お尋ねの問題は、以下の条件が分かれば精度の高い数字を出せます。
(1)やかんの形状、材質
(2)周囲の空気温度
(3)周囲の空気の対流・風
(4)コンロの発熱量とバーナーの形状
(5)水の温度
(6)気圧
しかしここでは上記の数字を厳密に調べるだけで疲れてしまいますし、仮に分かったとしても今度はそれ用のソフトでやかんの伝熱解析をしないと解けません。そこでここではエイヤっと近似的に検討することにしましょう。
A. 水の温度と比熱
夏と冬で水温は当然違いますが、とりあえずここでは15℃から出発ということにしておきましょう。(出発温度の影響が小さいことは後で分かります)
また水の比熱や比重は厳密には温度依存性がありますが、これも計算を簡単にするために「1cal/g・℃」「1g/cm3」で一定ということにしておきます。
B. 周囲への熱の逃げ
水温が低いうちは熱の逃げは小さいですし、また水温が高くなるにつれ周囲への熱の逃げは大きくなります。この熱の逃げを見積もるのがこの計算で一番厄介なところですが、バーナー部での熱の逃げも含めてとりあえず加えた熱量の半分がやかんの水に伝わるとします。(弱火でゆっくり蒸発させれば、当然ですが逃げる割合は高くなります)
C. コンロの発熱量
家庭用ガスコンロの1バーナーあたりの発熱量は1500~4000 [kcal/h]くらいのようです。(この数字は強火のときのものでしょうね。弱火や中火ならその半分なり1/3なりでざっと見積もればいいと思います)
これだけあればとりあえず概算できます。
まず2kg、15℃の水を100℃まで加熱するには
2000×(100-15)×1=170000 [cal] (1)
の熱量が必要です。出発温度が5℃下がると10000 [cal]が余計に必要になりますが、次の(2)にくらべれば微々たるものです。
蒸発には1 [g]あたり539 [cal](この数字は理科年表か何かで調べる)の熱が必要ですから、
539×2000=1078000 [cal] (2)
の熱量を加えなくてはなりません。
(1)と(2)を足すと
1248000 [cal]=1248 [kcal] (3)
の熱が必要であることが分かります。
乱暴な近似ですがコンロの効率はとりあえず50%としましたので、(3)の倍の
2496 [kcal]
をやかん(の中の水)に供給する必要があります。
コンロの発熱量はバーナー当たり1500~4000 [kcal/h]ですので、1500 [kcal/h]なら2496/1500=1.664 [h]≒100分、4000 [kcal/h]なら0.624 [h]≒37分と求められます。とりあえず現実的な感覚とは合致する数字だと思います。
最後に、近似した数字が最終的な答えにどれくらい影響を与えるか検討しておきます。
またこの計算での一番乱暴な近似「コンロの効率50%」ですが、例えばこれを30%にすると上記の数字は1.67倍に伸びることになります。またコンロ発熱量の設定や強火/弱火でも答えは変わってきます。
ただし、これらの数字が変わっても答えが「100時間」や「5秒」にはならないことがお分かりいただけると思います。
というわけで「30~2時間程度」と見積もっておけばよいのではないでしょうか。実験するにしても、このようにして事前におよその数字の見当を付けておくことは大事なことです。
なおガスの種類はここでは考えなくて大丈夫です。(発熱量の高いガスを使うコンロは、バーナーの孔を小さくして発熱量を抑えています)