獣医師でウイルスに専門知識を有します。
質問者さんの別質問での私の回答の文章がまずかったため、誤解を与えてしまったようですが、連続変異及び不連続変異は、正しくは「抗原の連続変異及び不連続変異」であり、ほぼA型インフルエンザウイルスに限られた現象です。
要するに、人間から見てA型インフルエンザウイルスの抗原性は、"少しずつ"変わっていく通常の現象と、希に"突然がらりと変わる"現象が見られる、ということです。
抗原性の連続変異の方はどんなウイルスででも見られる現象ですが、不連続変異の方はほぼA型インフルエンザウイルスに限定された現象ですので、それを説明するのに「不連続変異」という言葉が先にあって、それの対比として"普通の変異"の方を「連続変異」と言っている、ということです。
連続変異はHA遺伝子の突然変異による、どんなウイルスにも見られる現象ですが(変異速度に速い遅いはありますが)、不連続変異の方はリアソータントという少し特殊な遺伝子の現象が背景になっています。
いわば、不連続変異の遺伝的な背景は突然変異ではなく遺伝子の組み換えです。
リアソータントについては質問者さんの別の質問への回答で述べていますので、そちらを参照して下さい。
リアソータントは分節RNAを遺伝子に持つウイルスに特有の現象です。なので同じ分節RNAのB型やC型、またレオウイルス科のウイルス(ロタウイルスなど)もリアソータントは起きていることは確認されているのですが、「抗原の不連続変異」はA型インフルエンザウイルスに特有の現象とされています。
それはA型インフルエンザウイルス以外のウイルスでは宿主域が狭く抗原性に元々バリエーションが少ないので、組み替えが起きても「突然がらりと変わる」という現象にはならないためでしょう。
さて、「進化」との関係ですが、生物学では「進化」と言う言葉に、"進歩"とか"生存に適した"などという意味はありません。どんな形であれ、遺伝的な背景をもって何かが"変わった"ことは全て「進化」と呼びます。また、分子生物学的には形質が変わらなくても遺伝子に何らかの変化があれば、それを「進化」と呼びます。
例えば、HA遺伝子の塩基が1つ変異したけれど、コドンが指定するアミノ酸には変化がなかったためHA蛋白はまったく変わらなくても、です。
ですから、(1)と(2)については紛れもなく「進化」と呼びます。
(3)については「A型インフルエンザウイルスの抗原性を説明するための言葉」でウイルス全体の話をすることに無理があります。
日本人を関西系と関東系の2つに分類して、「人類には関西系と関東系以外の人はいますか?」と聞いているようなものです。
A型インフルエンザウイルス限定でも、抗原性以外にも変異は見られます。PB遺伝子の変異による強毒変異もありますし、HAやNAに限定しても、上で述べたように"アミノ酸の変異を伴わない遺伝子の変異"も「進化」です。
なんにしても、もう少し落ち着いて1つ1つの質問に対する回答をじっくり消化された方が良いです。
お礼
いつもお教えいただき有り難うございます。 また、御返事が遅くなり申し訳ありません。 たいへんよく分かりました。 「もう少し落ち着いて1つ1つの質問に対する回答をじっくり消化」 しようとしているのですが、新しいことが多すぎて思うようになりません。根本の疑問は最初の2つの質問 http://oshiete1.goo.ne.jp/qa5333317.html http://oshiete1.goo.ne.jp/qa5334562.html なのですが、この御回答を理解しようとするとどうしてもその後の質問のようなことが分からなければ理解できないと言うことが次第に分かってきて、たくさんの質問をしてしまいました。 以前に頂いた御回答も未だ充分に理解できておりませんが、何とか理解できるように努力中です。 どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします。 ありがとうございました。