1.轢逃げについて必ず成立するのが、道路交通法違反です。
まず72条の事故を起こした者の各種義務にたいする違反ですが、負傷者の救護義務・道路上の危険防止の措置義務に違反した場合は10年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法117条)、病院に運ぶなどしたが警察に連絡せず逃げた場合は報告義務違反として懲役3月(同法119条10号)、連絡したが警察が来る前に逃げた場合には最高5万円以下の罰金(同法120条11号の2)となります。
また、飲酒運転(道路交通法65条第1項違反)については、酒酔い運転の場合5年以下の懲役又は100万円以下の罰金、酒気帯び運転の場合3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
2.これに加えて、刑法上の犯罪が成立します。
過失であれば自動車運転過失致死傷罪(刑法211条2項)として7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となり、故意であれば傷害罪(刑法204条)として15年以下の懲役又は50万円以下の罰金、または殺人罪(刑法199条)として死刑又は無期若しくは5年以上の懲役となります。
さらに、飲酒状態で正常な運転ができないことを認識しつつ走行していた場合は、過失による事故であっても危険運転致死傷罪(刑法208条の2)として、負傷であれば15年以下の懲役、死亡の場合は1年以上の有期懲役となります。
3.道路交通上の犯罪(義務違反及び飲酒運転)と刑法上の犯罪は両立し併合罪となりますので、最も重い罪の刑の1.5倍で処断されます。
したがってご質問のケースで、どちらも過失の事故であり、救護せずに逃げたのだと考えると、1のケースでは、危険運転が成立すれば22.5年以下の懲役、自動車運転致傷の場合には15年以下の懲役または150万円以下の罰金、自動車運転致傷が成立しない場合は10年以下の懲役または100万円以下の罰金となり、2のケースでは、自動車運転過失致傷罪として15年以下の懲役または150万円以下の罰金となります。
一見1のケースの方が重いようにも見えますが、実際に1のケースで上限まで請求される事はありませんので(どの罪も致死と致傷を含めているために、刑の上限が課されるのは致死の結果が発生した場合のみです)、実際の刑は事実関係や前科にもよりますが、上記の3~5割程度だと思っておけばいいでしょう。2のケースでも通常は刑の上限が課される事はありません。