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脳と運動
運動をすることで脳に刺激が起こるということを聞きました。運動をしているときに脳の中では何が起こっているのでしょうか? 大脳皮質や運動前野という言葉自体は調べていく中で分かったのですが、それらが実際運動をすることによってどう働くのかが分かりません。 具体的に教えていただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!
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- ruehas
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こんにちは。 大脳皮質の運動野といいますのは、「一次運動野」と「運動前野(運動連合野)」に分かれます。 「一次運動野」といいますのは身体に運動命令を伝えるのが専門です。ほぼ全ての運動神経がここから出ており、身体を動かすための「骨格筋(心臓や肺などを除く)」に繋がっています。 「運動前野」といいますのはこの一次運動野を除く「運動連合野」です。ここでは命令を出す前の「運動の組み立て」が行われるわけですが、以下のような役割に分かれています。 「前運動野・補足運動野:感覚情報に基づく運動の統合」 「帯状回運動野:価値判断に基づく運動の選択」 「前頭眼野:眼球の随意運動」 「運動言語野:発話の統合と発声の調節」 このような器官によって運動の目的ややり方が組み立てられ、一次運動野ではこれに必要な筋肉に対して命令が振り分けられます。 では、我々が運動を行うためには、目標までの距離や方向に加え自分の身体の状態などもきちんと把握しなければなりません。我々の脳内でこのような身体内外の環境情報を扱うのは視覚・聴覚野や体性感覚野です。 視覚野では距離や空間、聴覚野は音の方向だけではなく、時間やリズムなどを扱います。体性感覚野には筋肉や関節などの状態が入力されており、ここではこれに基づいて身体を中心とした「空間座標」というものが作られます。聴覚や視覚から得られた情報はこの空間座標に書き込まれ、目標や身体の向きなどが認識されます。 そして、環境からの入力情報を処理する感覚野連合野と、運動の命令出力を司る運動野連合野の両方を統合するのが「前頭連合野」です。この「前頭連合野」では、感覚野からの情報や過去の学習記憶を基に論理的な処理を行い、運動の意味や目的、そして結果を予測します。 このように、運動といいますのは運動野だけではなく、我々の脳のあらゆる機能を使って行われます。ところが、運動でも仕事でも、我々は慣れてしまいます何も考えずにそれができるようになります。これを「熟練運動」といい、運動学習を司る「小脳」の働きによるものです。 例えば、キャッチ・ボールや自転車の乗り方といったものはみな小脳に学習された熟練運動であり、このように身体で憶えてしまった運動といいますのは何年経っても忘れることはありませんし、大脳皮質がその都度命令を出す必要はありません。ならば、それが慣れてしまった運動であるならば、幾らやっても大脳機能の全部は使われないということになります。 では、運動によって脳を活性化させるということは、特に前頭連合野の思考力を高めるといった話ではなく、即ち、スポーツなどを行うことによって日常生活では使わない神経やその組み合わせを使ってやるということだと思います。 例えば、楽器の演奏では指の運動と聴覚処理の組み合わせが行われます。更にダンスやエアロビクスではリズム感の上に前庭器官などのバランス感覚が加わります。球技などでは「動体視力」、及びボールの動きに合わせた運動の切り替えが必要ですし、団体競技では自分の役割やプレーの目的などが瞬時に判断されなければなりません。 マラソンをしているだけでは感覚情報の処理というものはほとんど行われていません。もちろん、映画を見るときは感覚野と前頭連合野しか使いません。ですが、スポーツや演技などを行いますと、日常生活では使わないような様々な「感覚器官と運動神経の組み合わせ」が必要となります。脳を刺激するのにスポーツが向いているというのはこのようなことではないかと思います。このため、「運動脳トレ」などでは、例えばふわふわボールの上で姿勢やバランスを執るといった、日常生活ではまず行われないような特殊な運動が考案されています。ですから、その目的とは即ち「普段は使われない神経を刺激する」ということであり、ならば視覚や聴覚など多彩な感覚情報を処理しなければならない運動や遊戯などには、恐らくみな同様の効果があるのではないかと思います。 スポーツは脳を刺激し、楽しく身体を鍛えることができます。