「知的財産権」と「知的所有権」は同義語であり、少なくとも私は、両者の概念やニュアンスに違いがあることに基づいて時と場合に応じて使い分けられた例を知りません。
両者の概念、ニュアンスに差がないことは、今後、公文書等では「知的財産権」が使用され、「知的所有権」は使用されなくなることからも明らかです。もし差があるのであれば、「知的財産権」と「知的所有権」の両方が併用されていくはずです。
以下、公文書等で「知的所有権」が使用されなくなることについて。
民法206条には、「所有者は、自分の所有する物を自由に使用し、利益を得、処分する権利を有する」との規定があります。つまり、所有者は、自分の所有物を排他独占的に取り扱うことができる権利を有します。
特許権、著作権、商標権、意匠権等もまた、「排他独占的に活用し得る権利」であり、所有権に類似した性格を持ちます。この見地から、これらの権利を一括して「知的所有権」と総称するようになりました。
しかし、民法上、「物」は「有体物」です(同法85条)。これに対し、上記の権利は「実体のない無体物」であり、知的「所有権」との呼び方では民法の規定と整合がとれません。
そこで、昨年(2002年)の7月3日、知的財産戦略大綱にて、「民法の規定と矛盾が生じるという懸念を払拭するために、知的財産権で統一する」ということが決定されました。例えば、昨年新しく制定された知的財産基本法では、「知的所有権」という文言は一切使用されておらず、全て「知的財産」ないし「知的財産権」で統一されています。
そもそも、不動産などの有体物に関する有体財産と対比して「無体財産権」が古くから使用されていましたから、その方が宜しいのかもしれません。
特許庁や日本弁理士会では、この決定に則って「知的財産権」を既に使用し始めていますから、「知的所有権」は使用しない方が無難でしょう。
お礼
Bokkemonさん、詳しく有難うございました。 通常は同じと考えていいのですね。分かりました。 お答え頂いた皆様にも、ここであわせて御礼致します。