この質問は、「インテリジェンス・デザイン」の理論と言う名が付いた問題で、アメリカの原理キリスト教者たちの大問題になっています。
アメリカは先進国の中では大変異質な国です。いまだに毎日曜日教会に行く人の数が50%を超えています。イギリスでは5%ぐらい、最も多く行くといわれているフランス人でも15%以下だそうです。そしてアメリカ人の50%以上がまじめに神の創造論を信じており、ダーウインの進化論を信じていません。学校で進化論を教えるのですが、毎日曜日に牧師さんから「それは神の冒涜だ」と大洗脳されてしまうのです。アメリカで車を運転していると、車の後ろのステッカーに「私は進化論を信じません」ということを意味するシンボルを付けている車を良く見かけます。
ところが宗教と国家の分離という憲法があるために、現在アメリカの公立学校では神による創造論を教えてはいけないことに成っています。でも、50%以上の人達が信じている創造論を何とか、憲法に違反しないで教えられないものかと、キリスト教狂信者達が考え出したのが「インテリジェンス・デザイン」です。
この説によりますと、これだけ巧妙な生物の出現が単なる偶然やでたらめな粒子の衝突を通して出て来るはずがない。この宇宙にはある「インテリジェンス(知能)」を持った存在があって、それがある計画の基に大実験を行っているのだ、という説です。このインテリジェンスを神と呼ばないところが味噌で、そう言う言葉のすり替えで、憲法に違反していないとまじめに考えるほど漫画的な人達がいっぱい居るのがアメリカです。
先日、共和党の大統領候補者たちの討論会で、最有力候補の3人がダーウインの進化論は信じないと言っていました。そう言っておかないと共和党候補者に選ばれない可能性があるからです。
実は近代非平衡熱力学に進歩によって、前もって何のシナリオがなくても、そしてででたらめに粒子が衝突し合っていても、物理学の法則に従って複雑な構造が自発的に現れて来ることが証明さています。ただし、この出現の過程では、分岐点と言って左右どちらの構造が生まれるかは確率的になっている点をいくつも経なくてはならないので、どんな構造が生まれて来るかは前もって判りません。だからシナリオがないのです。
これは「散逸構造の理論」とよばれるもので、この理論を提唱したイリヤ・プリゴジンは1977年にノーベル賞をもらっています。現在では生物の出現もこのの「散逸構造の理論」で説明できるのではないかと考えている科学者が大多数を占めるようになっています。