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職権探知と職権調査
民事訴訟の職権探査事項(主義)と職権調査事項について、教科書を読んでもその違いがイマイチ分からないのですが、分かりやすく説明していただけないでしょうか。
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職権調査というのは開始の段階、職権探知というのは中身の段階の話です。訴訟要件の話をしましょう。訴訟要件の大部分は、判決の正当性確保や訴訟機能の維持といった公共的な役割を持っています。ですから、その公共目的を達成するために、訴訟要件の存否については、当事者の申立を待つまでもなく(=抗弁事項ではなく)、裁判所が職権で調査を開始するのが原則(=職権調査事項であるのが原則)です。 では、職権で調査を開始したとします。調査が始まったとして、訴訟要件の存否の判断をする為の資料は誰が集めるべきでしょうか。裁判所が自ら事実や証拠を探す事ができるのを職権探知、裁判所が探すことはできず、当事者が主張・立証しなければならないことを弁論主義と言います。 訴訟要件の中でも特に公共性の高いもの(例えば、当事者の実在や当事者能力、訴訟能力など)は、職権探知とされています。裁判所は自ら事実・証拠を探知でき、当事者間でその事実について自白がされても、これに拘束されません。 これに対して、訴えの利益や当事者適格などについては、一応公共性があるから職権調査事項とはされているものの、本案の審理と密接に関連するので、その資料は当事者が集めるべきということで、弁論主義とされています。(訴えの利益の中でも、不起訴の合意の不存在など、公共的色彩が希薄で、専ら私的な利益に関するものについては、抗弁事項とされており、当事者の申立がなければ、そもそも調査が始まらないものもありますが、話が複雑になり、混乱を招くと思うので割愛します)。 調査を始めるかどうかを決めるということと、始まった調査において誰が資料を集めるべきか、ということは、区別して考える必要があります。「裁判所が調査を開始するって決めたんだから、当然、資料も裁判所が集めるんでしょ?」と、開始の話と中身の話を混ぜてしまうと、理解が難しくなってしまいます。
お礼
ありがとうございました。 大変よく分りました。