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酸化数の具体性?
高校化学からの質問です。 最近酸化還元反応に慣れてきて、酸化数の考え方もだいぶつかめてきたのですが、ふと、「酸化数は原子の状態の何かの数を具体的に表しているのだろうか」と疑問に思いました。具体的に電子(荷電子)や何かの状態を表していたりするのでしょうか? 宜しくお願いします。
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酸化・還元反応は電子の移動で考えます。 その時に酸化・還元の程度を表すめやすになる量が酸化数です。 単原子イオンの場合はイオンの価数と電子の移動が簡単に対応付けられます。イオンの価数で酸化の程度を表すことが出来ます。 問題は多原子イオンや分子の場合です。 過マンガン酸イオンの反応を考えて見ます。 MnO4^(-)+8H^(+)+(x)e^(-) → Mn^(2+)+4H2O 過マンガン酸イオンがマンガンイオンに変わっています。 電子の移動も起こっています。「x=5」は電荷の保存から分かります。結合している酸素の数が変わっていますから酸化状態が変わっているというのも分かります。 酸化・還元の反応式を作るだけであればこの式があればいいのですから酸化数は必要ありません。 この式の両辺でMnの酸化状態がどう変化したかを表すめやすがほしいという場合には左辺のMnO4^(-)の中のMnと右辺のMn^(2+)とを比較する規準が必要です。MnO4^(-)の中のMnはイオンではありません。Oもイオンではありません。ハッキリしているのは全体で(-)ということだけです。 そこで形式的にOに対して(2-)という価数を割り振ります。Mnの価数は(7+)と決まります。この(7+)をMn^(2+)の(2+)と比較するための数字として使う事にしたのが酸化数です。 このように酸化数を決めるとx=5という数字は酸化数の変化として考えたものと一致します。電荷の保存から出した値と食い違うと困るのです。電荷の保存の方がもっと根拠のハッキリした大きな原則です。 MnO4^(-)の(-)で両辺の電荷の保存が満たされているようにしてx=5を決めました。この(-)に合うように内部のOとMnに電荷を割り振りました。各原子にばらして考えても電荷の保存は成り立つようになっているはずです。形式的に全ての原子に酸化数を割り振ってイオンとしてバラバラにすれば残るのは酸化数の変化した元素の原子だけになりますから「酸化数の変化=移動した電子の数」になるのは当然です。 半反応式を出す時に電荷の保存ではなくて酸化数の変化から電子の数を決めている教科書があります。酸化数が便宜的なものだというのではなく電荷の保存に変わりうるものだという印象を受けてしまいます。 H2Oの中のHの酸化数=+1、Oの酸化数=-2としたからと言ってH2Oが2つのH^(+)と1つのO^(2-)で出来たイオン結合性の物質であると考えないで下さい。 H2Oは共有結合で出来た分子です。
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- potachie
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「酸化数は原子の状態の何かの数を具体的に表しているのだろうか」 そのとおりです。「周期律」が見つかったもとともなっているくらい、「元素」(原子の性質)とも密接に関係があります。 今の高校化学では回答が難しいと思いますが、量子化学や軌道論を学ぶと、だいたいの理由が分かってくると思います。 電子が原子核の周りに一定の数が集まると、その状況は安定する、というのはイオン化とも共通の性質です。ただ、その安定する状況は1つとは限らないので、いろいろと面白い化学反応ができるわけですね。
お礼
回答ありがとうございます。 参考になりました。
- htms42
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#1です。 >具体的に電子(荷電子)や何かの状態を表していたりするのでしょうか? #1の説明だとこのご質問にまだ答えていないのではないかと思いました。便宜的に決めたと言うだけであれば恣意的な感じを与えてしまいます。 補足します。 MnO4^(-)の中のOを形式的にイオンと同じように見て(2-)の電荷を割り振りました。その結果として電荷の保存からMnの形式電荷は(7+)になりました。 酸素Oの形式電荷を(2-)としたことに根拠がなければMnの形式電荷(7+)にも根拠がなくなります。 金属の酸化物 例えばCaO はイオン結合性物質です。Ca^(2+)とO^(2-)で出来ています。化合物の中の酸素をこのような化合物の中の酸素と同じように考えようという立場(たいていの化合物の中では酸素が一番電気陰性度の大きい元素になっていることを踏まえています)に立つと共有結合の酸素に対して形式電荷(2+)を割り振ることが出来ます。これで化合物の中の結合がイオン結合、共有結合のどちらであっても同じ酸化数になるということで整合性を持たせることが可能になります。 少し表現を変えます。 酸素に対して酸化数-2を割り振ったということは酸素に対して化合物の中の酸素であるか単体の中の酸素であるかだけに着目して共有結合であるか、イオン結合であるかという結合の違いは問題にしていないという立場に立っているということです。これで酸化・還元の程度の違いは表すことができるという判断です。 だから化合物の中に同じ元素の原子が2つ以上含まれていて直接結合が存在する場合は、その部分については単体と同じ状態が残っている事になりますから酸化数は違ってくるということになります。過酸化水素H2O2はH-O-O-Hという結合ですからO-Oの結合は単体扱いです。形式電荷で言うと[O-O]^(2-)になります。これはO1つで言うと形式電荷が(-)ということです。 有機化合物の中のC-Cも単体と同じ扱いになります。 こういう基準で決めた酸化数で酸化の程度を知るめやすにするということが実際の化学的な性質と矛盾しなければ安心して使うことが出来ます。多分、無機化合物の反応の範囲では大丈夫でしょう。有機化合物では「?」である例がありそうです。 C6H5Cl,HCl,NaClの中のClは酸化数で考えるとどれも-1です。でも働きにはかなりの差がありそうです。ゴミの焼却でダイオキシンが発生するとか言う時にはイオンになってしまったCl-はほとんど関係しません。有機化合物の中で共有結合で存在しているClは問題になります。家庭用のゴミの中では塩化ビニル、塩化ビニリデンの焼却が一番問題になるそうです。塩素の結合した有機化合物には毒性のあるものが多いです。殺虫剤のDDTやBHCの中のClも共有結合です。 ついでに 過去の質問に酸化数からイオンの価数が決まると思っていることによるものがいくつかありました。イオンの判断が先です。これは酸化数に無関係に決まるものです。Na^(+)もCa^(2+)もCu^(+)、Cu^(2+)も酸化数とは無関係に決まるものです。SO4^(2-)の(2-)も酸化数に無関係に決まるものです。
お礼
またまた丁寧な解説ありがとうございます。 いろいろと勉強になりました。やっぱり奥が深いですねー。
- 101325
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#1さんの示された考え方が基本ですね。単なる目安です。 > 具体的に電子(荷電子)や何かの状態を表していたりするのでしょうか? 理化学辞典第5版(岩波書店)で酸化数を引くと、「原子の電荷の分布を正確に表わすものではないが,主として無機化合物における原子の状態を大まかに区別する目安を与えるものとして利用される」とあります。具体的に何かを正確に表しているものではないですけど、『原子の状態を大まかに区別する目安』にはなりますので、無機化学の分野では便利に使われています。 実際、理化学辞典で「銅化合物」や「鉄化合物」などを引くと、一番最初に、これらの元素が化合物中でとりうる酸化数が書いてあります。そして化合物の性質は、[1]銅(I)化合物, [2]銅(II)化合物, ... のように酸化数ごとに分けて書かれています。 一方、「炭素化合物」と「有機化合物」の項目には、説明文中には酸化数という言葉はありません。有機化学の分野では、それほど便利じゃないということなのでしょう。また、金属を含む物質で重要な物質群に合金がありますけど、たとえば真鍮(黄銅)の中の銅の酸化数は?などと問うことはほとんど意味がないです。 単なる目安なんですけど、銅(I)化合物は2~4配位、銅(II)化合物は4~6配位になり易いというように、酸化数を使うと酸化還元反応以外の性質も見通しが良くなります。特に遷移金属錯体(錯イオン?錯塩?配位化合物?高校化学で何と呼ばれているか分かりません)の性質を予想したり分類したりする時には、非常に便利な『目安』です。もちろん大学の専門レベルに移っても有用です。「酸化数」と呼ばずに「原子価」と呼ばれていることの方が多いかもしれませんが。
お礼
回答ありがとうございます。 >有機化学の分野では、それほど便利じゃないということなのでしょう。 大変参考になりました。ありがとうございます。
これまでの回答にありますように、酸化数とうものは便宜的なものであると思います。 ただし、酸化数として、+あるいはーの値を割り振るにあたって、その原子の電気陰性度その他の要因が考慮されます。したがって、大雑把な話としてーの酸化数を持つ原子は負電荷、+の酸化数を持つ原子は正電荷を持っていると考えて差し支えないでしょう。ただし、仮に酸化数が+5であったとしても実際に+5の電荷があるわけではありませんし、五価の陽イオンになるというわけでもありません。だから「便宜的」と言えるわけです。 乱暴なたとえをするならば、A-Bという原子間の結合が分極してAに+0.1、Bに-0.1の電荷が存在するとした場合(これ自体考え方としてはナンセンスでしょうが、たとえ話と思って下さい)に、酸化数を割り振るならばAが+1、Bが-1ということになります。そういった結合が五本あれば、たとえば、Aの電荷は+0.5ということになりますが、酸化数は+5になります。そんなわけで、酸化数の符号にはある程度の化学的な意味はありますが、数値(絶対値)に関しては便宜的なものと言えるでしょう。
お礼
回答ありがとうございます。 >数値(絶対値)に関しては便宜的なものと言えるでしょう。 大変参考になりました。ありがとうございます。
#1のお答えの説明が適切だと思います。 最後の水の例に似たものが塩化水素(HCl)です。気体でははっきりした共有結合物質で、水に溶けると水の「溶媒和」の効果で水素イオン(正しくはヒドロニウムイオン:H3O^+)と塩化物イオンに分かれます。 また次亜塩素酸イオンOCl^-のなかでOは2-と考えClは1+と考えます。フッ素を除く次亜ハロゲン酸イオンのハロゲンはXが1+と考えることが適切です。 いずれにしても、ある意味、酸化数は「便宜的」なものなので、高校レベルから大学の専門レベルに移るとあまり意味が無くなってきます。
お礼
回答ありがとうございます。 >酸化数は「便宜的」なものなので、高校レベルから大学の専門レベルに移るとあまり意味が無くなってきます 大変参考になりました。ありがとうございます。
お礼
丁寧で詳しい回答ありがとうございます。 疑問がすっきり解決しました。