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真空度と時間の関係についての疑問
- 学校で行った真空蒸着実験において、時間と真空度の関係に疑問が生じました。
- 開始5分で真空度はほぼ飽和状態になり、結局到達真空度は10^-6[Torr]程度になりました。
- なぜ真空度は飽和状態になるのか、またなぜ10^-5[Torr]以降は時間がかかるのかがわかりません。
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>0~10^-5[Torr]はとても早いのに、10^-5~10^-6[Torr]以降は時間がかかってしまうのはなぜなのか 普通の高真空蒸着装置だと、だいたいそのような排気特性ですね。 真空度が 10^-5 Torr未満でなかなか真空度がよくならないのは、チャンバー内の壁面から気体分子(主に水の分子)がじわじわ出てくるからです。チャンバーにわずかにリークがあって、外気から空気分子がチャンバー内に入ってくる場合もそのような現象がおきます。 ご質問は前者の現象のことだと思いますが、そのようなことが起こるのは、試料の出し入れなどでチャンバー内を1度大気にさらした場合だと思います。チャンバーを大気にさらすと、大気に含まれる水分(水分子)がチャンバー内の壁面に吸着しますが、この水分子は真空にしてもなかなかなくならないという性質があります。壁面から出てくる水分子は、量としてはわずかなので、0~10^-5 Torr の排気では影響しませんが、真空度が10-6 Torr 台に入ると、壁面から出てくる水分子の影響で真空度がなかなか良くならないということが起こります。 参考URLのPDFファイルの 50ページに、真空装置の排気特性の式が出ていますが、このページの中ほどにある P(t) = ( P0 - Q/S )*exp( -S*t/V ) + Q/S という式がこの現象を表わしています。これがご質問のタイトルにある「真空度と時間の関係」です。 P(t) はチャンバー内の真空度(圧力)で、P0 は真空引き前の圧力(大気圧)、Vがチャンバーの体積、t は時間です。この右辺の第一項は時間の経過とともにゼロになっていきますが、第二項の Q/S があるために、t → ∞ としても 圧力 P はQ/S より下がりません。この Q は壁面に吸着していた気体分子の漏れ量(時間あたりに放出される量)です。Q/S は小さい値なので、真空引きの最初は(t が小さいうちは)、圧力 P の変化は( P0 - Q/S )*exp( -S*t/V ) のほうが支配的なので、時間とともに真空度がどんどんよくなりますが、( P0 - Q/S )*exp( -S*t/V ) と Q/S が同じくらいの値になってくると、なかなか P が小さくなりません。 S は真空ポンプの排気速度ですから、排気速度の大きなポンプを使えば、到達真空度を下げることができます。しかし、ポンプの排気速度は一定でなく、真空度が下がると排気速度が下がるという特性があるので、ポンプの特性によってはあまり効果がない場合があります。また、チャンバー内を大気にさらさず、試料導入室を別に設けて、真空中で試料を出し入れする構造にするとこのようなことは起きません。チャンバー内部を長時間大気にさらしていると、吸着した水分子が多くなって、到達真空度が悪くなることがあります。このようなときは、ベーキングと言って、チャンバー全体を150℃くらいに加熱して長時間保持すると、壁面に吸着した水分子が強制的に追い出されるので、到達真空度が良くなります。
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- TEOS
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真空度の測定は、ピラニーゲージで測定でしょうね?? 憶測ですが、真空ポンプの限界&ベルジャーのリークは考えられませんか?? 結構高真空だと思いますけど?
補足
すみません。質問の仕方が悪かったようです。 真空度を上げるのには困っていません。 結局知りたいのはなぜ指数関数的な特性になるのかということなんです。 それを物理的?な説明をしていただけないかなと思っていたんですが・・・
お礼
とてもわかりやすい説明ありがとうございます!! おかげで理解することができました。