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フーリエ変換:実空間と逆空間の対応について
実空間をフーリエ変換すると逆空間になります。逆空間では逆格子ベクトルというものがあり、これが小さい時は実空間においてはかなりの大きなベクトルに対応するらしいです。すなわち、実空間で大きな範囲は、逆空間では小さな範囲に対応しているようです。これらを理路整然と説明して頂きたいです。 また、実空間と逆空間を関係付ける式もあれば示して頂ければ、納得します。
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ご質問は「空間周波数空間とは何か」ですので、それに絞ってお答えします。 波動や振動(空間的なものでも、時間的なものでもよい)には、必ずその「細かさ」を表現するパラメータがあります。時間的な振動であればそれは「周波数」か「周期」であり、空間的な振動であれば「空間周波数」か「波長」です。また、周波数と周期が逆数関係であるように、空間周波数と波長も逆数関係にあることも先の回答の通りです。 ある時間的に変化する波形をフーリエ変換(あるいはフーリエ級数展開)すると、例えば周波数空間上・・・1次元であれば単なる周波数軸・・・でスペクトルとして表現することができます。下の図の通り。 スペクトル強度I(f) ↑ │ ■ │ ■ ■■ │ ■ ■■■ ■ │■■■■■■■■■ └─────────→周波数f 同様に空間的に変化する波形を考えます。弦の上の定在波などを思い浮かべればよいでしょう。 簡単のために1次元の波形を考えます。フーリエ変換すると、空間周波数軸上にスペクトルとして表現できます。以下の通りです。 スペクトル強度I(v) ↑ │ ■ │ ■ ■■ │ ■ ■■■ ■ │■■■■■■■■■ └─────────→空間周波数v 上図の「v軸」に当たるものを3次元に拡張したのが「空間周波数空間」です。 スペクトル強度に対応する量Iがあり、Iはx方向、y方向、z方向それぞれの空間周波数の組(u, v, w)の組の関数として表されます。3次元の各点(u, v, w)に対応して値(強度)が一つ定まる関数と理解してください。 時間変化信号のスペクトル I(t) 3次元空間信号のスペクトル I(u, v, w) と対応付けられます。(u, v, w)が定義される(数学的な)空間が、空間周波数空間です。 逆格子を作る操作というのは最初は混乱すると思いますが、実空間のあるベクトル(通常は波長に対応するもの)を逆格子空間(空間周波数空間)で相当するベクトルに変換する手続きであり、1次元であれば逆数を計算することに相当しているわけです。 空間周波数に近い概念で「波数」という表現を用いることもあります。むしろ、物理学の世界などではこちらの方が多く使われます。 時間変化しない信号(定在波、または波動のある一瞬をとらえたもの)は A[exp(ikx)] なる形で表現できます。Aは振幅、iは虚数単位、xは位置です。 kは「波数」とよばれる量で、長さの逆数の次元を持ちます。単位長さに含まれる波(1周期分)の逆数に2πをかけたものです。例えば波長2[m]の波なら、波数は2π/2=π[m^(-1)]です。波数が大きいほど単位長さにたくさんの波が詰まっている、つまり短い周期で振動する波であり空間周波数の高い波といえます。 3次元の波(例えば、電磁波)に拡張すると A[exp(i(→k・→r-ωt))] と書き改められます。今度は空間内の位置の決定に3つの成分が必要ですから、位置ベクトルとして→r=(x, y, z)を用います。また波数も3つの成分を持ちますから、→k=(k_x, k_y, k_z)とベクトルとして表示されます。ここに下付添字を「_x」のように表現しました。(k_x, k_y, k_z)の物理的な意味ですが、x方向の単位長さに含まれる波の数×2π、同じくy方向の波の数×2π、z方向の波の数×2πです。「・」は申すまでもなく、内積の記号です。(周波数fに対し、角周波数ω=2πfの関係がありますがこれに当たるものと思えばよい) このベクトル(k_x, k_y, k_z)を「波数ベクトル」などと呼びます。3次元空間の正弦波一つに対し、波数ベクトルが一つ定まります。上記のスペクトルの議論と同様に、波数ベクトルを引数として関数を定義することも可能です。
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- Umada
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「逆格子」って、最初はものすごくとっつきにくいんですよね。小さな逆格子ベクトルが実空間で大きなベクトルに対応??? なんでこんな不可思議なものをわざわざ導入するの?とお思いになることでしょう。 でもこれに似たような例は経験されているはずです。一番分かりやすい例は実時間の信号←→周波数スペクトルがあります。実時間で周期の「短い」信号は、周波数空間では「高い」周波数成分になって現れてくることはご存じでしょう。その相互の変換においてFourier級数やFourier変換を使うことも既にご承知の通りです。 これとの類推で考えれば、「逆格子空間で小さなベクトル」→「実空間で、ゆっくりと変化する波動に対応する」を理解するのはそう難しいことでないと思います。 逆格子は3次元空間での空間周波数を表すために用いられる概念です。 とりあえず空間周波数のお話をします。また3次元だとこの場では回答しにくいので、2次元の空間周波数でお話しします。空間周波数は実空間での波動の「細かさ」を表す概念です。 空間での信号 実空間⇔空間周波数空間 時間変化する信号 時間空間⇔周波数空間 の対応関係があると考えると分かりやすいと思います。 2次元画像信号g(x, y)に対し、その2次元Fourier変換G(u, v)を ∞ ∞ G(u, v)=∫ ∫g(x, y) exp(-j・2π(ux+vy)) dx dy (1) -∞ -∞ と定義します。g(x, y)は具体的には、画像の各点での濃淡値などです。jは虚数単位です。 2次元空間の正弦波(すなわち、縞模様)に対して、G(u, v)が値を有するのはuv平面上のある1点です(*1)。その点がその2次元正弦波の空間周波数ということになります。これは時間軸上の正弦波が、周波数スペクトル上のある1点に対応することと同じです。uやvは長さの逆数の次元を持ちます。uやvを「空間周波数」などと呼びます。(通常はuとvの組のことを指す) 例えば以下の周波数平面の図で、A点はy方向にのみ変化する縞、Bはx方向にのみ変化し周期はそれより長い縞を表します。Cは斜めの縞に対応します。Dはx方向にのみ変化し、周期はBの半分である縞に対応します。 v ↑ ○A │ ×C │ │ B D ───────┼──●──△→u │ │ │ │ ━━━━━━ ┃ ┃ ┃ ┃ \\\\\\ ┃┃┃┃┃┃┃ ━━━━━━ ┃ ┃ ┃ ┃ \\\\\\ ┃┃┃┃┃┃┃ ━━━━━━ ┃ ┃ ┃ ┃ \\\\\\ ┃┃┃┃┃┃┃ ━━━━━━ ┃ ┃ ┃ ┃ \\\\\\ ┃┃┃┃┃┃┃ Aに対応する縞 Bに対応する縞 Cに対応する縞 Dに対応する縞 つまり、空間周波数空間ではBは原点に近いのですが、その分実空間では周期が長いことになります。Dはその逆で実空間では周期は短いのですが、周波数空間では大きな値を持つ成分であることが分かります。 逆格子空間は3次元で空間周波数を表すための空間です。3次元でも、空間周波数が小さいということは実空間では(空間的に)ゆっくりと振動する波動に対応します。結晶中(周期構造中)の波動を表すためには逆格子空間が便利なため、このような概念が導入されているわけです。 こんな説明でいかがでしょう?
お礼
大変ご丁寧なご説明でだいたいわかりました。ただ、ご説明中の「空間周波数空間」と「周波数空間」の違いがいまいち良くわかりません。逆空間と実空間の双方での基底ベクトルを関係付ける式は、フーリエ変換の式ということでしょうか。
お礼
有り難うございました。なんとなくわかりました。しかし、実空間と逆空間の対応を示す式をご提示頂けるとすっきりするような気がします。