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稲妻について
「稲妻」はなぜ「いなずま」なのでしょうか。 「妻」は「つま」だから「いなづま」でよさそうに思います。やっぱり本当の「妻」でないから? たとえば、「新妻」は「にいづま」であって「にいずま」じゃないですね。
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いわゆる4つがな(「じ・ず・ぢ・づ」)の使い分けの問題ですね。 「現代仮名遣い」(昭和61年7月1日内閣告示第1号)によると,「ぢ・づ」を使うのは ○同音の連呼(「ちぢ」および「つづ」) ○2語の連合(にい+つま→にいづま,のような例) に限られています。 「地面」の「地」は,いわゆる字音仮名遣いをどう定めるかともからんできて,ちょっと別の問題になりますので,とりあえずおきましょう。 で,問題の「稲妻」ですが,次のような記述があります。 …と書いているうちに,Sukemasaさんの回答が投稿されましたので,現代仮名遣いの原文はそちらを見ていただくことにしましょう。 ようするに,多くの人は「いね」+「つま」という語源意識を忘れてしまって一語と意識しているので「2語の連合」とはみなさないのが原則だが,2語と意識している人は「いなづま」でもよい,ということになります。 もともと「せかいじゅう」などは,最初の現代仮名づかい(昭和21年)では「じ」「ず」しか認められていませんでした。 従って,「どうして『せかい』+『ちゅう』なのに『じゅう』になるの?」という子供の(大人でもいいが)素朴な疑問が生じていました。そのせいかどうか,改正された現代仮名遣いでは両論併記的なことになりました。
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再投稿です。No.108605は内閣告示を載せただけの不親切な投稿ですみません。 なぜあのような規則になったかの実質的理由は皆さんの書いておられるように語源意識の問題です。 そもそも、どこの国でも事情は同じですが、正書法を定めるにあたって常に対立するのが、語源主義(伝統主義)と発音主義(現状主義)です。すなわち、伝統と語源を尊重すれば「いなづま」と「づ」を区別すべきであり、現在の発音を尊重すれば「いなずま」と「ず」に統一すべきなのです。 そして、語源主義は基本的に衒学的であり、発音主義は本質的に庶民的であるため、近代になって学問の権威が掘り崩されると、全体として発音主義が優勢となります。旧仮名遣いが改められたのはその流れです。 しかし、庶民もある程度は言葉を語源的に解釈して記憶していますし、発音と異なる慣用的正書法も常識として持っています。そのため、それにまで抵触するほど発音主義を徹底されると「変だ」となるわけです。 そこで、あの内閣告示でも「第1 語を書き表すのに,現代語の音韻に従って,次の仮名を用いる」と発音主義を原則として、「第2 特定の語については,表記の慣習を尊重して,次のように書く」と慣用主義(語源主義)を例外として、さらに庶民意識の限界事例として「なお,次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくい もの等として・・・」と両論併記(発音主義が本則)の再修正を行っているわけです。 すなわち、「ちぢむ」は語源に従った書き方が慣用として優勢であるため例外としての語源主義が採られ、「いなずま」は語源意識が薄れてむしろ「いなずま」が慣用になってきているので原則に戻って発音主義なのです。 もちろん、ですから、この告示に従う必要はありませんし、現実の慣用はこの告示どおりではないかもしれません。ただ私は、nozomi500さんが「『稲妻』はなぜ『いなずま』なのでしょうか」と質問されたのは、多分、辞書やFEPから得られた疑問なのだろうと考え、それは単に辞書やFEPが、何らかの基準でデータを作らねばならないから、内閣告示の基準に従っているだけである、と言いたかったのです。 ちなみに、私の「意識」としては「いなづま」です。こういう「正しい言葉遣い」の意識は育った環境に規定され、強固でかつ排他的なものですから(「ら抜き」論とか)厄介ですね。 なお、県知事は「同音の連呼」の例ではなく、「漢字の音読みで濁っているもの」として「同音の連呼」「二語の連合」に関わらず「じ」「ず」を使うのは、告示にあるとおりです。ここでは発音主義が優勢とされたのでしょう。
お礼
みなさん、ありがとうございました。 結局は、みんながそうつかうようになったから、ということで決まりができちゃったみたいですね。もともとの発音が「づ」だったのか「ず」だったのか、そのへんが興味のあるところでもありますね。 もとから「ず」の発音で、あとで当て字として「稲妻」になったとしたら、「いなずま」が「正しい言葉」ということになります。 まあ、発音を言い出したら、現代の方言でも地域で異なっているぐらいで、どれが正しい、といえないのですが。
(編注:以下の「⇒」はSukemasaが付けました) _____________________________________ 内閣告示第一号 一般の社会生活において現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころを、 次のように定める。 なお、昭和二十一年内閣告示第三十三号は、廃止する。 昭和六十一年七月一日 内閣総埋大臣 中曽根 康弘 現代仮名遣い (略) 第1 語を書き表すのに,現代語の音韻に従って,次の仮名を用いる。 ただし,下線を施した仮名は,第2に示す場合にだけ用いるものである。 1.直音 あ い う え お か き く け こ が ぎ ぐ げ ご さ し す せ そ ざ じ ず ぜ ぞ ⇒ た ち つ て と だ ぢ づ で ど (編注:ここで「ぢ」「づ」に下線が引いてあります) (略) 第2 特定の語については,表記の慣習を尊重して,次のように書く。 (略) 5 次のような語は,「ぢ」「づ」を用いて書く。 (1)同音の連呼によって生じた「ぢ」「づ」 例 ちぢみ(縮) ちぢむ ちぢれる ちぢこまる つづみ(鼓) つづら つづく(続) つづめる(約△) つづる(綴*) 〔注意〕 「いちじく」「いちじるしい」は,この例にあたらない。 (2)二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」 例 はなぢ(鼻血) そえぢ(添乳) もらいぢち そこぢから(底力) ひぢりめん いれぢえ(入知恵) ちゃのみぢゃわん まぢか(間近) こぢんまり ちかぢか(近々) ちりぢり みかづき(三日月) たけづつ(竹筒) たづな(手綱) ともづな ⇒ にいづま(新妻) けづめ ひづめ ひげづら おこづかい(小遺) あいそづかし わしづかみ (略) なお,次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくい もの等として,それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし,「せかい ⇒ ぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものと する。 例 せかいじゅう(世界中) ⇒ いなずま(稲妻) かたず(固唾*) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく (略) 〔注意〕 次のような語の中の「じ」「ず」は,漢字の音読みでもともと濁って いるものであって,上記(1),(2)のいずれにもあたらず,「じ」「ず」 を用いて書く。 例 じめん(地面) ぬのじ(布地)ずが(図画) りゃくず(略図) (略) _____________________________________ 参考URLは全文です。
お礼
ありがとうございます。 規則はあとからつくられたもので、それを決めるための理屈、というのがあるはずです。(中曽根さんが決めたから、というのが普遍的な理屈であっては困る) 「例」をならべて頂いたのをみると、なんとなく、「見た目がすっきりしているから」ということみたいですね。
- atsuota
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なぜ「づ」でなく「ず」と書くのか、ということですよね。 同じ事は、なぜ「ぢ」でなく「じ」と書くのか、というのにも言えます。 「ず」や「じ」になってしまっている例は、他にも 「くんずほぐれつ」…もとは「組みつほぐれつ」 「じめん」…もとは「地(ち)の面」 などがありますね。探せばもっとありそう。 理由なのですが、江戸時代は一部の人間しか字を書けませんでしたので、音だけ聞いて「いなずま」と誰かが書いたものが、広まって定着してしまったのではないか、と思います。 もし「にいづま」のように明らかに「つま」であることを皆が知っていれば、そうはならなかったのでしょうが、nozomi500さんが書かれているように、稲妻は「つま」ではないので、多くの人が元の意味を知らないまま、「ず」が広まったのでしょう。 #あくまで推測ですよ。
お礼
さっそくありがとうございます。 「地」は、漢和辞典をひいても「じ」というのがのっていますが、「妻」は「つま」しかありませんね。 もとの意味は先の方のとおりでしょうね。
- lamule
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【稲の夫(つま)】の意。古代、稲は稲妻をうけて結実すると信じられたことから-と辞書には書いてありました。
お礼
ありがとうございます。いろいろ参考になります。 「県知事」は「けんちじ」ですけど。「事」は「じ」だから、そのまま「ちぢ」の原則をパスして「ちじ」なんでしょうかね。みんなに「連語」と意識されているかどうかわかりませんが。 変換のときは、「でもよい」にもかかわらず、「いなずま」でないと変換してくれませんね。 もともと「じ」と「ぢ」は発音が違っていたのが、いつのまにか同じになって、表記方法のルールを作るようなことになったのでしょうね。それを思うと、日本人が英語の発音を区別できないのもしかたないですね。日本語の発音が区別できなくなったのだから。