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突然変異進化論とウィルスの関係
生物の進化のひとつに突然変異論が有りますが、以前こんな事を本で読んだことが有ります。 突然変異による進化のはウィルス感染が原因で発祥する。 これは本当でしょうか。 ウィルスに感染した生物がほとんど絶滅し、極少数の生物がウィルスに耐え免疫が出来 生き伸びる。生き延びた生物の遺伝子はウィルスにより組み替えられ、第2代に突然変異が生まれ、この時大幅な進化を遂げる。人類の進化でも、各猿人の中間のまた中間的な骨の発掘がないのはこの為だ。 と、20年以上前に何かの科学雑誌のような物で読んだ記憶が有ります。何せ20年以上前の記憶ですので間違えや勘違いがあるかもしれませんが。 最近また思い出し半信半疑ですっきりしません。可能性は有るのでしょうか。
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獣医師です。ウイルスに専門知識を有しています。 この話、マンガ(MMR)のネタにもなっていたような記憶が。あのマンガ、その荒唐無稽さがけっこう好きでしたが・・・ ちょっと細かくツッコミを入れてみます。 >ウィルスに感染した生物がほとんど絶滅し、極少数の生物がウィルスに耐え免疫が出来 生き伸びる こういうことはあったでしょうね。特に珍しくもない出来事だったでしょう。現代になってからもそんなことはしょっちゅう起きています。 >生き延びた生物の遺伝子はウィルスにより組み替えられ ここが大飛躍なんです。生き延びたらそれで良いのでは?ウイルスに遺伝子を組み換えられる必然がゼロです。 普通のウイルスには「宿主細胞の遺伝子を組み換える」機能はありません。唯一レトロウイルス(エイズの原因ウイルスであるHIVや成人T細胞白血病の原因ウイルスであるHTLV等)だけが、「自分の遺伝子を宿主細胞のゲノムに組み込む」機能を持っています。 ただ、現存するレトロウイルスは白血球などの限られた細胞にしか感染できません。HIVに感染しても白血球のゲノムだけが書き換えられているわけなので、感染者の子供が生まれながらにHIV遺伝子を持っているわけではありません。 まあ、ヒトのゲノムには遠い過去に感染したと思われるレトロウイルスらしき遺伝子の断片がいくつもあるそうですから、生殖細胞にも感染能を持って「感染が遺伝する」機能を持ったレトロウイルスもあったのかもしれませんが。 まあここまでは「ウイルス進化説」の根拠になりうる話なのですが・・・ >この時大幅な進化を遂げる ここが最大の山場ですかね。 ほとんどの突然変異は致死的に働くので、「進化」と呼べるものになるにはよほどの偶然か、あるいは高度な知能を持った存在が「設計」したものでない限り、あり得なさそうに思えます。ま、動物の遺伝子組み換え実験ではレトロウイルスをベクターに使ったりもしますから。 ただ、人類進化史のミッシングリンクの説明になりそうなほどの「大幅な進化」となると、1つの遺伝子を組み換えただけではとても足りないでしょうし、突然「もはや別種」と言えるほどの大変化をもたらすには、ゲノムのかなりの部分を書き換えなければならないでしょう。 ・・・そんな大量のDNA、ウイルス粒子に入りませんてば。 ヒトのゲノムは約33億塩基対ですが、ウイルスのゲノムは最も短いもので僅か3,000塩基対、最も長いものでも20万塩基対ほどです。 1つの蛋白質をコードするのに平均1,000塩基対ほど必要だとすれば、最もシンプルなウイルスでたった3個、最も複雑なウイルスでも200個ほどの蛋白質しかコードできません。1つの遺伝子を狙った位置にドンピシャリ組み込むためにはいくつかの酵素なども必要になるのでそのための遺伝子も必要ですし、もちろんウイルスの自己増殖のための遺伝子も必要ですので、動物を「進化」させるほどの遺伝子を「たかがウイルス」が持ち運べるとはとても思えません。 よしんば、現存のウイルスからは想像もできない2億塩基対くらいのゲノムを持ったウイルスが、原人の生殖細胞に感染して200個くらいの遺伝子を一気に書き換えたとしても・・・ そんな胎児、無事に出産できるともとても思えません。犬がネコを妊娠したとして、果たして産めるか?という話です。生殖細胞以外に感染したとしたら、そのウイルスは100%の死しかもたらしそうにないですし。 もうひとつ。 仮にここまでの障壁をクリアするウイルスが存在したとしても、「では、その組み換える遺伝子のオリジナルは?」という問題が残ります。 ウイルスは自己増殖以外の生命活動をしない微生物なので、「殻」や事故遺伝子の複写に使う酵素等の数種の蛋白質しか遺伝情報として「持つ必要」がありません。ヒトなどの高等生物の遺伝子を組み換えるような配列は、ウイルスオリジナルでは持つ可能性がないということです。 ま、他の動物から持ってくれば良いんですけどね。B級ホラー映画あたりで見かけそうなネタですが。 というわけで、この話はやはり小説のネタくらいにしかなりそうもないです。 そういえば「リング」がそういう話でしたね。続編の「らせん」での種明かしに、この手の理屈が使われていたように記憶しています。 それでも、1人の人間の遺伝子を1個のウイルスが持ち運べるわけがないので、「無数のウイルスが少しずつ分担して持ち運んだ」みたいな理屈を通していたかと。 ゲームの「バイオハザード」にも、アリの遺伝子をTウイルスに組み込んで・・・みたいなネタがありましたっけ。 1つだけ「ウイルス進化論」に現実味があるとすれば、誰か高度な科学技術を持った者が、ウイルスをベクターにしてヒトの遺伝子組み換え実験をやった、という可能性でしょうか。(これを"現実味"と言うかね・・) それなら、200個の遺伝子を書き換えたければ、目的の遺伝子を組み込んだ200種類のベクターウイルスを用意すればいいわけですから簡単です。ま、我々人類にはあと100年経ってもまだ不可能かもしれませんが。 というわけで、「自然の状態では起き得ない」ということはご理解いただけたでしょうか。
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- taronbe
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多分中原英臣らの唱えていたウイルス進化論だと思いますが、これはまともな学者からは相手にされていません。悩むほどの価値はないかと。 http://www.meken.med.kyushu-u.ac.jp/~tosakai/virusevo.html
お礼
ありがとうございます。 こんな事はあり得ないと言うのが定説なのですね。
お礼
大変興味深い回答ありがとうございます。 自分が昔良く見ていた空想科学雑誌、けっこう過大表現のあり得ないものも載っていたことを思い出しました。これもそのひとつだったのでしょうね。すっきりしました。 でもこう言う科学雑誌に空想を巡らしていた昔の自分が好きです。
補足
>1つの遺伝子を狙った位置にドンピシャリ組み込むためにはいくつかの酵素なども必要になるのでそのための遺伝子も必要ですし、もちろんウイルスの自己増殖のための遺伝子も必要ですので、動物を「進化」させるほどの遺伝子を「たかがウイルス」が持ち運べるとはとても思えません。 納得です。「たかがウイルス」であり、こんな大それた事はなし得ない程の単純な構造の微生物だと言う事ですね。