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痛みを感じる機構とは?
生物はどのように痛みを感じているのでしょうか? 神経を伝達した信号が脳に到達したら感じる、という説明が出来ると思うのですが、詳しく知りたいです。 痛みについての本を調べてみたのですが、 わかりにくかったのでこちらで質問させていただきました。 よろしくお願いします。
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こんにちは。 「刺激」とは、神経系を介して生体活動に変化を発生させるものと定義されます。 「痛覚」といいますのは身体の組織破壊に及ぶ「障害刺激」を受容する感覚器であり、この入力に対しましてはほぼ全ての動物が何らかの反応様式を持っています。中には痛覚のない動物というのもいますが、それが身体の組織破壊に対して選択された反応や行動であったとしますならば、それがその動物にとっての痛みであり、苦しみということになると思います。良く魚には痛覚がないなどといいますが、自覚をしていないというだけで、まな板の上に乗せられれば苦しいに決まってます。でなければ逃げようなどとするわけがありません。 障害刺激に対する最も単純な中枢処理は反射であり、代表例としましては「脊髄反射」があります。これは脊髄内の「後角知覚核」に入力された障害刺激が大脳皮質に送られる前に同じ脊髄内にある「前角運動核」に送られ、特定の回避行動が選択されてしまうというものです。昆虫の胸部神経節は環境からの入力が直接行動に結び付くという点ではこれと良く似ています。 もう少し複雑になりますと、「中脳・中心灰白質」では表在感覚と深部感覚に対する処理が異なり、外部からの障害に対しては「能動的な回避行動」が選択され、内臓の疾患などの場合は「受動的な静止行動」が選択されます。ですから、もし怪我をしたワニが暴れ回っていたならばそれは痛い、じっと我慢をしているならば辛いということになるかも知れません。 では、最も高度なのは高次中枢によって選択される学習行動でありますが、このためには、まず必ずや一度は「痛いという感覚」を体験する必要があります。通常我々は、このような障害刺激が知覚・認知処理されることにより、大脳皮質の意識の中に自覚されたものを「痛み」と呼んでします。では、それは「思考」なのか「情動」なのかということになりますが、現在では、我々の「痛いという感覚」はこの二つが統合されたものと考えられています。 我々の身体に発生した障害刺激は大脳皮質「体性感覚野」で知覚処理されます。 そして、この知覚情報はここから、 「認知処理を行う:大脳皮質・体性感覚連合野」と、 「情動反応を発生させる:大脳辺縁系・扁桃体」 の両方に送られます。 知覚処理された「障害知覚」には以下のような情報が含まれています。 「発生した場所」 「信号の強さ」 「信号のパターン」 視覚や聴覚とは違い、体性感覚では身体の場所を特定しなければなりません。このため、我々は痛みというものを感じないわけにはゆかないわけです。 痛覚は障害刺激しか出力しませんので、これだけで自分の身体環境に組織破壊に及ぶ変化が発生したと判定されます。そして、それが何処からの入力であるのかによって発生した場所が特定され、信号の数や強さは危険度の判定に使われます。 何かがぶつかったときと棘を刺したときでは信号のパターンが異なりますし、入力が短時間であれば単発ですが、そうでなければ障害は継続していることになります。そして、このような判断を下すとき、大脳皮質では過去の学習記憶が用いられます。この作業を認知といい、これにより、何処にどのような痛みが発生したかが判別されます。 ですが、大脳皮質で判断できるのはここまでであり、知覚処理された障害刺激に対して「不利益・苦痛」という判定を下すのは「大脳辺縁系」であります。この大脳辺縁系の判定が大脳皮質に知覚されることにより、我々は「痛い」ではなく、「痛いっ!!!」と感じることができます。 このように、我々高等動物にとって「痛み」といいますのは自覚ですが、ここでは思考と情動というものが巧妙に組み合わされています。 例えば、手が痛いと思って良く見たら血が出ていた、「ひぇ~っ!」。この結果が大脳辺縁系に入力されますと情動反応が更に強まります。逆に、痛いと思って一度はびっくりますが、「何だ、石を踏んだだけか」と分かりますと判断はまた変わります。このように、情報の獲得や分析が進むに連れて痛みの大きさが変わるのは、これは、それが我々の自覚であり、そこでは思考と情動が作用し合っているからと考えることができます。 但し、我々の痛みの感覚が変化する生理的な要因はこれ以外にもあります。 例えば、痛覚といいますのは信号速度の速い神経と遅い神経によって時間差で送られて来ます。それから、遅い神経の中にはじくじくと反応を持続させるものもあります。また、痛覚伝達路を開いたり閉じたりして信号の伝達をコントロールする細胞もあります。我々の脳はこのような処理をされた信号を受け取り、何処がどんな風に痛いのかを判定しています。
お礼
とても詳ししご説明ありがとうございます。 疑問が解決できました。 本当にありがとうございます。