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水の電気分解で H2O が反応するのは何故?
水の電気分解で酸性溶液(H2SO4 水溶液など)では(1),(3)の反応が起こり,アルカリ性溶液(NaOH 水溶液など)では(2),(4)の反応が起こると考えられます。 陰極: 2H+ + 2e- → H2↑ (1) 2H2O + 2e- → H2↑ + 2OH- (2) 陽極: 2H2O → O2↑ + 4H+ + 4e- (3) 4OH- → O2↑ + 2H2O + 4e- (4) ここで,溶液が酸性からアルカリ性に変わる事で,反応種が陰極では H+ から H2O に変化し,陽極では H2O から OH- に変わります。 酸性溶液で(1)の反応が,アルカリ性溶液で(4)の反応が起こる事は自然です。では,何故アルカリ性溶液で(1)でなく(2)の反応が起こり,酸性溶液で(4)でなく(3)の反応が起こるのでしょうか。 以前は,酸性溶液での OH- 量やアルカリ性溶液での H+ 量が非常に少ないためと考えていたのですが,「極く少量でも反応すれば平衡で新たな H+ や OH- は供給されるはず」と考えだすと,単に量が少ないだけでは納得できなくなってしまいました。 どなたか「物理化学」苦手の私に,納得できる数値なり理論なりを示して落ち着かせて下さい。お願いします。
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いつのまにか議論が再開していたのですね…。また参加させて頂きます。 まず,T-Ein さんの文献についてですが,引用文中の「百年前からわかっている」の部分に,ちゃんと 100 年前の論文が参照されておりますか? もし参照があるなら,その元の論文に関する情報を教えていただけると幸いです。その論文こそが,この問題の「答え」ですから。万が一参照がない場合,引用された部分は「非科学的」と言わざるを得ません。なぜなら反応物濃度が 0.01 M 以上である根拠が全くないことになってしまうからです。この数字を元に pH < 2 だとか pH > 12 だとか議論する重要な値な訳ですから,正確な論理展開でキチンと導出しなければなりません。何の説明もなしに「百年前からわかっている」など言われても,全く説得力がないのです。 さて,ここからが本題です。多少以前に書いた内容の繰り返しになりますが,この問題の根本は「(i) 水分子の電離の反応速度と (ii) 電極反応速度の大小関係」にあると思います。ロジックは No.3 に書いたとおりです。当初私は,水の電離速度は十分に大きく,常に (i) > (ii) だと思っておりましたが,他の方々の回答およびその中の実験事実などを拝見させていただきますと,現実は私の認識とは異なり,恐らく水の電離速度は意外に小さいのだと思います。気体発生を目視できる程度の速さの,実感できる(?)水の電気分解では (ii) > (i) になっているのでしょう。本当は正確なデータが欲しいところですが,状況証拠として,No.4 による dragon-2 さんのフェノールフタレインの実験結果がそれを示唆していると思います。つまり,OH- が電極近傍に局在化する理由は OH- の移動度が比較的小さいためであり,その原因は水の電離の遅さに他なりません。また,多くの方の説明で見られる「濃度説」も,水の電離が十分に遅いことが暗黙の前提条件となっていれば納得できます。 今までの議論を総括し,私なりにまとめました。以下に示します。恐らく,現実もこのようなものではないかと思うのですが,如何でしょうか? [case 1.] (i) > (ii) の場合 CV など電気化学測定における微小電流での電気分解が,こちらの case に分類される。電気分解の速度は小さく,電極電位差も小さい。酸化還元反応を起こすイオン種は,それぞれ H+ と OH- である。よって,半反応式は(1)と(4)のみ。 [case 2.] (i) < (ii) の場合 気体発生を目視できる程度の速さでの電気分解が,こちらの case に分類される。電流が大きく電気分解の速度は大きい。電極電位差は case 1 の時よりも大きく,反応を起こす化学種は H+ と OH- と H2O の 3 種類。このうち,陰極近傍にある H+ と陽極近傍にある OH- は電気分解の開始と共に減少し始め,後に低い濃度で保たれる。この濃度とは,イオン種の電極反応速度と供給速度とがつりあった平衡濃度である。 電極反応の経時変化は,濃度が変化し続ける「初期状態」と平衡濃度で安定する「定常状態」とに分けられる。初期状態とは,H+ と OH- が H2O よりも優先して電極反応を起こすが,H+ や OH- の泳動・対流・電離などが遅いために電極への供給が間に合わず,電極近傍の濃度が減少し続ける状態のことである。一方定常状態とは,H+ と OH- が低濃度で安定し,ほとんど H2O のみが電極反応を起こしている状態のことである。つまり,初期状態における半反応式は(1)と(4)で表すことができ,定常状態における半反応式はほぼ(2)と(3)で書ける。 この初期状態の寿命は,それぞれ H+ および OH- の初期濃度によって決まる。pH = 7 の時は,両者の初期濃度はほぼ同じオーダーにあると見なせるが,もし pH が十分に小さいときや十分に大きいときは,両者に著しい濃度差が生じ,その結果,陰極と陽極とで初期状態の寿命が異なってくる。つまり,片一方の電極のみで,初期状態が長く続くことになる。この現象に基づき,一方の電極が初期状態で他方の電極が定常状態の系のことを,以下「準定常的な系」と呼ぶことにする。例えば pH が非常に低い場合「陰極の初期状態の寿命 >> 陽極の初期状態の寿命」である。すなわち,陽極はすぐに定常状態に移行して H2O の酸化反応が主となるにも関わらず,陰極は長時間初期状態を維持し,H+ を還元反応をし続ける。この準定常的な系の半反応式は(1)と(3)である。同様にして,pH が非常に高い場合の準定常的な系の半反応式は(2)と(4)になる。これらの準定常的な系はあくまでも過渡的な状態であるが,pH が極端に大きかったり小さかったりした場合,準定常的な系を維持する時間は非常に長い。そのため,場合によっては,実際の実験において定常状態を観察できないことも考えられる。
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- dragon-2
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コンニチハ おひさしぶりです。 Nernst の式・電極電位など考察されているようですね。昔やったので忘れてしまいました。が、一つだけ実験例を 電解質に硫酸ナトリウムを使用する水電解です。このとき指示薬にフェノールフタレインを用います。電解開始直後赤になるのは陽極ではなく陰極です。陰極にOH-を認められるということは、結局は陰極で水が電子を受け取り水素を発生し水酸化物イオンを生じる。ということです。 結果からの考察ですが、十分に加電圧が高いときには、陰極では水も水素イオンも両者とも電子を取っている。水素イオン濃度が一定になるので、最終的にはこの極の回りの水分子が電子を受け取り、水素と水酸化物イオンになる。と考えます。 最初に電子を受け取るのは圧倒的に水分子の方が多いですが、それを直ぐに水素イオンに渡し水素イオンが反応し、平衡により水分子からまた水素イオンと水酸化物イオンを生じる。または水が電子を受け取って直接水素と水酸化物イオンになるのかの違いでしょうか。どのような液性でも両方とも起こっていると思われます。電子の授受が素早いものなのでどちらとも区別がつかないのではないでしょうか。 で、酸性溶液では酸の代表である水素イオンが陰極で電子を受け取り、水酸化物イオンの濃度がきわめて低いので陽極では水が電子を放出すると、量的なことから言えるのではないでしょうか。反応種がどのpHの時点で変化するのかは中性を境に考えるのがよいと思います。 以上は中高生に説明するときに使います。でもrei00さんは納得しない思いますが。
お礼
大変遅くなりましたが,再回答ありがとうございました。 > 結果からの考察ですが、十分に加電圧が高いときには、 > 陰極では水も水素イオンも両者とも電子を取っている。 > 水素イオン濃度が一定になるので、最終的にはこの極の回りの > 水分子が電子を受け取り、水素と水酸化物イオンになる。 なるほど,これは納得できます。確かに,『十分に加電圧が高いとき』は,これで良いと思います。後は『加電圧が低いとき』どうなるかですが,これに関しては改めて。
- 38endoh
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ご質問の内容は「(i) 水分子の電離の反応速度,(ii) 電極反応速度の大小関係はどうなっているか? また各々の反応速度の pH 依存性はどうか?」という問題に帰結されると思います。正解を得るには,これらの数字をデータ集や論文等で調べられるのが良いかと思います。 もし (i) > (ii) であれば,rei00 さんの質問文中にある(2)や(3)の半反応式は,電極反応の前に電離が起こり,結局はそれぞれ(1)と(4)と等価になります。逆に (i) < (ii) であれば,(1)と(2),(3)と(4)でそれぞれ異なった酸化還元電位を持つ別の電極反応になります。このような場合,水の酸化還元電位に非常に大きな pH 依存性が発生するでしょう。 これは私の妄想かもしれませんが,水の電離は複雑な電子移動の絡まない,直接的なヘテロリシスですので,電離の反応速度は非常に大きいと思います。よって,(i) > (ii) ではないかと思います。 (1) の水分子の電離の反応速度について,直接的な値を文献で探すのは大変かもしれません。そのような場合,プロトンの移動度が参考になるかもしれません。これでしたら pH 依存性のデータも揃うと思います。水溶液中におけるプロトンの移動度は他のイオンとは異なり,実際の化学種の電気泳動はなく,電離反応を利用した結合のホッピングにより移動します。つまり,電離の反応速度はプロトンの移動度からある程度推測できると思います。 (ii) の電極反応速度については,典型的な電流値から逆算することが可能でしょう。 もし参考になりましたら。
お礼
いつも御世話になっています。若干期待しておりました。 スミマセン,簡単に言ってしまいますが,「酸性でもアルカリ性でも実際の反応種は H+ と OH- である」という事でしょうか? 確かにそう考えれば何の問題も生じないのですが・・・。何となくシックリしません。 ところで,「移動度」に関して成書を見ていて気付いたのですが,共存する SO4(2-) や Na+ は考えなくても良いのでしょうか? これらが OH- や H+ の反応を邪魔している可能性は考えられませんか? 連休間にもう少し考えてみますが,何ありましたら追加宜しく御願いします。
- dragon-2
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よくご承知のようですから少しだけ。 反応は濃度の影響は大きいのです。実際に反応するのはその「活量」で考えます。 「活量」=「活量定数」*「濃度」です。 中性溶液ではpH=7、すなわち水素イオン濃度[H+]=水酸化物イオン濃度[OH-]=10^(-7)mol/l 酸性溶液、例えばpH=5で[H+]=10^(-5)mol/l、[OH-]=10^(-9)mol/lですから、それぞれ100倍違います。 したがって、酸性溶液の陽極反応はOH-より水が電子を放出する。塩基性溶液の陰極反応はH+よりも水が電子を受け取ると考えるのが適切です。
お礼
回答ありがとうございます。先日久し振りにお名前を拝見して,何か懐かしくなってしまいました。今後とも宜しくお願いします。 で,お書きの内容は,その通りだと思います。私自身,ずっとそう考えていました。が,それだけでは「酸性溶液中での OH- の反応はアルカリ性溶液中よりも起こり難い」とは言えても「H2O 分子の方が OH- よりも反応しやすい」とは言えないと思うのです。 H+ あるいは OH- の濃度(活量)の差がどう影響して,反応種が H+ から H2O に(H2O から OH- に)変わるのか? これが分かりません。電極電位はイオン強度や活量で変わり,pH が変わる事で各反応に対応する電極電位が変わります。これが理由かとも思い pH = 1 と pH = 13 で電極電位を Nernst の式で求めてみましたが,差は小さくなるものの反応種が変わる結果にはなりませんでした。 何かアイデアありましたら,また御回答お願いします。
- hot-tea
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水の電気分解とのことですが、同様のことと思い、充電池のことを考えました。 反応は、書かれているのと逆ですが、たとえば鉛充電池も同じ反応です。ただ、この場合、結果として、と書かれています。つまり、陽極ではPbとPbOとHとOなど、陰極ではPbとPbSo3とHOなどとの間で反応していて、中間の反応は複雑でたぶんそのようらしい、そして結果として、充電の時は酸素と水素が発生し、放電では水ができる。適切な硫酸濃度があるかぎり、中間の反応で硫酸が絡んでいます。だから、式は結果だけ、と思っています。
お礼
回答ありがとうございます。 > だから、式は結果だけ、と思っています。 確かに「全体としてみれば」そうかもしれません。しかし,「細かく見ると」いくつかの考えられる反応の起こりやすさの順序づけはできるものと思います。 で,私が知りたいのは,『アルカリ性溶液で(1)と(2)のどちらが起こりやすいか?』と『その事は,どう説明されるか?』なんです。 何かアイデアがありましたら,また回答お願いします。
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お礼
遅くなりましたが,#10, #11 も合わせてお礼申し上げます。 実は,この回答を拝見してから図書で電気化学や電極反応関係の成書を何冊か借り出して,私なりの解釈を加えようと考えていましたが,私の力に余りました。 回答頂いたこの内容,私には非の打ち所がありませんですた。どうもありがとうございました。今後とも宜しくお願いします。