化学の授業で「同位体」について習われたと思います。
原子の構造のところです。
原子核は陽子と中性子でできています。
陽子は電荷を持っています。原子の性質は大元をたどれば電気的な性質であると言っていいですから陽子の数が原子の性質を決めています。
中性子は電荷を持ちませんから化学的な性質にはほとんど関係しません。
でも原子核が安定に存在するためには必要な粒子です。陽子だけであればくっついていることができないという事は明らかです。中性子は陽子と陽子がくっついて存在することができる糊のような働きをしています。陽子と中性子が互いに入れ替わることができるという性質も効いています。
中性子の数はこれという一つの数でなければいけないということはありませんが陽子の数とあまり違わない値になっています。
陽子の数が同じであれば化学的性質は同じであるということで周期表の同じ場所に置くことになります。これが「同位体」という名前の出どころです。
たいていの元素に同位体があります。
酸素にも炭素にもあります。
水素だけが特別であるということではありません。
(原子核が陽子1つでできていれば電気的な反発を考える必要がありませんから中性子が存在していなくてもかまいません。これが他の元素と異なるところです。)
問題なのはHの場合だけ同位体に名前が付いているということです。
重水素、3重水素という名前です。
普通の水素よりも重い(質量が大きい)という意味ですが混乱します。
水素ではないのだろうかと思ってしまいます。
質量数2の水素、3の水素でいいはずです。
他の元素はすべてそういう呼び方です。
高校の教科書では重水素という名前を出さなくなっています。混乱するからです。
ユーリーが何故重水素という名前を付けたかはよく分かりません。
発見の時期から考えて軍事的な重要性が大きかったということが特別な名前がついた理由であるという推測もできます。(名前をつけて呼んだのはユーリーではなくてそういう分野の人たちだったかもしれないということになります。「重水素」という名前は学問的なものではなくてニックネーム(業界用語)だったということです。ユーリーはマンハッタン計画にも参加していますからその業界の中のメンバーだったということになります。)
ノーベル賞をもらったということにも特別な事情があったかもしれません。
ユーリーは水素以外にも炭素、酸素、窒素、硫黄の同位体を発見しています。
でも同位体の存在を初めて明らかにしたというのではありません。
(参)放射性同位体の発見 1906年、ボルトウッド・・・トリウムの同位体
安定同位体の発見 1912年 トムソン ・・・ネオンの同位体
水素の同位体の発見 1932年 ユーリー
ユーリーのノーベル賞受賞 1934年