さらに2点,補足します。
その1:JIS漢字の歴史。
現在コンピュータなどで広く使われている「第1水準」「第2水準」などのJIS漢字は,1978年にJIS C 6226という日本工業規格として制定されました。(のちにJIS X 0208と規格番号変更)
その後83年の改訂の際,22組(44文字)のコードを入れ換えてしまい,約300字の字体を替えてしまったので,いわゆる「新JIS/旧JIS」問題が発生し,いろいろと問題になりました。
自宅のパソコンで作ったデータを職場に持って行ったら「桧山」が「檜山」になったとか,「森鴎外」の「鴎」の字が画面だと「區鳥」なのにプリントアウトすると「区鳥」になってしまうとか。
次の改訂は90年です。このときに,ご質問の「りん」の文字が2つになりました。
こういった一連の改訂による混乱を踏まえて,その次の改訂(97年)ではいっさいの字形の変更を行なわず,これまでの経過を徹底的に検証しました。
97年版の規格では,大混乱をもたらした83年の改訂の過ちをはっきりと指摘しています。しかし,これでまた78JISの字体に戻すと,混乱に一層拍車が掛かるので,そのままです。
なお83年の改正で消えてしまった78JISの字体の一部は,JIS X 0213(第3・第4水準漢字)などに採用されています。
その2:「りん」の文字がJISに2つあるわけ。
この文字は,JIS規格では,78年版,83年版とも右下が「示」になっている,「凛」という字でした(区点コード4959,シフトJIS997A)。
漢和辞典を見ると分かるように,これは俗字であり,本来の字形は「凜」です。
音を表す旁(つくり)の部分は,「稟議書」なんていうときの「稟」ですから,右下はのぎへんが正しいはずです。にもかかわらず,なぜ俗字だけがJISに採用されたのか,ちょっと謎です。
その後,1990年に法務省が人名に使える漢字(戸籍法施行規則の別表)に118字を追加しました。その中に,右下が「のぎへん」になった正字の「凜」も含まれていました。
なお俗字の「凛」は,許容字体表(旧字体などで,当面の間人名に使える文字。現在205字)としても含まれませんでした。
JISは制定当初から,人名用漢字をすべて含むようになっていました。そこで,これに対応すべく,90年の改正では,それまで84区04点が最後だった漢字表の末尾に,84区05点として「凜」を追加したのです。
(なお,同時に84区06点「熙」も同じ理由で追加されました。)
というわけでして,お子さんの名前は下がのぎへんの「凜」で間違いありません。(戦後の戸籍法施行以降,90年まではどちらの「りん」も名前には使えませんでした。90年以降はのぎへんの「凜」だけ使えます。)
また,「りんとした…のりん」と答えてもよいわけです。(もっとも,俗字のほうも「りんとした…のりん」じゃないかと言われればそうなので,厳密に言えば「りんとした,のリンの俗字じゃないほう」とでも言えばいいでしょうか。)
お礼
お礼が大変遅れてしまい申し訳ありません! 実は、自分としては締め切ったつもりでいた上に、最近メールを始めたばかりの長女(3年生)が、回答のメールを開いてそのまま私に伝えるのを忘れていたらしく、たった今久しぶりにパソコンの前に座って、びっくり!!・・ でした。こんなに丁寧な回答をいただいていたのに、本当にすみませんでした。90年までは、名前に使えなかったなんて全然知りませんでした。 間違いじゃなくて本当に良かったです。しっかりプリントして、永久保存版にさせて頂きます!