日本では、生産に対する(要する)人件費の割合が高い。
それで企業は、人件費を抑制する為に、途上国に生産拠点を移したりしていましたが、それはそれで新たなる問題が生ずると、今度は主要な生産工場を国内に移動させ始めました。しかしそれでも人件費を抑制する必要性は変わらないので、その為に正規雇用社員数をぎりぎりまで押さえ、後は非正規雇用社員に置き換えたのです。それらの人件費抑制策は、そのまま非正規雇用社員の身分の不安定さと、低賃金と言う結果を生じさせたわけです。
では正規社員は楽か?といえば、そうではなく、企業には正規社員でなければ任せられない仕事(社外秘の仕事=新商品の企画や設計等々とか、会社が全面的にその責任を負うような仕事=契約交渉等々)も沢山有り、減少した正規社員で、削減された正規社員の分までこれを行わなければならなくなり、しかも成果主義も導入された結果、サービス残業や、過酷な長時間連続勤務が強いられ、過労死と言う悲惨な状況まで多発しています。
では何故、人件費が上昇したのかという理由について考察します。
(1)国内物価が高い=生活必需品における物価が上昇すると、これの占める割合(エンゲル係数)が高くなる(特に日本では、生活必需品にまで消費税をかけているので、高くなり易い)と、可処分所得が小さくなる。可処分所得が小さくなると、消費が低迷し経済が活性化しない為、人件費を上げざるを得ない(しかし人件費を上げると、結局間接的には物価上昇に繋がるのですが)。
(2)日本人が一戸建て(賃貸ではないマンションも含めます)の家に持つ執着心は、他の先進国の人々と比べて非常に大きい。しかもこの家の取得が人生をかけなければならない程の一大事業(諸外国と比べると高価である上、金融政策上の問題もあって、非常に高リスクな買い物)となっている。この日本人の究極の欲求を満たす必要がある(労働意欲の増進)。
(3)老後の生活の保障が、他の先進諸国と比べると決して安心なものとはいえない為(お粗末なことは近時の年金問題や、セーフティネット政策を見ても明らか)、折角の可処分所得が、老後に備えての貯蓄に使われてしまう。つまり、将来に対する不安を取り除く為にも、終身雇用と賃金の定期昇給は必要であった(逆に言えば、それさえあれば、政府・官庁に多少の社会保障上の不備、失策があっても許容された?)。
等々の理由から、上げざるを得なかったと考察しています(現在は一部大企業や銀行を除いては、この賃金の定期昇給すら抑制されている)。
まあ早い話そうしたことから、日本人は高度経済成長時代から、人生にゆとりを求める欧米人の働き方と比べて、少しでも賃金を得ようとして、まるで働き蟻のような生活を維持してきた(強要され続けてきた)といえるでしょう。
そしてこれには歴代の政府や官庁がとってきた政策や施策も、大きく影響しています。
現在、日本における若年労働者(生産階級労働者のこと。公務員等は生産階級労働者ではない)の減少が深刻になりつつあり(国家の経済を直接支えているのは生産階級労働者)、為に海外からの移民を受け入れるべきであるとする動きもでてきています。
しかし、こうした点を考慮しないで、単純且つ闇雲に受け入れ策を拡大
すれば、どういう結果が生ずるか・・・非常に危惧しております。
括弧書きが多くてすみません。