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豚インフルエンザについて
メキシコを発端とした今回の豚インフルエンザについて伺いたいのですが、つい先日まで新型鳥インフルエンザ(H5N1型)のニュースが報じられていたのですが、今回ニュースで豚インフルエンザ(H1N1型)を“新型”と呼んでいないのですが、今回の豚インフルエンザは新型ではないんでしょうか? 今回の豚インフルエンザは鳥インフルエンザとの違い、急速な勢いで流行しており、1918年のスペイン風邪のようなバンデミック(大流行)が懸念されるのですが、万一発症した場合、タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザウイルス剤は有効なんでしょうか?
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獣医師です。ウイルスに専門知識を有しています。 新型インフルエンザは一応、「過去数十年間にヒトが経験したことがないHAまたはNA亜型(ウイルスの表面にある赤血球凝集素HAとノイラミニダーゼNAという、2つの糖蛋白の抗原性の違いにより分類されるサブタイプ)のウイルスが、ヒトの間で効率的で持続的なヒト-ヒト感染により伝播してインフルエンザの流行を起こした時にこの言葉を用いる。」と定義されています。 (出典は厚労省新型インフルエンザ対策ガイドラインの用語解説(下記リンク)より) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-15.pdf この定義だと、今回のメキシコ豚インフルエンザはH1N1という、人類社会で普遍的に流行しているソ連型と同一の亜型なので、今の状況で新型と断定するにはまだ不十分なわけです。 このH1N1という亜型が何を意味するかというと、世界中の人がこの亜型に対する抗体を持っているはず、ということです。 むろん同じH1亜型でもヒトで流行しているソ連型と豚由来のメキシコ株では抗原性は大きく異なるため、季節性インフルエンザのワクチンがそのまま効くわけではないのですが、それでも同じH1ですから交差反応はあるはずで、まったく効かないというわけではなく発病率や致死率は「新型」よりずっと低くなるはずです(ソ連型の自然感染を受けていた場合も同様)。 また、N1に対する抗体も多くの人が保有しているはずです。NA蛋白はHA蛋白ほど変異しませんから、この抗体によってもかなり致死率は減じるはずだと思われます。(H1N1で免疫したマウスに強毒のH5N1を感染させたところ、致死率が半減したという報告があります) にも拘わらず、メキシコでは感染拡大も早く致死率も高いという、「新型出現」と思いたくなる状況になっているわけですが、反面アメリカなど他の国にも感染拡大は見られるものの、その数も少ないですし死亡者もいません。その要因はざっと以下のことが考えられるかと。 1)同じH1亜型でも抗原性が大きく異なるため、季節性インフルエンザのワクチンや自然感染による抗体がまったく効かないウイルスが流行している。 メキシコと他の国との感染者数及び致死率の差は、医療レベルの違いによるもの。 2)季節性インフルエンザの流行状況やワクチン接種率の違いにより、メキシコだけがH1N1に対する抗体保有率が低い状況にあった。 3)豚インフルエンザだけでなく、他の感染症との混合感染が起きている。 この中で1)であればまさしく「新型インフルエンザ発生」となるでしょう。世界的な流行を引き起こせば多大な人的被害が懸念される状況ですから。 ですが、2)や3)であれば、それは"メキシコ固有の状況"によって被害が大きくなっているということなので、世界的な大流行は起きない可能性があります。他の国にも感染者は出るでしょうけど、症状もたいしたことがなく大きな問題にはならないかもしれない、というわけです。 そういう懸念があるので、WHOも今のところフェーズを3から4に上げるのを躊躇っているのでしょう。もう少し疫学調査をしないと、というわけです。 日本では厚労省の大臣が、季節性インフルエンザのワクチン製造を後回しにしてでもメキシコ豚インフルエンザのワクチン製造を最優先で行う、と発表しましたが、かなり難しい判断だな、と思います。 日本ではワクチン製造に発育鶏卵を使っているのですが(発育鶏卵でウイルスの培養を行う)、その数の問題からも人的問題からも、ここで豚インフルエンザワクチンを製造するということにすれば、季節性インフルエンザのワクチンは製造できないか製造できても数も足りず、流行にも間に合わない可能性が高いです。 だとすれば、2)や3)によって"メキシコ風邪"がパンデミックを起こさずに終息してしまった場合、今年の冬には季節性インフルエンザによる人的被害は却って確実に大きくなるでしょう。 ま、どちらにしても裏目に出れば被害の拡大を招くわけで、大変難しい判断だとは思いますが・・・この発表が政治家の"パフォーマンス"でなければ良いのですけどね。 なお、今回の"メキシコ風邪"ですが、タミフルとリレンザは現在のところ効果があるそうです。
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Jagar39です。 フェーズ4への移行と「新型インフルエンザ発生」の宣言がされましたね。 でも、これは現に世界中に感染が広がりつつある状況を受けて、これ以上躊躇っている猶予がなくなったからなので、状況がよく判らないことには変わりないです。 毎年の季節性インフルエンザもこの程度の感染拡大はしているわけですから、どう考えれば良いのか。 ふと思ったのですが、HA亜型を決定する時は各種の亜型に対する抗体とウイルスを反応させ、「どの亜型と一番反応するか」を調べるのですが、この中ではH1と最も反応したのでH1亜型である、とされているわけです。 ですが、事が終わってから詳細に調べると、H1に分類するにはあまりにも抗原性の変異が大きい、ということになれば、H17とかに分類され直す可能性だってゼロではないかな、と。(現在はHA亜型は1から16まであるので、新しいHA亜型ということに) ということであれば、正真正銘の1)ということになるでしょうね。もはやH1ですらないわけですが。これは確かに「新型」だ。 ま、あまり可能性は高くないとは思いますが。 >今まで人類はウイルスとの戦いに勝ってきたので そうでもないですよ。局地戦では勝ったり負けたりしてますが、完全勝利を収めたのは天然痘くらいで、あとは「勝った」とはちょっと言えないウイルスばかりです。 特にインフルエンザには、ほとんど"好き放題されている"状態ですかね。 なんとか被害を最小限に食い止めることができれば良いのですが。
お礼
ありがとうございました! メキシコ国民(感染された方々)がワクチンや抗体を保有しているのにも関わらず、流行している場合は新型の可能性が高いですね。もし、新型だった場合はパンデミック(感染爆発)になるかもしれないですね…。 Jagar39さんが解説していただいた1)にはなってほしくないものです…。 メキシコでの100名に及ぶ犠牲者は今回の豚インフルエンザが主因とは限らないわけですね。先進国での患者の死亡例は今のところないわけですし。 今まで人類はウイルスとの戦いに勝ってきたので、今回がもし新型であっても勝ってほしいですね。