いろいろな見方がありますが・・・いくつか出すと
1つ目は損失補填です。あの戦争は、人があそこまで多く死んだという点で、各国に大きな衝撃を与えました。実はナポレオン戦争以降、動員数に対する戦死者数(損耗率)は減少の一途をたどっていました。
また、戦争の期間もどんどん短くなり、1年かそこらで決着がつくため(それ以前は10年とか戦争が行われていることもありました)結果的に戦闘回数も減り「近代戦は人があまり死なない」という状態だったのです。19世紀の世界、各国もそういった気分で戦争していました。
しかし、第1次大戦ではこの考えが覆り、おびただしい死者を出しました。実は、この傾向は日露戦争からすでにでていたのですが(日露戦争で、損耗率が以前の戦争より跳ね上がったのです)、この傾向が列強対列強の戦いでも現れたのです(日露戦争は列強対半列強の戦いですから、諸外国は死傷者が増えたのをあまり気に止めなかったのかもしれません)。また、戦争期間の短期化も逆転し、各国はまさに数世代ぶりに、数年越しの総動員戦争を行う羽目になりました。
さて、その結果、勝った側もボロボロで、疲弊しきっていました(イギリスは、自他共に認める海軍大国でしたが、この疲労から日米の海軍競争に追いつけなくなる恐れが出たため、アメリカを誘って海軍軍縮を唱えることになります)。損失を補填するには、相手から奪うのが一番です。日本も、日清戦争でそれをやり、一気に潤いました。
第1次大戦では過去に例がないほど大規模に消耗しましたから、どれほどの賠償金を取れば元を取れるかというのは、その実、科す側にもよくわかっていなかったでしょう。そのため、天文学的な賠償金をかけることになります。
2つ目は、ドイツが二度と戦争を起こさないようにするためです。当時の政治家のいくらかは、一生払い続けるだけの賠償金を科せば、それを払うのに全国力を使うから一生軍備には手が回らないだろう。そうすれば戦争は起こらない、という発想があったようです。
もちろん、これは当時から「払えない額を科すのは戦争を呼ぶようなもの」と反対の声がありました。しかし、何せ前例のないことですから、どちらに転ぶかはわかりませんでした(この賠償金を提案した側もわかっていなかった)。
もちろんご存知のとおり、結果は反対派の予想通りとなり、いまのところ人類最大の戦争である第2次世界大戦となったのです。
先に言ったように、当たり前ですが反対意見も強かったのです。しかし、反対派も賛成派も「結果がどうなるか」はわからなかったわけで、結局賛成派の意見がとおり「とりあえずは科してみよう」という運びになったのです。
ドイツ一国(と暴発した場合被害が及ぶのが確実なヨーロッパ全土)を使った壮大な実験といえばそれまでですが、まあとんでもない失策だったのはたしかですね。
結局、歴史というのは手探り世界です。
もし、今度こういった状態になったら「多額の賠償金を科すのは戦争を誘発すると歴史が証明している」と言って、避けることができるのです。しかし、当時ではどちらに転ぶかは誰もわからなかったのです。
お礼
ありがとうございます