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「耳を澄ます」とは?
「耳を澄ます」「目を凝らす」など、強く意識することで鋭敏な感覚情報が得られます。これはどのようなメカニズムですか。 ふだん、身体は多くの情報をキャッチしていながら、生活上、ことさら有益でない情報は意識がカットしているのでしょうか。ご教示下さい。
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ごきげんよう。 私たちは、目や耳などの感覚器から入力された外界の情報を脳で処理し、それに対して思考したり判断することによって、最終的に行動を起こしています。 ただし、感覚器から随時入力されている情報というのは膨大なものになるわけですから、私たちは入力された全情報を完全に処理したり、思考や判断に使えているわけではありません。たとえば、あまりよく知らない街にある目的の店を探して友達と歩いている、という場合では、目的の店の外観や友達との会話は覚えているかもしれませんが、その周辺の街並やバックで流れていたBGMなどは、あまりはっきりとは思い出せないのではないでしょうか。目や耳には間違いなく情報が入ってきているはずなのに、後で思い出したりできない場合があるのです。 このような事例から考えて、人間を含めた生物の感覚情報処理の過程のなかで、入力されたうち特定の情報を選択して、選択した情報にさらなる処理を加えていく一方で、必要とされない情報を抑制しているようなメカニズムが存在すると考えられているのです。 認知心理学では、「見えた/見えない」「聞こえた/聞こえない」といった知覚処理のレベルに対して、「情報を選択する」「すでに持っている記憶と照合する」「情報に対して思考や判断を行う」などのレベルの処理を認知処理と呼んでいます。前者の知覚処理が、「情報が入力される」というようにある程度受動的・ボトムアップ的に行われるのに対して、後者の認知処理では、能動的(自発的)・トップダウン的に行われています。 さて、ここからが本題ですが、そのような能動的・トップダウン的な情報処理が、私たちの「見えた/見えない」「聞こえた/聞こえない」といった知覚処理にも影響を与えているということが、これまでの心理学研究で明らかになってきています。 その有名な事例が「カクテルパーティー効果(cocktail party effect)」と呼ばれる現象です。パーティー会場のような騒音の多い場所でも、近くで話している人の声に注意を向ける(集中する)ことによって、その人の話し声や話している内容が聞き取りやすくなるというものですね。他にも、(具体的な現象名はありませんが)ぼやけてよく見えない看板に対して「目を凝らす」ことによって、だんだん文字が読めるようになったりするのも、上記の能動的・トップダウン的な処理だと言えるでしょう。 そのような現象に対する質問者さんの疑問について、「『意識』がそれをやっています!」というような表面的な説明では何の説明にもなっていないため、現在ではより具体的に、この能動的・トップダウン的な情報処理がどのようなメカニズムで行われているかについて、認知心理学・生理学・工学などの複数の分野の研究者が協力して、実験やモデルをベースにした研究を行っているところです。 人間を対象にした心理学実験や、サルなどの動物を対象とした細胞の応答をとる生理学実験などの結果から、能動的・トップダウン的に対象に注意を向けることによって、実際に対象を見つける割合が上がり(対象を知覚する感度が高まり)、また知覚処理を行う脳の部位の細胞の活動が高まった、ということが実際に確かめられています。 このあたりまでは結果が出ているのですが、上記の結果も、「こういうトップダウンの操作をしたら知覚感度や細胞の活動が高まりました!」というだけで、能動的・トップダウン的な情報処理のメカニズムについては、まだほとんどわかっておりません。その全容が解明されるにはまだまだ時間がかかりそうですので、現時点では、質問者さんの疑問に完全に回答するのは難しいです。上記の研究の今後の進展を、期待していただければと思っております。
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- kumagerasu
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No.3です。「目を凝らす」というのは、見たことのないものを探す場合もありますから、No.3の説明では不十分ですね。見たことのあるものだらけの中から見たことのないものを探すことに集中するということもあるのでしょうね。
補足
既知、未知を問わず、そのような探し方をすることそのものに関心がわきました。ありがとうございました。
- kumagerasu
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どんぴしゃりの回答ではないかもしれませんが、No. 2さんに触発されて発言いたします。 動物行動学では「サーチイメージ(探索像)」という概念が知られています。餌を探している動物が、あるものが食べられると知った場合、次からはその餌の映像を頭に記憶して、視野に見えるものと比較しながらそれを探すわけです。 サーチイメージの詳しい説明が見つかりませんでしたが、このページの冒頭2行に説明があります。 http://www.geocities.jp/youko567987/2.html 大きな書店や図書館で本棚から本を探すときに、見たことのない本で、タイトルのみから探す場合と、以前見たことがあり、本の大きさや背表紙の色彩や姿を知っていて探す場合では、後者の場合のほうが格段に探しやすいことは、我々も経験するところです。我々もサーチイメージを使ってものを探しているのだろうと思います。 専門家ではないのでよくわかりませんが、「目を凝らす」ということは「サーチイメージに集中する」ということかもしれません。
補足
kumagerasuさん、ありがとうございます。これまた、思いがけない角度からの回答でした。サーチイメージは最初、?と思いましたが、考えていくうちに奥深い広がりを感じました。「教えて!goo」はこういう楽しみがありませすね。すばらしいと思いました。
予想とか期待を予め頭の中に用意してこれを基礎においてその対象を探索するということではないでしょうか。発見なども予想や仮説のない人はできないようです。予期しないことなどを見つけるのはこれと違って生理学的な性能が良い感覚器官が発揮する能力だと思います。
補足
予想していなかった回答をいただきました。kaitara1さんがおっしゃる「予想、期待」ですが、意識にそういう予断があるのか考えてみます。「耳を澄ます」で得られる情報は、予想や期待の領域を越えて、意外性や驚きも飛び出す気がしています。偶有性に近い感覚情報というのでしょうか。考える機会を与えていただき、ありがとうございました。
- tky-ny
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おっしゃるとおりではないでしょうか。 ためしにテレビをつけながら本を読んでみてください。 わかりますよ。
補足
さっそく、ありがとうございました。とすると、意識そのものは、どのような規範で情報をカットしているのか、考えると疑問が底なしにわいてくるのです。
お礼
kana_forteさんの回答は、明快でした。 知覚処理の動物実験で、注意を向けると知覚感度が高まるのですか。動物に自意識があるのか、私は知りませんが、意識レベルと措定できる判断材料があるのでしょうね。 私の質問は、底意に意識そのものについて迫りたい思いがありました。この面を鋭い洞察力で見抜いていただき、うれしい回答となりました。ありがとうございました。