私は、無主物の先占(民法239条)として、ご質問の化石は、発見者である質問者さまの所有物になると思います。一応、質問者さまの単独所有に帰属すると考えています。
私は、ご質問の化石は、埋蔵物(民法241条)には、当たらないと思うのです。
まず、民法239条の「無主物」とは、(a)いまだかつて人の所有に属さなかったもの、及び(b)かつては人の所有に属していたけれども、放棄されることによって無主物となったものをいうとされます(川島武宜ほか「新版注釈民法(7) 物権(2)」初版(平成19年、有斐閣)。
その一方で、民法241条の埋蔵物は、確かに「土地その他の物の中に外部からは容易に目撃できないような状態に置かれ、しかも現在何人の所有であるか判りにくい物をいう。」(最高裁判所・昭和37年6月1日判決)とされています。
しかし、これが、具体的に、どのようなものを念頭において理解されているかというと、たとえば「地中に埋められた小判、大きな仏像の中に入れられた秘仏、壁の中に塗り込められた宝石あるいは貨幣、噴火で土中に埋まった建物あるいは動産等」(加藤雅信「新民法大系 物権法」第2版(平成17年、有斐閣)など、もともと人の手が加わっているもの=その意味で、正体は不明だけれども、何人かの所有に帰属しているものとして理解されており、換言すれば(民法239条と同法241条を整合的に解釈しようとすれば)、明らかに何人の所有にも属したことがないものは、民法241条にいう埋蔵物に含まれないと理解されるようです。
そして、昭和37年の最高裁判例の事案も、旧日本陸軍が、終戦直後、盗難その他第三者により持ち去られることを予防するために軍施設内に埋めておいた銀塊に関する事案のようで、今回ご質問の、天然に存在し得るするような化石に関する事案ではないようです。
このようなことを総合的に考慮すると、ご質問の化石は、自然の動植物が、自然のうちに珪化・固定化されたもの「いまだかつて人の所有に属さなかったもの」として、無主物の方に該当すると考える方が自然であると思います。
ちょうど、海の中を泳いでいる魚は、漁業権がついている場合もありますが、普通は無主物と考えられるのと同じであると思います。
そこで、ご質問の場合の化石は、民法239条にいうところの、無主物であると考えられるわけです。
そうすると、遺失物法に定める手続(民法241条本文参照)等を経ることなく、質問者さまは、発見という事実によって、直ちにこの化石の所有権を取得しそうです。
なお、この無主物が他人の土地の中から発見された場合ですが、化石は土地に固着していて容易に分離することができないものではなく、普通は、発見して掘り出せば、簡単に掘り出すことができるものですから、化石は土地の一部であるともいえないと思います。
また、同様に、無主物が他人の土地の中から発見された場合、民法には、無主物先占者と土地所有者との利害調整に関する規定(民法241条但書参照)は、置かれていません。
これについては、「(当事者間の公平の観点から)埋蔵物と同じように、土地所有者の持分取得を認めるべきであろう」(前掲注釈民法)との主張もありますが、現行民法の適用としては、土地所有者に持分を認めることは難しいと考えます。