#2の方が実に的確に思想の体系を総括されています。 私はODAのコンサルタントとして、中国の奥地とヴェトナムの辺境各県を調査した経験を持っています。 その時の経験から、市場経済に移行中の中国とヴェトナムが抱える問題点を指摘してみます。 レポートの参考にして下さい。
(1) 中国における格差の拡大
本来は万民平等をモットーとしていたはずの社会主義でしたが、現在その格差は大きくなっていく一方です。 中国でも東南部、広東を中心とした沿岸部の一人当たりのGDPは軽く5,000米ドルを越えています。 さらに1997年に併合した香港では所得は8,000米ドルに達しています。
一方、奥地に入ると産業はなく、牧畜が主産業である新疆ウィグル自治区辺りになると、年間200米ドルがやっとです。 この新疆省の砂漠地帯には膨大な石油資源が確認され、現在精力的に掘削中です。 しかし、石油資源から来る富が辺境の牧畜民に還元されることはありません。 中国全土の資源は中央政府の管理下に置かれているからです。
しかも、現在香港の実業家がどんどんと奥地に進出し、破綻に陥っているホテルや企業を買収し、欧米流の近代経営に移行中です。 益々、経営者と労働者という図式がはっきりしています。
それなのに、中国共産党はこれら経営者をも入党させているのです。
本来、共産党の敵とみなされていた経営者が党員になっているのです。 共産党員は誰と戦えというのですか。
(2) ヴェトナムのドイモイ政策の矛盾
1975年の5月に北ヴェトナムによって統一されました。 北の社会主義が資本主義の南を併合したのです。 政治的には社会主義が資本主義に勝ったのです。 ところが1991年にソ連邦が解体され、ヴェトナムは行き場を失ったのです。
1970年代の後半に中越戦争をして以降、中国とは敵対関係にあります。 ヴェトナムと国境を接する広西省には数百万のヴェトナム民族が住み、ヴェトナムへの併合を求めて独立運動をしています。 大きな民族紛争のひとつとなっています。
同じ社会主義を標榜する中国が最大の敵国なのです。 ですから、彼らにとって頼る先はアメリカと日本しかいないという大きな矛盾に直面しています。 政府はドイモイ政策を採って、首都ハノイの近くに欧米の企業の投資を募っています。 しかし、現状はホーチミン市(旧サイゴン)の周辺の工業団地が優勢です。
どうみても経済的には南が圧倒的に支配しています。 ホーチミン市を中心とした南部一帯はメコンデルタで出来た肥沃な土地で商業も盛んです。 南部には英語、フランス語に堪能なビジネスマンがたくさんいます。 いくら政府が圧力をかけて、南部を支配しようとがんばって見ても、勝敗ははっきりしています。
南部はタイとも国境を接し、貿易も益々盛んになっていますが、北は依然として中国と敵対中です。 ドイモイ政策は北を裕福にするための優遇策ですが、それをやっても南の勢いを抑えることは出来ません。