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発生的制約という用語
「発生的制約」について、正しい(一般的な)意味を教えてください。 この言葉は、使われる場合によって少しずつニュアンスが違うような気がするの ですが・・・?どのような現象がよく、発生的制約として説明されていますか?
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- aster
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これは、言葉としては聞きますが、どういう意味か確かに曖昧な感じのする言葉です。検索で、使われている例を幾つか調べてみて、意味の基本的な形を考えると、次のようなことになると思います。 参考1では、動物(生物)の形態発生や進化について、三つの制約を挙げています: >動物の形態を機能・発生・系統学的に理解する >1)その動物の先祖がどのような形をしていたのか(系統的制約) >2)その動物の身体の一部一部がどのように発生するのか(発生的制約) >3)そしてその動物の身体の各部分は外環境とどのような物理的関係に置かれるか(機能的制約) ここでは、動物の形態進化について、形態変化が進化で起こることに対し、抵抗としてかかる「制約」を三つに分けています。「系統的制約」「発生的制約」「機能的制約」です。 調べてみたところでは、進化における形態の変容に対する抵抗として上の三つの「制約」が考えられており、これは、例えば、魚が、大きな鰭を持つような形態変化を進化において行うとしたとき、そのような形態変化に対する「制約」として,以上の三つの形の制限がかかってくるというような話です。 1)「系統的制約」というのは、動物(生物)は、その分類系統というか、種の系統的進化に応じて、基本的な形態が決まっており、例えば、象なら、ああいう巨大な身体と、長い鼻のような形態が、系統進化で決まっていることになります。象の遺伝子に突然変異が起こり、鼻が二本あるとか、胴体が、非常にスリムになるとか、極端には脚が六本になるなどの遺伝子変化が起こるとしても、それは、系統的に進化してきて、できあがった形態の基本的な形との違いがあまりに大きく、形態進化としては実現できない、つまり、「制約」がかるというので、これが「系統的制約」だと言えます。 2)「発生的制約」は、動物(生物)の発生は、最初は受精細胞一個で、これが二分割し、四分割し、八分割し、と初期は対称的に分裂して細胞が増えて行きます。しかし、あるところまで分裂すると、不規則になってくるのであり、細胞群で、将来、骨格になる部分や,筋肉になる部分や、手足になる部分、神経系になる部分、内臓になる部分などが、「順序を追って」発生分化して行きます。 動物の形態を決める、例えば四本の脚とか、頭骨の形状とか、肋骨の数だとか、指の形状などは、最初から、決まっているのではないのですが、遺伝的に決まった発生手順で、段段と順序を追って、形成され分化し、そのようなものが最終的にできあがるのです。 突然変異などで、違った形態の生物が設計された場合、例えば、鰭のない魚に鰭が付く場合、鰭は、どこから発生分化するのか、ということが問題になります。安定した形態の発生の場合は、決まった順序で、例えば、鰭は肋骨の一部の骨が変化して、鰭へと変化展開して行くのであるとして、そのような発生が、他の器官や他の形態と矛盾なく、無理なく、調和して分化発生が可能なら、問題はないのだということになります。 しかし、通常は、従来とは違う器官とか、手足・鰭とか,その他の部分が突然変異でできるようになっても、発生の展開の順序秩序から、他の器官などの発生と衝突したり矛盾する場合、そういう方向への形態変移は、発生的理由から抵抗がかかる、つまり、これが「発生的制約」になります。 動物などの形態は、最初からそういう形態をしていて、それが発生・成長と共に、大きさが大きくなるのではなく、最初は細胞一個から始まり、これが分割分化して、いろいろな器官などに分化発生して行くので、安定した形態を維持している動物などの場合、その形態の発生は、発生手順的に、相互に矛盾なく、無理のないものになっているのです。 それに対し、変異や,特に突然変異などで形態に変化が起こるとき、変化に応じて、色々な器官の発生分化が安定して矛盾なく行われれば、変異は定着できるのでしょうが、他の器官の発生と矛盾などがある場合、安定性という観点からは不安定で無理があるので、こういう変異は残らない、つまり、「発生的制約」の制約にかかって、形態変異が保存されず淘汰されるということになるのです。 3)「機能的制約」というのは、新しい形態や器官を突然変異などで獲得しても、それが、環境とのあいだでうまく機能しない場合、そういう形態は、仮に、系統的制約や発生的制約をクリアーしていても、環境に適合しないので、存続できず、これが形態変化での「機能的制約」ということになります。 例えば、砂地の海底面で生活して、砂にもぐりこんで生活していたような生物が、砂にもぐるための前足相当の器官が、泳ぐための鰭のような形状に変化しても、これでは中途半端で、砂にももぐれないし、泳いでも生活できないので、淘汰されるというか、こういう形態変化は保存されないのです。これは環境とのあいだの「機能的制約」ということになります。 「発生的制約」というのは、生物の形態発生は、段段と複雑な器官が、幼態から成長する過程で、相互矛盾なく分化発生して行くという順序秩序があって、新しい形態変化が突然変異などで起こる場合、この変異によって起こる器官などの発生が、他の既存の器官などの発生と、発生分化の順序秩序において、相互矛盾のないものだけが、残るということになるのです。そして矛盾するものは淘汰されるという意味で、形態変化に発生上の安定性の「制約」がかかるということだと言えます。 >参考1:Academy >http://www.ucmp.berkeley.edu/people/motani/jacademy.html >参考2:(現在の進化論入門)総合説ってなに >http://www2.biglobe.ne.jp/~oni_page/Evolution/s0070.htm
お礼
どうもありがとうございました。 たいへん勉強になり、また、とても興味深い内容でした。