はじめまして。
大学でシェイクスピア作品の女性論の論文を書いた関係から、英国の大学院で女性学を専攻した者です。
ご質問:
<フェミニズム論を勉強して、就職をしようとすると不利だということを聞いたというのです。>
どういう理由で不利だというのでしょう。その心配は全くありません。
1.腰掛け就職の場合:
例えば、秘書や事務として、結婚までの腰掛け程度の就職先をさがしておられるのなら、会社側もそのつもりで、従順で社内の潤滑油的な女性を欲しがります。学部や専攻は正直どうでもいい、のが本音です。
英文学を専攻した人が、英語とはほとんど無縁の部署に配属になるように、大学の専攻は概ね、腰掛け就職の女性にとっては関係ないように思われます。
要は面接で、専攻したフェミニズムの、会社への利点をうまく納得させればいいのです。面接の質疑のテクニックの問題です。
2.キャリアを目指す就職の場合:
そのご友人はどの学科でのフェミニズム専攻を希望されているのでしょう。フェミニズム(女性学)は、複合学問で「政治」「経済」「社会」「心理」「哲学」「文学」「人類学」「言語学」などなど、多岐の専門分野に渡って関係を見出す学問です。
また、女性を研究することは、ひいては男性社会の問題を研究することにもなり、最終的に人間社会の問題に煎じ詰めることができる有益な学問です。面接では、その点をうんと強調すればいいのです。
また、女性を研究することは、子供、家族、教育、福祉、老後、人間関係といった、社会に密接に関わる学問です。その方面への就職であれば、大いに役立つ学問です。
フェミニズムの専攻を生かせるキャリアを探しておられるなら、そういった方面では大いに需要があると思います。
3.フェミニズムの種類:
フェミニズムにもいろいろあり、分野は分かれます。
(1)「女性解放論者」:明らかに虐げられている女性、人権を認められていない女性を解放しようという運動です。フェミニズムの根本の学問です。
(2)「男女同権主義」:女性もある程度権利は認められているが、男性ほどの優遇はされていないとして、男女平等をとく人たちです。
(3)「女権拡張論者」:いわゆるRadical(ラディカル・急進派)と言われる人たちで、女性の権利51%男性49%を掲げ、女性の権利をさらに拡張しようと意気込む人たちです。
ウーマンリブとして嫌われるのは(米国などでも)、得てして3の急進派のフェミニスト達です。ただ、日本はまだまだ男性優位主義が社会にはびこっており、世界レベルでは男女平等の後進国なので、2の男女同権主義者や、女性解放主義者でさえ、眉をしかめる人も少なくないかもしれません。面接では、急進的な姿勢は見せない方がいいでしょう。
4.フェミニズムの就職への利点:
フェミニズムを専攻している、ということで、就職には次のような利点もあります。
(1)英文や国文を専攻する女子が多い中、まわりに流されず、個性的な分野を専攻していると注目されます。
(2)フェミニズムは女性を幸せにする学問であり、ひいては男性を、子供を、家庭を、最終的には社会を幸せに導く学問である、ということを強調すれば、志願者の人間性の深さ、人生への積極的な姿勢を示すことができます。
(3)実際会社で仕事するようになると、いろいろな男女間のひずみ、社会のひずみが見えてきて、専攻したフェミニズムが「改善」への手助けになることがあります。
以上、結論としては、フェミニズムは就職の不利にはまったくならないということです。せっかくの大学生活ですから、好きな分野を自由に学ばれることをお薦めします。好きで選んだ学問は、将来きっと役に立ちます。
ちなみに英国では、2番目の大学院では人類学の分野で「男性学」を専攻しました。女性だけでは不公平ですからね(笑)。
以上ご参考までに。
お礼
ありがとうございます。Parismadamさんの意見を読ませていただいたら、私自身が感動しました。私の友達はちなみに社会学部に所属しています。さっそく友達に伝えてあげたいと思います。