(1)何か変化はあったのでしょうか?
地方では、村長、郵便局長、警察署長が地域社会を支える要となる役職とされていました。「局長さん」は民営会社の社員もしくはその下請けの社長さんみたいな位置付けに変わりましたから、地域社会の影響力は大きく変わってきているようです。
具体的には、民営化前は、全国特定郵便局長会議みたいな政治組織が編成されていて、地方の自民党の集票マシンの1つと言われていたようですが、政治的影響力はかなり落ちてきているようです。郵政組織は単なる国営金融機関ではなく、地域社会の下部政治組織の役割を通して、官僚主導政治を良くも悪くも支えていました。しかし、その前提条件は崩れてしまったとされるべきでしょう。私は前回の参院選で自民党が敗北した一因に郵政民営化もからんでいると見ています。
(2)郵便貯金の350兆円はどのようなことに活用されるのでしょうか?
混乱が起きないよう当面は激変緩和措置が取られますが、長期的には民間他の金融機関と同等の融資分野に参入することは明らかです。最近の新聞報道によれば、駿河銀行と組んで住宅ローン分野に参入することを決定しています。経済的に自立した女性にターゲットを絞ったとか、発想はユニークで、私としては良い戦略と思います。共産党員ならずしても、日本の金融機関は大企業とお金持ちに眼が向いていて、個人や中小零細企業に融資の手を差し伸べてくれる金融機関は、暴力団まがいの取り立てをするサラ金業者しかなかったのはおかしい限りです。
たとえばアメリカでは「サラ金」会社など無いのですが、どうして無いのかアメリカ人に聞いたところ、銀行が融資してくれるので、サラ金業者が存在する理由がないから、というのがその答でした。大きな駅前にはサラ金業者の店舗と看板が立ち並び、サラ金業者の社長が長者番付の1位、2位を占めるという異常な「資本主義社会」が日本経済の現実です。共産党の書記長が「大企業優先の政策はおかしい」と言っていますが、本来資本主義には「大企業優先。金持ち優先」というコンセプトは絶対と言ってよい位ありませんから、私はくやしくてたまりませんね。
私は郵政会社は、大手金融機関、地域金融機関ですら、大手企業、お金持ちをターゲットにせざるを得ない実情を、逆手にとって、個人や零細中小企業に重点を置いた融資戦略を取れば、かならず成功すると思います。この場合過去の官営時代につちかった「局長さん」の、個人や零細中小企業に対する情報力、信用調査力が大きく役立つとおもうからです。他の民間金融機関には無いおおきな長所です。
お金持ちの人口より、普通の人の人口は圧倒的に多いでしょう。日本経済を支えているのは大企業でしょうが、その大企業を支えているのは中小零細企業と言ってもよいでしょう。
地域の農家や商店、旅館のワカモノや主婦が集まって何か事業をしようとしたときに、局長さんが相談相手になり、郵政会社という巨大組織から得た情報を提供し、アドバイス、コンサルをし、最終的にはリスクミニマムにして融資実行し、利益を挙げるというのが、私の考える郵政会社の1つのビジネスモデルです。これで損する人は誰もいないでしょう。
政府自民党の集票組織となって、収益を確保する「政商型ビジネスモデル」から脱却できないときには、誰からも相手にされなくなって、350兆円は宝の持ち腐れになって郵政会社は破たん崩壊の道を歩み始めるでしょう
(3)郵便局員の方々の勤務や心境はどのような変化があったのでしょうか?
私は5年前から田舎暮らしを始めましたが、ここには銀行は1軒もなく、コンビニは有りますがATMは置いて居ないような、金融過疎地域です。郵便局は局長さんを含めたった3人です。ですから、皆さん大忙しです。
ついこの間、町内会主催の食べ放題(といってもおでん、たこやき、焼きそばの類です)飲み放題の住民交流会(原資は町内会費です)を公園でやったのですが、局長さんはそのカラオケ大会の司会をしていました。以前はその役をする人がいなかったので、中学生や高校生がマイクを独占する状態でしたが、今年は、大人・お年寄りから始まって中学生や高校生にバトンタッチする、世代間の公平が実現されました。
私はその局長さんに、生命保険の勧誘を受けました。まだ入っていなせんが(笑)銀行の支店長が町内会のカラオケ大会の司会をすることは決してないでしょう。郵政会社はこれが出来てしまうのです。
地方経済の地盤沈下が叫ばれて久しいですが、地域経済を支える商店や旅館ホテル土産物店など観光業者に資金や情報を提供できる金融機関が少ないことがその原因の1つではないかと思います。局長さんの意識も変わっているようですし、こういう分野で郵政会社がしっかり地域を支ることに成功すれば、郵政会社はきちんと350億円を有効活用し、かつ利潤を確保できるようになると考えています。