったのだと思えます。最初の「トウモロコシの車」は、二人の情事の場所に何か関係があるかも知れないので、出しています。同様に、「枢機卿」とか「水晶」「ダイアモンド」「黒檀」などは、イリスには何か意味があるだろうという前提です。作品を見ていれば、より的確なデサイファーは可能です)。 「iridis vorver」は、iridis は、英語としては、irides が正しく、vorver などという単語は英語になく、フランス語のような感じですが、フランス語にも、こういう単語はなく、vor- をドイツ語読みして「フォル」と読んでみると、irides のeも関係して、「iridis for-e-ver 」という言葉が喚起されるのだと思えます(これは、「イリス[虹]は、永遠に」ですから、意味が通じます)。 >Blind Assassin >http://home.earthlink.net/~dayvdanls/blind_assassin.htm
その他の回答 (1)
左側の文字列と右側の文字列、それぞれ頭文字が a ~ m、n ~ z と順に並んでますね。 すでにお気づきでしょうし、 だから何だ、と言われちゃうとそれまでなんですが(^^ゞ。 ちょっとこの本が読みたくなってきました(汗)。
お礼
書き込みどうもありがとうございました。 そうなんです。自分も最初はアルファベットが鍵だと思ったんです。 原作、ほんとうにおもしろいですよ。 翻訳は早川書房から鴻巣友季子訳で出ています。 ペーパーバックならanchorから出ている本が\1480(丸善の値段)で買えます。 700ページ近い本ですが、一気に読めます。
お礼
回答を拝見しながら、興奮しました。確かに、いくつかのピースがあるべき場所に確実に収まっていくのを感じました。 Alexは第一次世界大戦時のヨーロッパの戦災孤児で、修道院で育てられた、という設定です。その彼が、英語の他にもいくつものヨーロッパ言語を理解していても、不思議はありません。 冒頭部、ボタン工場は放火されたばかりでなく、中にいた守衛が焼死しています。その犯人の汚名をAlexは着せられているわけですが、彼は密かに、二人の父親の商売敵であるRichardを疑っているのです。まさにこの辺りのことを暗示していると考えられます。「黒檀」は燃え落ちた工場の残骸、とすると、「青玉」は工場で作られるボタンの象徴でしょうか。 後半部、Irisに対してAlexが迫ったという事実をふまえているようです。 また、この書き置きが記されたノートは、幼い頃のIrisとLauraが家庭教師の下で、フランス語やラテン語を勉強した学習帳なのです。 この部分とは関係ありませんが、ウェルギリウス『アエネーイス』の第四巻を訳すことを強いられた二人が、家にあった英訳を書き写す場面で、Irisの名の由来が明かされています。 本書は2001年にハメット賞(ミステリに与えられる賞)受賞作品でもありますが、同時に2000年のブッカー賞も受賞しています。アトウッドは単にカナダの代表的な作家であるばかりでなく、現代を代表する作家の一人でもあるので、できるだけ正確に、深く作品を理解したかったのです。 非常に参考になりました。 回答を参考にしながら、もう一度全編を読み返してみたいと思います。 ありがとうございました。