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金属の絶縁性についての質問
- 金属の絶縁性についての質問です。曲がった金属とストーレートの金属における絶縁性の差について理解が足りません。
- 海外の専門家から、婉曲した金属における絶縁性は途切れやすく、特に高周波の電界では絶縁度が低いと言われました。
- 上司からの命令で電気に詳しくない状況で対応を求められており、絶縁性についての理解が不十分なため困っています。
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お話を伺いますと「電界集中」に関することのようですね。 discontinuityは「不連続」の訳語が使われることが多く、大抵はそれで意味が通るのですが、この場合は「裂け目、破れ目」の訳語が適当です。「電界の勾配度」とは「電界強度」のことです。また「とりわけ高周波では」は「勾配度(電界)が大きくなる」にかかるのでなく「絶縁性に破れ目が生じ得る」にかかる文言でしょう。 大学教養課程程度の電磁気学をご存じなら話は早いのですが、「電気に詳しくない」とおっしゃるのがどのレベルか分からないので、とりあえず高校程度の物理学の知識を前提に説明します。 いま、図1のように対向する平板電極があるとします。相互の間隔をdとします。そして端子A-B間に電圧Vをかけると、極板間に電界が発生します。その電界強度はV/dで表されます(*1)。当然ながら極板間隔が小さいほど、また加える電圧が大きいほど電界は強くなります。そして電界強度がある限界以上の値になると放電が起こります。放電が起こるということはすなわち絶縁が保たれなくなるということです。 ┃ ┃ A┃ ┃B ○┨ ┠○ ┃ ┃ ┃ ┃ ← d → 図1 対向する平板電極 この対向電極間に等電位線を引いてみます(図2)。等電位線とは電位が等しい場所を結んだ線です。電位とは「その場所にかかっている電圧」と思ってください。喩えて言うなら地図において 電位→その場所の高さ 等電位線(面)→等高線 に相当します。等高線が密である場所は傾斜が急であるように、等電位線が密である場所は電界強度が大きい(電位の勾配が大きい)ということです。ただし平行平板電極の場合は等電位線は等間隔であり(*2)、電界強度も均一です。 ┃│││┃ A┃│││┃B ○┨│││┠○ ┃│││┃ ┃│││┃ ← d → 図2 対向する平板電極と等電位線 細線が等電位線に相当 さて電極Bの中央付近が尖っていたらどうでしょう。この場合の等電位線は図3のように、尖った個所の近傍で電極に沿って曲がり、かつ密になります(図示の制約から精確に描けない点はご容赦下さい)。等電位線が密ということは電界強度が大ということです。凸部付近で電界強度が大きくなる現象のことを「電界集中」などと呼んでいます。 つまり図1の場合と同じ電圧を極板間に加えたとしても、図3の電極ではその尖った部分の付近で電界がより強いということです。逆に言えば図3の電極では、より低い極板間電圧で放電に至るわけです。 ┃│││┃ A┃││/ / B ○┨│〈<─○ ┃││ヽ\ ┃│││┃ 図3 中央が尖った電極と等電位線 この電界集中効果を利用したものが避雷針です。避雷針の先端はその名の通り尖っているわけですが、こうすることでその部分での電界強度を大きくし、そこに向かって放電し易く、すなわち雷が落ち易くしているわけです。その意味で言えば避雷針というより「誘雷針」ですが、いずれにしても避雷針にわざと落雷させることで、落ちては困る場所に落雷が及ばないようにしているわけです。 避雷針は極端な例にしても、曲がった部材では彎曲部において電界集中が起きるために、ストレート部材より耐電圧が多少低くなります。絶縁は彎曲部で破れやすいとも表現できます。また高周波領域(だいたい10 MHz以上)の交流で使用する場合、コロナ放電で流れる電流が直流の場合に比べて大きいため[1]、彎曲部における絶縁には特に注意を払わなくてはなりません。 以上を踏まえると英文の原文は 「当該の金属部材において彎曲している個所では電界強度が大きくなるために、絶縁性の破れが、とりわけ高周波領域では生じ得る。」 などと訳せます。もう少しこなれた日本語にすると 「当該の金属部材において彎曲部周囲は電界強度が大きくなるので絶縁が破れ易い。とりわけ高周波領域では影響が大きい。」 となるでしょう。 その金属部材は高い電圧がかかった状態で使用するのだと思いますが「曲がった金属部材の絶縁性はストレート形状の部材より絶縁性が低いので、曲がった部材を使う場合は使用する電圧(あるいは上限電圧)をストレート形状部材のみを使う場合より低めに設定しなさい」「高周波領域で使う場合は特に注意が必要です」という指示に解釈されます。 [1] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E9%9B%BB *1,2 厳密には端部の効果を考えなくてはなりませんが、簡単のためここでは無視します。
お礼
解説だけに留まらず、適切な訳文まで付けていただき、本当にありがとうございました。私でも非常にわかり易く、会社の周りの人に解説を見せたらとても関心していました。 本当によくわかりました。感謝です。