「天国」という概念は、その起源は恐らく東方や地中海地方でしょうけど、
日本に伝わったものは、ゲルマン民族の世界観が混じった西欧キリスト教のものと
考えて良いと思います。まあ、日本の場合には、さらに浄土教と土着の宗教
が混交した「極楽」(の日本バージョン)という概念と折衷して、さらに複雑なもの
になっていると思いますけど。
「天の国」と「天国」は、日本語の翻訳の問題であって、どちらも同じことです。
新共同訳で「天の国」と訳されている箇所は、口語訳(同じ協会による、
二つ前の翻訳)では、すべて「天国」と訳されています。手元に文語訳聖書が
ないので確認できませんが、「天国」という訳語は、恐らく漢訳聖書から
採られたものでしょう。
ちなみに、少なくとも新約聖書における「天」も、「天の国」「天国」と同じことです。
非常に正確な字義訳として知られる改訂標準訳という英訳聖書には、"heaven" と
"kingdom of heaven" という2種の表現があるので、恐らく原語のギリシア語でも、
この部分は「天」と「天*の王国*」という風な2種の形で書かれていると思われます。
邦訳では、前者を「天」や「天国」、後者を「天国」「天の国」「天の王国」と
訳しているわけですね。ちなみに「神の王国」(改訂標準訳で kingdom of God)も、
「天国」と同義と考えてよいとでしょう。繰り返しますが、あくまで翻訳の問題で、
結局は同じことです。
ただし、同じ「天」という概念でも、新約と旧約では、かなり異なるようです。
この辺は、聖書学者の本を読まれた方が良いかと。
楽園というのは、言うまでもなくエデンの園を指しているわけですが、旧約では、
「庭」にあたるヘブライ語がそれです(新共同訳では「園」と訳している)。例えば、
イザヤ書などを見ると、救済されたものの行き着く地みたいな概念のようですが、
その詳細や、果たして「天」とどのような関係があるのか、勉強不足でわかりません。
新約では(実際には殆ど使われていないのですが)、多少パウロ神学のようなもの
が入ってきますが、ほぼ「天の国」と同じものと考えてよいかと。
ところが、どういう経緯があったのかわかりませんが、ダンテの「神曲」では、
エデンの園が「地上楽園」ということになっていて、「天の国」とは区別されて
いるんです。煉獄の頂上、要するに「天の国」の一歩手前という位置付けです。
まあでも、現在のキリスト教の文脈で「楽園」といったら、「天の国」と同一視して
良いでしょう。
「地獄」についてですが、この言葉自体は仏教に由来していますが、キリスト教
が入ってきた際に(これも恐らく漢訳聖書に倣って)、似たような概念(ゲヘナ)を
日本人に分かりやすくするため、借用したに過ぎません。新約聖書では、
地下世界を表すのに、二つの言葉が用いられています。つまり、「ゲヘナ」と
「ハデス」です。聖書協会の聖書では、前者を「地獄」(仏教用語)、
後者を「陰府(よみ)」(恐らく神道用語)と訳すとことで、上手く差別化しています。
その意味の違いについては、ネット上にも詳細がありますので、検索してください。
お礼
早速のご回答、ありがとうございます。 やはり、同じキリスト教であっても、教派が違うといろいろ違うのですね・・・。 ありがとうございました。